現世乱武小説
●心おきなく甘えてよ(小十佐)
一瞬締まったのを感じたのか小十郎はくつりと薄く笑い、不意に佐助の首筋に顔を寄せてきた。
「…小十郎さん?」
性急にことに及ぶわけではなく、ぴとっとこちらの肌の感触と匂いを楽しんでいるような行動。
繋がったまま流れる優しい時間。
…なんだかむず痒い。
まるで甘えられているような――…
と、そこで気付いた。
年齢で考えれば青年と称されるべきこの男は、頼りにされることに慣れすぎて誰にも甘えられなくなってしまっていたのだ。
年上の島さんとも同じ目線で接しているのだから仕様のない人だ。
だから、これが小十郎さんの甘え方。
俺だけに見せてくれる、意味を添える必要のない行動。
ああ、やばい。
今俺様、ものすごく満たされてる。
ずっと保護対象として扱われていて、やっと同等の立場として見てくれて。
今は甘えてもいいと思ってくれるくらい、俺のことを認めてくれている。
逡巡してから、ちょっと勇気を出してこちらの首もとに埋まる相手の頭に手をまわしてみた。
そっと後ろに流した黒髪を撫でてみるが小十郎が嫌がる様子はなく、好きにさせてくれることが気持ちいい。
しばらく幸せなときを過ごしていたが、小十郎の声がその悠久の空気を破った。
「……そろそろやめねぇと…泣くまで掘るぞ」
「ええっ!ごごごごめんなさっ…!」
甘さなんて微塵もない、成熟した野獣の唸りにぎくりと身を固めたが咄嗟にでた謝罪の言葉も腰を扱われて最後まで言えなかった。
だいぶ時間がたったからか、収めた直後の張り詰める痛みはもう馴染んでしまっていて、揺さぶられても痺れるような快感ばかり拾ってしまう。
「…何食わぬ顔で俺の理性試しやがって」
「ぁ、うあっ…やっ、」
自分からすり寄ってきたくせに!という抗議は自分の喘ぎに虚しく飲み込まれ、下から突き上げてくる強すぎる刺激に油断していた体は過剰なくらい反応していた。
びくんびくんと腹筋に力が入るたびに反り返った男根から先走りが溢れ、ぱたぱたと布団や小十郎の腹に飛沫を飛ばす。
やっぱり自分でやるのとじゃ大違いなんだなぁと、熱に浮かされる頭の片隅でぼんやりと考えているとぐいっとあの一点を突かれ、一気に射精感が上り詰めてきた。
「あぁあッ、ひ…んっ、出ちゃ…!」
「もう少し、我慢してくれ…」
強請るように紡がれた、ツラそうな甘い声。
宥めるように抱きしめられ、こちらの耳元に唇を寄せると小さく囁いた。
「…一緒にイかせろ」
「っ――!!」
直後、募った射精感は外へと弾けてしまった。
肩で息をして呼吸を整えていると視界にどこか拗ねたような小十郎の顔を捉える。
「…言ってるそばから、」
「い、今のはそっちのせいでしょ!」
無自覚にとんでもない爆弾投下しておいて…
着弾とともに盛大に爆発、なんておやじギャグより寒すぎる。
特に際だった愛撫を受けたわけでもないのに達してしまったことが恥ずかしすぎて目が合わせられないでいると、一人満足して横たわっていた自身を握られた。
「ちょっ、待っ…」
「お前が待たなかったから俺も待たねぇ」
「ええっ!」
なんというワガママ!
ちょっとかわいい…!
しかし小十郎がそんな「ちょっとかわいいワガママ」だけで終わるわけがなく。
心なしかムスッとした表情ですっかり発散しきった佐助の雄を絶妙な力加減で扱きだした。
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