現世乱武小説
●予期せぬ言葉(小十佐)
ようやく弱い啼きどころを解放されると、今度は弛緩した後腔に指を一気に三本突き立てられた。
「んっ、ぅ…」
訪れるであろう圧迫感と痛みを覚悟したが、体が思い出したのかそこまでのものはなかった。
くち…と下から聞こえてくる淫音に泣きそうになりつつも、それ以上になんの刺激も与えられていないのに先からいやらしい涙を流す自身が情けなくて仕方ない。
目尻に溜まった涙を舐めとるように口付けられる感覚にすらぴくんと反応してしまうこちらに、小十郎はくすりと笑った。
「…可愛いな」
「なっ…なにが!」
予期せぬ台詞に思わず大きな声が出た。
だって……だって小十郎さんはこんなこと言うタイプじゃないって思ってたのに…!
不意打ちすぎて心の準備ができていないところにこれはやっぱりよろしくないだろう。
しかしそんな返しにすら愉しげに肩を揺らして笑う小十郎はどうしようもなく格好良くて。
結局そんな結論しか導くことができない己の思考回路はいい加減重症だと思う。
「…小十郎さんてさ、それ…わざと?」
「?」
言動がいちいち惚れ直させる要素になるなんて、狙ってやっているとしか思えない。
というか、そうでないと俺が困る。
なんだか釈然としなくて、佐助はぼそりと訊ねた。世ではこれを照れ隠しと呼ぶのだろうが、そこは自覚があるので見逃してほしい。
「なんの話だか知らねぇが…コレはわざとだ」
言いながらぐっと指を曲げられ、中の熱いしこりを引っかかれた。
「んぁあ!」
咄嗟に腰を逃がすが、そうすると皮膚の薄い双球の裏を自ら小十郎の欲に擦り付ける形になり生々しい刺激にびくんびくんと不規則に体が跳ねる。
それを皮切りに中におさめた三本の指が熟れた後腔を蹂躙しはじめた。
「あ、ァあ…く、」
前にも後ろにも引くことができず、板挟みの快感に気が触れそうになる。
…もっと、大きくて固いものが欲しくなる。
目をぎゅっと閉じて迫りくる劣情を押さえつけてタバコの匂いが染み込むシャツに縋りつくと、小十郎の口からとんでもない言葉が飛んできた。
「自分で挿れてみろ」
「そんっ…!」
「大丈夫だ。…支えててやる、ゆっくり腰を落とせ」
宥めるように淡く微笑する小十郎に胸を高鳴らせつつ、佐助はぐっと反論を飲み込んでこくりと頷いた。
本気で嫌がれば、きっと簡単に引き下がってくれるのだろうけれど。
逆にそれが判るから応えてみたくなる。
…俺がこの人を気持ちよくしてあげられる。そう考えれば、自然と恥をおして臨むことができた。
力が入らない膝を立てて、小十郎の肩に片手を突き体勢を保ち、もう片方の手で大きく脈打つ熱い楔を固定する。
慎重に腰を沈めると先端が菊門を押し広げていくのがわかった。
「ん、ぅ…あ」
「もう少し力抜けるか…?」
「…はあ、ァ……く」
「……いい子だ」
よろけてしまわないように腰を支えてくれる小十郎の手がやけに熱く感じるが、それも気にならないくらい中に迎えている欲のほうが熱い。
接している肉壁が溶けてしまいそうなくらい。
少しずつ、少しずつ。
愛しい人を受け入れていく。
ツラいのは自分だけではないはず。時折り眼前の男前な眉が潜められたり、ぴくんと跳ねたりする様子が色っぽい。
時間をかけてすべてを収め、佐助は喉が震えないよう気を払いながら細く吐息を漏らした。
「はあ……ぅ、入った…」
「…ああ。よくできたな」
穏やかな声音の中に確かな雄の気配を感じ取り、きゅっと下腹部に無意識に力が入る。
掠れ気味の甘い声。劣情に揺れるとそれが少し低くなって。
その腰にくる声が大好きなんだ。
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