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8嫌な思い出のフレーバー
オレは元から、結構この日を楽しみにしていた。


とても人数の多い集まりだから、仲よい人達とだけ楽しく騒いでも全然問題無いからである。


きっと楽しい日になるはず。黒やんもいてらん君もいて、手島もいてオレはとっても安心だった。
そう信じて疑わなかった会場到着前、散歩気分で歩く午後7時であった。




【嫌な思い出のフレーバー】




始まりは午後6時半、少し遅めにやって来たオレは中々の人の集まりに、心踊らせ気味で、賑わってる〜と思った。


ちょうどそのとき、黒やんからメールで、「会員証更新しなくちゃいけないからもうちょっと遅れる」と届いたので、「気長に待ってま〜す」と返しておいた。

さてさて、黒やんが来るまで、何してるかな、と思っていたら、前方に、なぜか赤部ストアーの体操着予備を来た小松蘭太郎君ことらんがいたので気になり、オレは話し掛けてみる事にした。


「よーらん君!」


「ケンケンじゃ〜ん!社長ハバーナ〜イスデイ!」


らんはいつものようにペプシネクスを飲みながらご機嫌そうだったけど、余計に体操着予備がおかしい。


「ところで、らん君何で赤高の体操着予備で来たの!?」


すると、らん君はケラケラ笑いながら、教えてくれた。


「いや〜、さすがにこれでは電車乗って無いって!なんか着いたとたんにあきお君がこれ着ろ!ってうるさいから仕方なく着替えたんだよ〜、帰りは誰か車(タクシー)で迎えにくるかな〜と思って」



見てみれば、着替える前にらんが着ていたとされる、ヴィヴィアンのTシャツは無造作にテーブルの上に放り投げられてるという酷い扱いを受けていた。


「坂本君ももう来てるんだ?」


「来てるよ〜ん。でもどこに居るかわかんねーや。あの人移動が素早いからすぐ見失うなうんだよね〜」


らんに黒やんは遅れるという事を伝えたら、じゃあ黒やんが来たらダーツをしようと言っていつもの調子でふらふらどこかへ行った。


それから一人になったオレは、疲れた、座りたい、オレは歩いてきたんだ。と思い、空いているソファーか何かないか探していたら、よく知る声に呼びかけられた。


「おい!ケンじゃん!」


「うわ!信一じゃん!お前も赤高だったな!お互いお先真っ暗だねぇい」


「そんな事言ってないで、ケンもこっち来いよ!今赤高の元城中で集まってんだって」


城中、正式名称城山中学校はオレの行ってた中学で、赤高にも手島以外に十人弱くらいいる。

声を掛けてきてくれたのは結構仲良かった。山本信一だった。

信一と久しぶりに再開して、がんがんに鳴り響く音楽と共にテンションが上がっていったオレ。


「久しぶりだな〜。中学の頃二人でベランダでスチャダラパーの曲歌ってたらクラス会議で女子に、男子がベランダでうるさいです!て問題にされたよな〜」


「だったな〜!あのときはマジ返す言葉もなかったな〜!」


信一とついつい、昔話に花が咲き、その時オレは、あの忌まわしい記憶がどれほどの人間にどういう影響を与えていたのか全く考えず、城中の集団がいる場所にホイホイ着いて行ってしまったのである。


「お〜い!ケンが居たから連れてきた。」


信一が誘導した場所には、小さいテーブルを囲んでソファーに腰掛けてる顔見知りが五、六人居た。

少し話し事ある程度の人から、何回か一緒に飲んだ事ある人、まあみんな信一と手島よりは詳しくない人達だった。


「お〜高柳じゃん」


「ういっす。」


オレは疲れて足が棒になっていたので、信一の横に詰めて座らせて貰い、テーブルの上にあった、お水を頂いた。


「ケンの靴イカス〜」


しばらく無駄話をしていたら、信一がオレの靴を褒めてきたので

「だ〜ろ〜」

とタップのステップを踏みながらオレはご機嫌に返した。


「何〜やっぱ高柳も今日の9時からの為に気合い入れてきたんだ。」


オレのリアクションに向かいに座っていた、白井という男がニヤニヤしながらそう言ってきた。

9時?オレは彼の言葉の意味が汲み取れないまま聞き返す


「9時になんかあんの?」

「は?聞いて無いの?9時から、近くの女子高の女が入ってきてコンパじゃん。」


知らない。手島には赤高の集まりとしか聞いてない。そんな話は今初めて知った。


「聞いてねーよ!手島〜!手島はどこにいる?」

「あ、手島来る前にギックリ腰になったから今日はやめとくって言ってたよ」


そんな馬鹿か!なるか普通。ギックリ腰に。オレのお父さんでさえなってんの見た事ねーよ。

オレは念のため、ケータイで手島のブログを確認すると、今日の題名が「腰痛〜い」になっており、本文はいつものごとくFBIを舞台にした手島のオリジナルケータイ小説が綴られていた。


本当かよ。全く手島って奴は。

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