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現世乱武小説
後悔と苛立ち(小十佐)
*小十郎side*


小十郎はハンドルを握りながらちらりとルームミラーを見やった。
佐助はみの虫のように羽織にくるまったままで動くことはなかったが、呼吸のリズムは明らかに平素より早い。

とりあえず野良男たちはしばらく立つこともままならないだろうから当面は問題ないとして、その後の処理は島に任せた。
昔からそういうことは得意な奴だ。どうにかしてくれるだろう。


「……」


佐助は平気などと言っていたが、あんな言葉を真に受けるほど俺はこいつの他人じゃない。
本当はどうしてほしいかくらい見当はついている。

…今も苦しいのだろう。
それを素直に訴えるのがわがままだとか、迷惑になるとか、そんなふうに思っているから自分の首を絞める結果になる。
そうさせないためにも俺がついていてやらないといけないのに。

肝心なときに傍にいてやれない。
それじゃあ意味がない…


小十郎はぎり、と奥歯を噛み締め、アクセルを強く踏み込んだ。













数分後、佐助や幸村の住宅地に入り目的の家に到着した。
慎重に車を停めてサイドブレーキを引き、後部座席に声を投げてみる。しかしなんの応答も返ってくることはなく、身じろぐ気配もない。
もしやと思い振り返ってみると、案の定羽織を落とした佐助が眠っていた。


「……しょうがねぇな」


冷房がガンガンに効いた車内で裸はさすがに後々響きそうだ。
小十郎は運転席を降りると後ろのドアを開け、左近が投げ込んでおいてくれた佐助の服をまさぐって家の鍵を探した。

が、紛れ込んでいたのは携帯だけで、鍵らしいものは見当たらない。
まあ確かにこいつは旅館に来ようとしていただけだから、所持品が携帯だけでも不思議ではない。
……合い鍵、作っとくんだったな。いや、相手の実家の合い鍵を持っていたらそれはそれで怖いかもしれないが。

おそらく佐助自身、家に入れないということまで頭が回っていなかったのだろう。
さてどうするかと小十郎が思案していると、暗くてそれまで気づかなかったが佐助の雄が反応しているのが視界に入った。


「……、」


よくよく見てみれば、腕や脚に擦りむいたような傷痕が目立つ。
アスファルトの上で好き放題されていたときに出来たことは明らかで、鎮めたはずの怒りが再び腹の底に流れ込んでくる。

薬はまだ抜けていない。
そんな状態でも眠ることができるのは、それを上回るほど疲労しているから。


……判っている。
そのくらい判っている。
それでも欲のまま動こうとしている俺も、あの野良男たちと所詮変わらないのかもしれない。


自身も後部座席に乗り込むと、小十郎はシートを思い切り後ろに倒して場所を確保し佐助の足元へと移動した。
何も身に着けず無防備に眠る姿は堪らなく愛おしい。
…その愛しい相手が、複数の男に強姦された、なんて。
許せるわけがないだろう。


「んっ…」


既に屹立した雄に手を添えてみると、ぴくんと下肢を揺らして甘い声が零れた。
触れた竿が濡れていることに気付き、無意識のうちに舌打ちしてしまう。
もしも周りが明るければ、この細い体のそこかしこが朱に染まっていることだろう。


「あ、こ…じゅろ、さんっ…」

「…目ェ覚めたか」


ひくひくと内股や腹筋を痙攣させつつ、佐助が焦燥に満ちた声を上げる。
小十郎は低くそう呟くと、痛々しくそり返った雄を強く扱いた。


「だ、めっ…、そんな…」

「…簡単にお前を他人に触らせるなんて、俺も甘かった」

「や、ぁ…はっう、…ぁあ!」

「こんなに緩くなるまでいじられたのか」


後腔に指を入れてみてもいつものキツさはどこにもない。
それどころか掻き回せば掻き回すほど、奥からどろりとしたものが流れ出てくる。
小十郎は苛立ちを隠すこともなくぐっと指を入れると中を広げ、白濁を体の外へと促した。


「…ちっ」

「ん…ぅ、小十郎さん…、」

「なんだ」


溢れ出た白濁が臀部を伝う様も見たくなくて、羽織で乱暴に拭いながら佐助の呼びかけに応える。
どうしても苛つきを隠せないままの小十郎の二の腕のシャツを、力なく震える指先が捉えた。


「挿れて…?」


涙で潤んだ瞳に見つめられて、縋られるように袖を掴まれて。
そんな中こんな懇願されたら、男なら誰だって抑えられなくなる。


「…今日の俺は気が荒いぞ」

「ん…」


額に玉の汗を浮かべ、見ているだけで苦しそうなことが判る中見せたくれた 相手の柔らかい微笑がとても綺麗で。
はやる心を抑えて、今の自分に出来る一番優しいキスでその口元を覆った。


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あきゅろす。
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