7モンスターホリック
気付いたら深夜1時、風呂から上がって何気なく付けたテレビ。
髪を乾かす前にマイナスイオン冷風機にあたっていたオレは、特番の「日本のミステリーカッパは本当に居た、トコトン見せます3時間」を、知らぬまに最後まで見てしまっていたのだ。
結局、ドライヤーをしないまま、髪はバサバサに乾いていた。
「どーした。オレ」
健。夏休みを控えた、蒸し暑い夜の事である。
【モンスターホリック】
この世には常識では解明出来ないものが沢山ある。
「〜であるからしてー、では高柳君この括弧に入る言葉は分かるかね!」
ひときはボーッとしていた政治経済の授業中、窓の外を見ながら、シャーペン回しをしていたら運の悪い事に今日の日付がオレの出席番号であった。
「あはい。カッパです」
オレが答えた瞬間、教室は沈黙ながら、え!?という空気が湧き上がってしまった。
一秒後オレもハッとなり慌てて言い直す。
「あじゃなくて、閣下です」
「あ・・おし〜い。正解は天皇陛下だね。ドンマイ!みなさんここテストに出ますよー」
先生にまで、お咎め無しどころか、フォローまでされてしまった。
危うし。一体どうしてしまったのだ。
でも、聞いてくれみんな、カッパってカッパって結構カワイイぞ!
朝っぱらからそんな調子で、気を緩めると、ついつい何でもカッパに絡めて浸ってしまう。
こりゃあまずいと思いながら、時はすぎお昼ご飯のときにはすっかり疲れていたオレだったのだ。
「ケン、お昼ご飯、カッパ巻!?」
「あーうん、ダイエットだよ!ダイエッツ!」
「えーケン痩せてんじゃん。栄養失調には気をつけろよ。」
黒やんはオレの手首に指を回しながら、心配してくれたけど、今カッパ中毒なんだとは告白出来ない。
「あ、そーいえば今日赤校の集まりあるじゃん、黒やん行く?」
その日は前々から手島に誘われていた赤校一年のでかいパーティーのようなもんがあるらしい日だった。
場所は若者が集うダーツバー、主催は中央中の奴らしいから坂本経由で黒やんも、もちろん誘われていた。
「あーわかんね〜。ビデオ返しに行かなくちゃいけないんだよ今日。らんと坂本は多分行くと思うけど。」
「ビデオって、黒やん超やる気ね〜。後からでいいから来てよ、オレ黒やんとらん君とかと遊びたいし。他の人はあんましらねーけど。」
黒やんはしゃきっとコーンを食べながら、のほほんと分かった〜と言ってきた。
言い忘れてたけど、君の栄養もどうなんだ。
学校が終わって、家からその場所が割と近かったため、オレは少し寝て、だらだらと準備をして目的地に向かった。
考えてみれば、こんなイベントに参加するのは久しぶりである。
中三の中場から、誘われても全部断って、極力新しい出会いを避けていたな。
中三の中場、もうあんな思いはこりごり。
オレが何したって言うんだ。
歩きながら胸やけがした。始まる前なのに、どんどんテンションが下がっていく。
もうやめよう、昔の事を考えるのは。
今日はただの男子校のバカ騒ぎ。大いに楽しめばいーのだ。
オレはカッパのキレイな緑を考えながら、明るい気持ちに切り替えようと歩みを進めた。
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