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11それから
坂本明男という男の脳はシンプルに出来ている。

面白いものにはアドレナリン、つまんないものには仕打ち。

この構造をあんまり広めると悪用されるかもしれない。単純だから。


オレのピンチが一通り過ぎ去った後にやっとこさ到着した黒やんはそう教えてくれた。




【それから】



結局あのあとどうなったか説明しよう。

とりあえず坂本とオレはかなりの悪役ムードでその場の空気はデンジャーだった。

オレは消えてーと思い、坂本はお腹すいたーと思っていた(後日談)。


まず、白井はスプレー缶が切れたとたん、坂本ではなくオレに怒りをあらわにしてきた。


白井おみくじで多少つじつまが合わなくても、坂本には関わらないが吉。と出ていたんだと思う。


「てめえチャラ男が調子乗んなよ!」


白井の平手がオレの左頬に一発、往復で右にいこうとしたそのときだった。


「痛いだろ」


白井の腕を掴んだその、不機嫌なお顔!


そう、誰かに坂本が暴れてる、と通報を受けすっ飛んできてくれた黒やんさんだ。


「坂本が悪いんだろ!」


「黒やん!だってこいつよー」



そう、なんと黒やんと白井も知り合いだった。本当友達多いな黒やん。


こういう場に慣れているのか、着いてすぐ、らんからも事情を聞いたらしいが取り合えず怪しんで、近くにいた城中生に話を聞き直したらしい。


終始黒やんの顔は非常にめんどくさそうだった。



「ほら、謝れよ!坂本!」

「くーろかーわ君はす〜ぐ怒る」

「謝れっつってんだろ!馬鹿ガキが!」


オレと白井の乱闘を止めた後、手際よく、何か食べに行こうとしていた坂本のブロンドヘアーを引っつかんで白井の前に差し出す黒やん。


白井本人は、もう坂本という存在自体に体を引き攣らせぎみで持ってこなくていい!という感じだった。


坂本は自分の白井アートが相当気に入ったらしく、全然謝らないで白井を数秒見てはあしゃしゃと笑っている


最終的には何十回も、黒やんが坂本に怒っている途中、白井はオレに「まあこれ水性だよな」と言って来るという、なんじゃこりゃな状況で幕を閉じたのだった。

白井は取り合えず坂本から早く離れたかったんだと思う。


その後どこかに行っていたらんをケータイで呼び出して、詳細は知らないけど黒やんは「でたらめ言って!」とらんを叱っていた。


それから、黒やんが旧作50円デーだから借りてきたこわ〜いビデオを坂本がどうしても今日見ると言い出したので、オレも三人についていって会場を後にしたのだった。



「後輩が迎えに来るけど間違えて二台タクシー呼んじゃったらしいから二人づつで乗ってこうか〜」


らんは外に出てすぐ後輩に電話して車を手配してくれた。


先に来た一台に坂本とらんが乗って、次を待ってる間に黒やんが、坂本のしくみを教えてくれた。


「あいつの理論では、面白いが正義でつまらないが悪という事になってるんだよ」


なんだか恐ろしいよーな、気の抜けるよーな。
噂の坂本の真相は、分かれば更に謎が深まる宇宙のよーだ。

本当のとこはまだ、誰も知らない。みたいな。


黒やんの言う、坂本に対しての勘違いとはこういうものだと思う。


白井の事も、白井は多分、オレが坂本に白井の事を言って坂本がオレの仕返をしてくれたと思っているのだろーけど、オレがブルーになっていた詳しい情報を知らない坂本の心を動かしたのは、この世のつまらない物に喝を入れるという事なのである、実際。


だから元城中で集まったときにオレをキレさせた事とその後の不幸については繋がっているようで、本当はあまり繋がっていない。


まあ、白井の名前を言ってしまったオレは容疑者その2かもしれないけど。


オレは考える、坂本理論はいいのか悪いのか。


「よくはないだろ」


黒やんは蒸し暑い中、コンクリート上でタクシーを待っているその時がこの日一番リラックスした時だと言った(後日談)


じゃあ、オレは考える。
この日、坂本理論はオレを救ったか。


「熱いねー」


その時、手はもう震えてなかった。星がきれいだった。






結局、いかにも現代っ子のらんが住んでそうなテカテカの高層マンションの小松宅で、ビデオ見たその日の夜。


自分で見るといったくせに坂本は途中で「つまんねー!」と言ってビデオテープを歯で食いちぎってそのレンタルビデオは死んだ。


黒やんはまたまたぶちギレて、オレは坂本理論がまだまだ分からないままその後長い事それについて悩むのだった。

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あきゅろす。
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