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3坂本明男という男U
坂本明男の幼なじみ、黒川君はオレの真後ろの席だった。
やはり黒川君は他のクラスメートからじろじろ見られていた。
オレもプリントをまわすときチラッと黒川君を見てみると目力のある大きな目で睨まれたような気がした。
やっぱヤンキーは怖いね〜と思いながら、オレはそんなビビリも中学の頃の鬱気味な心に比べれば、とても健全で、素敵だな〜とか考えていた。




【坂本明男という男】



赤高に入って一ヶ月、夢もなければ汗もない、それでも悲劇もなければ痛いもない高校生活は薄くてオレは幸せだった。


黒川君は、怖いはずだけどみんなから好かれて友達が沢山出来ていた。

まあやっぱし、割とミニマムな黒川君はキュートだったけど、まだ、その鍛えられたバディと坂本関係という事にみんな恐れていたとは思う。


「黒やーん、西中の山下って知ってる」

「顔見ればわかるかもね。」

「そいつマジ調子乗ってんだって〜坂本君とそいつ黙らせてよさ〜」

「知らねーってんな事にオレ使うなや」


こういった会話はよく教室内で響く。その時の黒川君、通称黒やんは不機嫌そーにお目目をキッとさせて、同年代とは思えない疲れた表情で相手を見るのだった。


「下手に坂本なんか出さないほうがいいって、あいつ本当気まぐれだから、お前らは坂本を勘違いしている」


「勘違いって何よ。」


黒やんはそれ以上坂本の事を喋らなかったが、当時そんな苦〜い顔をしている黒やんを何回も見た。


そんな黒やんも本当は人が勘違いしてるほど、怖くはないって事を知ったのは、オレと黒やんが仲良しになったその二ヶ月も後の事でした。



「あ、あれ黒やんだ。」


ある日、オレが一人放課後、学校をうろついていたら、焼却炉の傍に誰が使ってんだって感じのニスつやつやの小さいベンチを発見した。
ニスのつやつや感がオレ好みだったんで、人の寄り付かなそうなそこは、その後オレのマイベスト喫煙ポジションになった。


しばらくそこで憩いをしてたら、何日か後に、黒やんに出会ったのだ。


教室で毎日顔を合わせてるはずなのに、まるで初対面かのよーに。



「あー」

「あ、ちっす」


黒やんは先客のオレにまるで、後輩のように礼儀正しく挨拶をしてきた。

オレは黒やんとはそこまで話した事なかったし、イメージが怖い系だったので、ちょーっと困ったんだけどね。


「黒やん、ここ知ってたの。マニアック〜」


「いや、今日初めて知った。穴場だねー」


黒やんとの空気は恐ろしくほのぼのしてて、オレの中のイメージの刺がぽろぽろ落ちていくのを感じた。

黒やんはとても煮詰まった顔だったので気になり、オレは問うてみた。



「黒やん、しかめっつらだけど、何か息苦しい事でもあった?」

黒やんはチャラキャラのオレに話してくれるかなと思ったけど、すうと煙りを吐いて、苦笑いで心の内を打ち明けた


「オレの幼なじみ、坂本とらんって居るんだけど。」

「知ってる。知ってる。」

らんとは三人組の一人、小松蘭太郎くんの事。

知らない人でもらんでわかる。


「あいつらさあー、本当子供なんだよ、ちゃんと就職出来んのかなーと思って。」


オレは黒やんの意外なお悩みに絶句して返す言葉に戸惑ってしまった。
一方黒やんはそれも気にせず、溜まっていたものを吐き出すかのようにこう続く。


「坂本はクレイジーな事とカッパにしか興味ないし、らんはコーラばっかり飲むし、二人だとすぐ誘惑に負けるし・・」


「コ、コーラかコーラコーラ・・」


「オレが怒っても最近は効果無いし、むしろわざと怒らせてくるし、挑発に乗ってすぐキレるオレもダメなんだけど・・」


オレはろくなアドバイスが返せない、黒やんはかなり真剣に話している事が分かったんでとても焦っていた。


「根が小学生から成長してないから、会社で上司に怒られたら、すぐへこたれんじゃないかと思って、オレはプロサーファーになりたいから、そこまでフォローでついとけないし。」


オレは、当然だろ!と心の中でツッコミながら、このこはいい子だ。と確信したのであった。

そして、サーファーっぽいと思ってたけど、やっぱサーファーだったんだと知った黒やんとの真の付き合いの始まりである


「小学生までは、野球少年だったんだけど、波内際で流木が流れてきたときオレ思ったんだ・・」


深刻な悩み相談のはずだったのに、いつの間にか夢の話になってますで!と思ったけど、オレはそのまま笑顔で話を聞く事にしたのだった。

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