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76横須賀誠悟の恩返し
突然、一人暮らしの自分の家にやってきて、禁煙の我が家でタバコを吸い出した坂本を見ながら、横須賀誠悟は、小学生の頃のとある出来事を思い出していた。


換気扇の下で煙を吐き、自分につらつらと語りかける坂本明男。
締めの企むような笑い方が、当の出来事をフラッシュバックさせる。


小学六年生の時の事だった。自分と坂本明男の居たクラスにとある噂が流れた。黒川大一の父が、黒川の母親以外の女性とラブホテルから出て来るのを見た。
夫婦円満じゃない家庭など今の時代珍しい事でもなく、男の浮気など今の年頃であればその辺どこにでも転がっているような話だ。
だが、小学生にとっては刺激の強すぎる不道徳極まりない噂だったのである。

それでもそのクラスの男子は皆黒川を慕って同い年ながら格上のように尊敬している者もおり、噂に興味はあれど黒川の耳に届かぬよう接し揉み消える事に努めた。
だが、女子は男子よりもその手の話を不快に思う物で、黒川自身には関係無くとも、どうしても偏見が交じり見る目が変わってしまう。
始めは、一部の男子のみの間で秘密にされていたその噂がクラス中に広まったのはすぐだった。

教室の隅で噂話をしながら苦笑いをする数名の女生徒、噂が耳に入っていない黒川はそれが自分の事であると知る由も無かった。

男子の間で堅く守られていた噂を女子に流したのは一人の男子生徒、刺激的な噂を誰かに話したい欲求を抑えきれず、惚れている女子生徒のしつこい要求も相成って軽く口を割ってしまったのだ。

その女子生徒も噂好きの高飛車な女で、すぐに女子の間でも広め、その男子生徒と二人陰でヒソヒソとしたやり取りを続けた。

黒川を売っておきながらも、女子との秘密のやり取りを喜ぶその男子生徒を、誠悟は冷めた目で眺めながら、すぐにそいつが裏きり者である事に気付いた。


誠悟は心の中で、彼の事をひどく馬鹿にした、本人に気付かれていなくとも、黒川を敵に回せば、坂本、その他大勢の黒川の仲間を敵に回すというのに

その中には、勿論自分も含まれているという事

それが意味する物は、楽しい時間から終わりまでのカウントダウンはあっという間であるという事。




【横須賀誠悟の恩返し】




誠悟は野球部のピッチャーで、キャプテンであった。
背も高く、野球の技術も高く、冷静にゲームメイク出来る優秀な頭も持ち、後輩や同級から慕われていた。

だが、野球部の精神面を纏めていたのは副キャプテンの黒川大一

野球の技術面では誠悟に劣らず、不動の四番打者で部一の点数稼ぎであった。

後輩に対しては、若干スパルタ気味で怒らせると恐ろしい副キャプテンと認識されていたが、黒川自身後輩達以上に過酷なトレーニングを毎日やり遂げ、筋の通った言動と親密に接してくれる自分達への態度で、皆黒川に憧れ、野球面で人間性の面でも黒川を目指した。


「これ誰のグラブ?」


部活終了後、部室の床に落ちていたグローブを拾い上げ、怒りを含ませた静かな声を出す黒川。

談笑しながら着替えていた部員達は、その声に全員危機感を感じて自分のグローブの所在を確認する


「は、はい。オレのです・・・」


数秒の静寂の後一人の後輩が恐る恐る黒川の前に名乗り出て、許しをこうような目を向ける。

そんな後輩の胸に力強くグローブ叩き付け、怒りのままの目で黒川は後輩に訴えかけた


「次床に置いてたら捨てんぞ、コラ」


「すいません・・」


「グラブもスパイクも毎日磨け、見た目の問題じゃない、グラブがちょっと滑っただけでボール取れないで顔面に当たるかもしれねえし、スパイクに小石が挟まってるだけでスライディング失敗して怪我するかもしれねえんだよ、それで試合に出れなくなったらお前が毎日しんどくても走り回ってる意味がなくなんだろ」


