小説置場 3 カウンターの中にはマスターの姿が無かった。 「マスターは今お客さんを迎えに行ってますよ。私は留守番です」 『伯爵』が自分の隣のスツールへ、どうぞと手招きした。 俺は素直に座る。 今日の『伯爵』は珍しくワインを飲んでいた。 「珍しいですね、ワインなんて」 ブランデー以外口にする所を見た事がない俺は驚いて言う。 「たまには、ね。それより今日この後お暇はありませんか?」 いきなりの『伯爵』の誘いに戸惑った。 「実はあなたにお見せしたい物がありまして。是非家に来て下さい」 素性の分からない男に家に来てくれと言われても困るが、『伯爵』の誘いは断れなかった。 この不思議な男がどんな所に住んでいるのか、興味があるのだ。 「見せたい物って?」 全く検討のつかない俺に『伯爵』は、 「私が作り上げた玩具をお見せしましょう」 また不思議な言葉で俺を悩ませる。 そこへ客を迎えに行ったマスターが帰ってきた。 『伯爵』はカウンターに一万円を置きスツールから立ち上がり、マスターに話かける。 「私の玩具を彼に見せるので今日は帰ります。ワイン、美味しかったです」 「特別なワインですからね。…『伯爵』の作る玩具は素晴らしいですよ」 マスターは俺に話し掛け、微笑んだ。 「さぁ、行きましょう」 『伯爵』から背中を押される感じで店を後にした。 「あの、これって…人間ですよね?」 俺は目の前の青年の姿に目を奪われながら、玩具とはどういう事だろうと考えた。 「"元人間だった"と言う方が正しいですね。今は言葉も話しませんし、ただの性玩具ですよ」 『伯爵』は淡々と答え、磔にされている青年の前に立ち、優しく頬を撫でる。 「よしよし、良い子で待ってたみたいだな」 青年は『伯爵』の言葉に嬉しそうに頷き、潤んだ目で『伯爵』だけを見ていた。 俺はこの青年が『伯爵』のSMプレイの奴隷なのかと思った。 「なんで俺を招待したんですか?」 磔台から青年を外す作業をする『伯爵』に尋ねた。 この青年が見せたい物だとは分かったが、『伯爵』が俺を家に呼んだ意図が分からなかった。 青年を床に転がすと『伯爵』は低い声で青年に命令した。 「四つん這いになりなさい」 青年は素直に従い、その体勢を取る。 乳首から垂れた分銅と、陰茎から生やしたガラス棒と、肛門に埋められた二本のバイブが痛々しい。 しかし青年の顔には興奮の色が表れていた。 [前へ][次へ] [戻る] |