6坂本明男という男W
赤部ストアーは日本一品揃えがいいと有名で赤校の一番の自慢である
以前国民的人気朝の情報番組、朝ダスにも出たことがあるらしい。
そんな赤部ストアーはいっつも人間でごった返しており、入っていくのは中々ハードだ。
オレも混ざりた〜いと、思い初参戦を決意した、初夏の日の話である
【坂本明男という男W】
オレはお目当ての蓮根の挟み揚げを二人分買うために、赤部ストアーに来てすぐに即座、揚げ物コーナーの列を探し滑り込むように並んだ。
「やっぱ赤部ストアーはフツーの売店と全然違うわ〜」
大きさももちろん、コーナーの多さ、無料でコーヒーが飲めるスペース、無料で風船が貰えるスペースなんてある。
いくら馬鹿な生徒達だからって高校生なのに。馬鹿にしすぎなんじゃないのか。
オレはいつまでも息子達が子供だと思っているお父さんを赤校のティチャー達に重ねてみた。
列も段々短くなり、とうとうおばちゃんまで声が届く所に差し掛かるそのときだった。
オレは視界に入ってきたものに衝撃を受けた。まさにアンビリーバボーだった。
「あれは!」
それは忘れもしない、昨日、一年七組の教室で目撃した、あのカッパと全く同じカッパだった。
そのカッパはTシャツにプリントされていて、高々と赤部ストアーのメインポジションで販売されていたのだった。
商品名は、体操着予備。
「なんなんだ予備って!」
オレはたまらず一つ前に並んでいた体育会系の生徒に話し掛けた
「ねえねえ、あの体操着予備ってなんなのかね。」
「あれは、体操着を忘れた生徒のために体操着よりリーズナブルな値段で売られてるTシャツらしーよ。でもなんであれカッパがついてんだろ〜な〜」
さすがに体育会系だけあって、体操着予備の存在を知っていた彼だったがカッパに関してはオレと同じように謎が溶けていないようだ。
「やっぱ変な学校だねー」
「でもオレよく赤部ストアーに来るんだけど、最近やたらカッパの商品が増えた気がするんだよなー。赤部ストアーは何でも揃ってるって有名だからそこまで気にして無かったんだけど。」
彼の言う通り、よく見たら商品の中に所々カッパを思わせるようなものが混ざっている。
定番の赤部蛍光ペンもカッパカラーである黄緑が一番売れてる色!とピックアップされていた。
「やっぱ、学力向上を捨てた学校は目的が読めねーなー」
「だ〜ね〜」
オレは蓮根のはさみ揚げを買い、赤部ストアーを立ち去ろうと踵を返したのだけど、一瞬、売店の中の方に、何か眩しいものを感じたのだった。
「坂本ー!売店の売り場に入るなと何回言わせるんだ!!!」
そのとき、スバルタで有名な水泳部の西岡先生の怒鳴り声は生徒達の雑踏に紛れてオレは全く気付かなかったのである。
「やだーン!!!引っ張り出したらプールにバブ(炭酸ガス入浴剤)入れるぞ!」
だから、赤部ストアーのおばちゃんにしがみついて、西岡先生に頬を抓られる坂本がいた事を、オレは全く知らなかった。
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