最初は怒りが含まれていた声も、後半にいくにつれどんどん優しくなっていく。
声の変化に息をついた部員達は、殺伐とした空間が柔らいでいくのを感じ安心を取り戻した。


「副キャプテンキレてる時の顔マジ怖いす」


「うるせーオレは道具が粗末にされてんのを見ると腹わた煮えくりかえんだよ」

「副キャプテンは風呂にもグラブ持ってきますもんね」


「持っていくかい、脱衣場までだ馬鹿」


「アハハ!脱衣場までは持っていくんすか!」



野球部の名物的な物になっている、黒川がキレて後和むまでの光景。

そんな光景を誠悟はいつも最初から最後まで口を出さず、黙って見ていた。

誠悟は知ってる、黒川が幼い頃父親から買って貰ったグローブを心底大事に扱っている事を

子供に玩具を買う事に興味の無かった黒川の父親が、ただ一つ黒川に与えた黒いグローブ

五歳の頃から使っている年代物だというのに、黒川のグローブはいつでも誰のグローブより美しかった。


黒川に叱られた後輩も周りの後輩も交えて笑い合う黒川を眺めながら、誠悟は静かに自分のグローブをバッグにしまう。

そんな誠悟に、横で着替えていた後輩が笑いながら話掛けた。


「キャプテン、副キャプはやっぱキレると怖いっすねー」

「ああ、そうだよ」


「アハハやっぱキャプテンも思ってんですね、でも副キャプ目がかわいい」


聞こえると殴られるので後輩は小さな声で誠悟に呟く
黒くてでかい眼球は黒川にとってコンプレックスであった。

キレて睨みを利かせている時でさえキラキラとしている。
迫力の減点になるそれが格好悪いと黒川は気まずい時にはすぐ目を伏せる。


「ああ、そうだな」


後輩のおちゃらけた言い方の言葉に、誠悟は少し微笑んで短く同調した。


後輩にとっての黒川は、バッティングの先生で、怒りっぽくて信じられないくらいタフな男として見上げる存在の強い副キャプテン。

それは誠悟にとってもだったが、キャプテンと友人の立場である自分は、野球部の中で誰も知らない黒川大一を唯一人知っていた。

後輩の前で弱い部分など絶対に晒さない黒川の一瞬の張り詰めた集中力をほぐす事が

ゲームメイクするより、後輩を指導するより、ストライクでバッターを三振させる事より、一番重要なキャプテンの仕事だと誠悟は常に心がけていた。


その仕事をこなしたのは過去にたったの二回の事だったのだが。


ある時の試合の後だった、その日の試合は、延長逆点負けの後味の悪い結果だったのだが、大きな公式戦前の練習試合のような物だったので、皆悔しがりつつも次に備えて気持ちを切り替えた

黒川も解散時に「しゃーない、終わった試合は。次は勝つ明日は休みだから、もう忘れて今日は遊び行け」
と早めに部員を帰宅させた。前日までの過酷な練習と今日の負けが部員達に相当な疲労をもたらしていると感じ取った黒川は、無駄に終わったミスを振り返る事はせず、後輩達に後悔の念を沸かせる空気を一瞬たりとも作らせなかった。


部員達が全員帰宅した後、鍵を閉めようと誠悟が一人部室に戻ると、ユニフォームのまままだ着替えさえすんでいない黒川が一人、ポツンと床に座り、ぼーっと壁を眺めていた。


「黒ちゃん?」


魂の抜けたような表情の黒川に、誠悟は近付き、横にしゃがむ。

近くに来た誠悟に気付いた黒川はぼーっとした目のまま誠悟に視線を合わせた。

「やっぱ、聞けばよかった」


視線が合うなり、ぽつりと呟いた黒川の言葉に誠悟は一瞬何を指しているのか分からず、きょとんと黒川を見つめる


「終わった試合の事言ったって、どーしょうもないから、久々の休みじゃん余計な後悔で潰したらいかん、と思ってミーティング無しに帰したけど、やっぱみんな言いたいの我慢してる顔だったわな、悔しいって」

後味の悪い試合だったから、誰もが少なからずそう思ってるのは事実だが、黒川の考えもまっとうである。
部員達は、その辺をちゃんと理解して帰宅したのだが、黒川の頭には砕ききれていない物が引っ掛かっていた。


「悔しいって言わせてやればよかった、聞けばよかったオレもちゃんと」


スパルタ副キャプテンの黒川からは想像出来ないような、弱々しい声

どんどん伏せられていく目に、誠悟は心が揺れた。

自分の目にも珍しい黒川のガス欠

誠悟はその瞬間、無性に黒川に触れたくなった。

肩でも良かった、背中でも良かった、腕に手を置くだけでも良かった

それでもそれ以上にこの時の黒川の姿はなんだか神聖な物に思えて、その欲求にバリアを張られているようだった。


「黒ちゃん、大丈夫、黒ちゃんの言った事でみんなの悔しさは半分以上晴れた、今夜は全員黒ちゃんの教えを守ってグラブを磨いて寝るよ」


誠悟は肩を抱けない代わりに膝の上に乗せられた、黒川のグローブを撫でた、試合直後にも関わらず、既にピカピカに磨かれたきれいな革のグローブ。



「それに、誰よりも一番悔しいって言いたいのは、黒ちゃんだよ、ここまで言いたいの我慢してる顔は他に誰もいなかった」


誠悟はキャプテンとして黒川を支えようとする者として、黒川の我慢をほどく

誠悟の言葉に、黒川は伏せていた目を無意識に持ち上げた。


「せーご、オレ悔しい」


「勝たせてやりたかった。」

「だってオレの打順の時、みんな必死でコールして、もう音程なんか滅茶苦茶で、大声で、必死で」

「もっと点数稼ぎたかった。」



ぽつりぽつりと、ゆっくりながらも止まらない黒川の言葉にせーごは黙って最後まで聞いていた。

誠悟は他人の弱音を聞くのが嫌いな人間だったが、黒川の小さく吐き出される言葉は透き通る管楽器の音のように耳に心地良かった。

いつも、枠の外から冷静に眺める事が出来た、物事も、人間も。
誠悟にとっては何でもたやすかった、勉強も人間関係にも苦労した事は無かった。

ただ、この時だけはただ黙って言葉を聞く事しか出来なかった。
この接し方が黒川の心を解く完璧な物だとは思えなかった。


誠悟にとって、黒川だけが簡単では無かった




黒川の父親の噂がクラスに流れ始めてから数週間、誠悟は冷静に情報を集めながら時期を待った


この数週間の間、噂を流した男子生徒に、そわそわしたような様子が出始めた事を誠悟は陰で笑う。


誠悟に絶好のチャンスが訪れたのは、卒業文集に載る作文の事前発表会の時である。

各クラスの担任が自分の受け持つクラスの生徒の作文の中で特に良く書けてある物を一つ選び、全校生徒の前でそれを発表させるという物だった。


誠悟にとって幸運な事に、自分のクラスで選ばれたのはあの噂を流した男子生徒。

下準備はバッチリであった。
未だ飽きずに女子生徒と噂の話で笑うその男子生徒、勝ちの余裕を確信した誠悟にとってはその姿でさえ、滑稽で愉快だった。



集会当日、今から起こるハプニングをただ一人知る仕掛け人である誠悟はそんな素振りも見せないまま冷めた目でクラスの列に一人の一生徒としてステージを眺めていた。


生徒が集められて人が密集した体育館、多少の私語でざわつきながらも問題無く、クラスごとに発表は進んでいく

発表は中々凝っていて、選ばれた生徒が自分の作文を読みながら背後に吊されたスクリーンにも同じ文章が写し出された。


次々に選ばれた生徒が作文を発表し終え、ついに来た自分のクラスの番に誠悟は密かにほくそ笑む


あの男子生徒は、自分の名前が呼ばれると同時にステージに上がり、まだ何も気付かないまま自分の作文が用意されて置いてある卓上まで歩いた。


全校生徒も男子生徒を目で追い、彼が読み始めるのを待つ。


男子生徒が紙を持ち、文章に目を当てた瞬間だった。
みるみる表情が硬直し、焦りと羞恥に顔が染まる。

そんな彼の急激な変化を、ただ一人予測していた誠悟はクライマックスに笑みを深める。


中々話しださない男子生徒の様子にステージの下から見物している全校生徒は、理由の見当がつかず次第にざわつき始める

誠悟は男子生徒が話し始められない理由を知っていた。
それは、今彼が壇上で持っている紙に書かれた文章が、卒業文章用の作文なんかではなく、彼が好きな女子生徒に一週間前に送ったラブレター、女子生徒の机から抜き取ったのも、作文とそれをすり替えたのも誠悟なのだから知らないはずが無かった。


ラブレターの返事を女子生徒に訪ねても、そんな物知らないと言われた男子生徒は自分の赤裸々な感情が記されたその手紙の紛失を知り、ここ数日落ち着かないでいた。

探し物の内容が内容なだけに、人に相談するわけにもいかず、悶々としていたのだが、まさかこんな所で手元に戻ってくるとは思わず、全校生徒の前という逃げ場のない状況で完全にパニックになっている。


作文がすり替わっている事をなんとか教師にだけ告げようと口を開きかけたその時、ダメ押しに写し出されるスクリーン

光るライトに振り返った、そこにあるのは、今手元にあるラブレターと全く同じ物が、何倍にも拡大されて写し出されたスクリーン

誠悟がコピーした物だ、文章がすり替ってると気付かないまま、スクリーン担当の教師が別室で体育館の状況を知らないまま、タイミングをみてスクリーンを光らせてしまった。

男子生徒は、言葉が出ないまま顔を青くさせる。


突然の出来事に、全校生徒はどの発表の時よりもステージに釘付けで、反応様々に騒ついた。

誠悟も生徒の中の一人に扮して、慌ただしい周りに身を隠す。


やり方が卑劣だと言われようとそれは承知だ。

プライバシーの侵害はお互い様、人を踏み台にして楽しんだ分のツケはきっちり払って貰わないと気が済まない。

同等の規模で、もしくはそれ以上。


クラスの女子列で、ラブレターを貰うはずだった女子生徒が自分の実名が晒されたスクリーンに、ヒステリーを起こしている

噂話したいが為に惚れてる弱みに付けこんで男子生徒から秘密を吐かせた女子生徒を加護する気にもなれず、宛名を消さないまま誠悟は作文と手紙をすり替えた。


何が起こっているのか分からないと騒ぐ群衆の中、誠悟はただ一つの周りと違う反応を見せる、奇抜な色彩に気がつく。


出席番号準でならぶ列の自分よりずっと右奥、小学校六年時のある日突然、発光するブロンドに変わっていた髪
いつだったか、詳しくは覚えていない。教師の間で前代未聞の問題になったその行為も当の本人にとってはただの退屈しのぎで、もう既にその色は彼に馴染んでいた。

そのブロンドがステージに釘付けの全校生徒の中、ただ一人自分に視線を向けていたのだ

視線に気付いて、目が合った直後、そのブロンド、坂本明男はにやりと笑って、片目をつぶる

ウインクは坂本明男の癖の一つである。
雑踏の中に見えたそれは一瞬の出来事だった。
今日の今日まで、自分しか知らなかったはずの事、なぜ坂本明男は、自分に視線を向けたのか、坂本明男は何を気付いて、自分を見たのか、さすがの誠悟も予想外であった。

坂本とクラスは一緒だが、特に仲が言い訳でもない、悪い訳でもないが、お互いに一クラスメートでしかない間柄
こんな場所で不意に目合う事など、偶然にしても不自然すぎる事だった。

今のサインは一体


坂本と視線が外れた瞬間、体育館中に響く大声で坂本明男は叫び出した


「とつぜんーごめんねぇー!!気付いてたかなあー!それともビックリしたあー?」


ふざけた調子で坂本はスクリーンに写し出された手紙を読む。

スピーカーのように叫ぶ坂本に対して周囲からは笑い、不謹慎さを嫌悪する視線様々な反応が降り注ぐ。


あまりに無秩序な空間になってしまったこの場所に教師達は焦り、急いでスクリーンを消した。

すぐに坂本の元にも教師が迎い、笑いながら叫び続ける坂本を体育館から連れ出す


「俺はー毎日めぐみちゃんの夢を見ますー昨日の夢でもめぐみちゃんはアハハハ!」


体育館から出る直前まで手紙の内容を叫び続ける坂本。
誠悟は自分の作戦に更なる落ちがついてしまった事に、少し呆然としながらフィナーレを眺めていた。


そして誠悟は思った、きっと坂本も自分と同様噂を流したのがあの男子生徒である事に気付いていたのだと。

この騒ぎで、黒川の噂はあっという間にどこかに消え去った、それ以降この件について坂本と話すなどという事は誠悟に起こらなかった。

だが、あの時の坂本の笑みだけは今も忘れない。

教師に連れていかれた後、手紙と作文をすり替えた犯人の事を問いただされたようだが、坂本が誠悟の名前を口にする事は最後まで無かった


それから卒業までは、また今まで通り普通に話す程度の仲に戻った坂本と誠悟

誠悟はわざとらしく親交を深めようとも、視線が合った理由を問おうとも思わ無かった。


ただ、いつか借りは返そうかな、と、その時が来るのだとしたら。





「まだかーい」


「もちょっとだ、換気扇の下以外でタバコ吸うんじゃねえよ」


その時が、まさかこんなに経って本当にやってくるとは、と誠悟は思いながらパソコンを操る。

家に訪ねて来た、坂本の口から、まさか樫木、グロリアスという単語が出るとは思わ無かった。


ケンがとうとう坂本に口を割ったか

誠悟は思い出す、少し前にひょんな理由で参加した合コンで見せつけられた坂本とケンの長いチューシーン
一瞬氷り付いた場の空気だったが、直ぐに冗談として片付けられたそれに、その場にいたメンツの中で誠悟だけはまだ疑わしく思っていた。

ケンにはケンの表情で、二人の間に何かあると気付いたと言ったが、本当は違う。

和らいだ空気でまた各々の会話に戻っていった中、誠悟は密かにチラチラと二人の様子を観察していた。

特に変わった様子は無い、二人はいつも通りにふざけ合っていて特に何も疑惑を見いだせず、観察を止めようとしたその時、ほんの、ほんの、一瞬だけ坂本がこっちを向いた。




そしていつかの、見覚えのある片目を一瞬閉じるサイン。




誠悟は思う、うわあー、と




恐らくその行動にケンは気付いていない、誠悟は本心からケンを気の毒だと思った。

でもまあ普段から坂本に振り回されている耐久性があれば大丈夫。



グロリアスの件でついに坂本が動き出したか、二人の関係にはどう関わっているのか


面白い、やっぱそうこなくちゃ



パソコンを弄る誠悟の後ろでソファーに寝そべりながら無言で携帯を耳に当てる坂本。

無言だが、口は愉快そうに弧を描いている




「昨日と同じじゃん」



「何聞いてんの?」



「日記」



坂本の返事に誠悟は理解不能と判断し、そのまま作業を続けた
素っ気ない誠悟の態度も気にせず、坂本は機嫌良く携帯を耳に当て続ける




「バカの元気を知らせる日記」



もう一度笑いながら言い直した坂本は、再びボタンに指を添え、留守電に残されたメッセージの二度目の再生をした

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