現世乱武小説
聖夜までの男事情・参
俺は島左近。
少しばかりの威圧感が拭えない容姿を持った設計士である。
昔はいろいろあったが今ではすっかりカタギに収まり、前の職のよしみで片倉さんには良くしてもらっている。
少々世話焼きという性格と年齢故、周りに頼りにされることの多いマイライフ。骨は折れるがそういうのも嫌いじゃない。
そんな俺に、比類なき災厄が迫りつつあった。
良くしてもらっている、と先程述べたはずの片倉さんが、鬼の形相で俺のマンションに現れたのだ。
しかも現に鬼(庭)を一匹引き連れて。…笑えない。
これは人生最大のピンチだ。
なんといってもものすごく心当たりがあるのだから。
小十郎「よぉ、島…」
左近「ど、どうも……鬼庭さんまで一緒にどうしました」
小十郎「島…お前シャーボのこと、俺になんつった?」
左近「えー……と…」
小十郎「ポケモンにはシャーボってのはいねぇそうだ…」
左近「そ、そうでしたか」
小十郎「…でな、本物のシャーボっつーのは……鬼庭、あれ出せ」
綱元「構わねぇけど…壊すなよな」
小十郎「安心しろ。俺ァ生まれてこの方モノを壊したことなんて一度もねぇ」
綱元「……」
小十郎「まあ見てくれ、島。…こいつがシャーボだそうだ」
左近「……へ、へぇー…」
小十郎「ポケットには入るが、モンスターじゃねえ」
左近「…?」
小十郎「要するに、ポケモンじゃねえってこった」
左近「あ、ああ…そういう意味…」
小十郎「ポケペンだ」
左近「……」
俗にペンと呼ばれるものでポケットに収まらないものを逆に見たことがないが、そんな横槍を入れられるわけもなく。
小十郎「俺を騙すなんざ世界広しといえどまぁテメェくらいだろう。その度胸に免じて選択肢を与えてやる」
左近「…アリガトウゴザイマス」
小十郎「ひとつ、素直に首を差し出す。ひとつ、チワワのエサになる。ひとつ、もみあげを爆発させる。ひとつ、慰謝料で償う。どれらか選べ」
左近「他はともかく……慰謝料とはまた、らしくありませんな」
綱元「いやな、実はこいつ、シャーボがポケモンじゃないって知ったショックで成実さんのDS握り潰しちまったんだよ。新しいの買う金に当てるんだと」
左近「いやいや、DSって握り潰せるものでしたっけ!!」
綱元「相当衝撃的だったんだろうな」
左近「…単なる怒りに任せた破壊行為ともとれますが」
小十郎「で、どうする? 俺があんま気ィ長くねぇこと、お前なら知ってんだろうが」
左近「あー、…まだ死にたくないんで金払うやつにしますよ。そもそももみあげを爆発するってワケわかりませんって。
で、新品のDSを買えばよろしいんですか?」
小十郎「寝言いってんじゃねぇ。ソフトもに決まってんじゃねぇか」
左近「……鬼庭さん、この人ソフトまで壊したんですか?」
綱元「おう。メモリースティックは無事っぽかったが…バッテリーもアウトだったなーありゃあ」
左近「バッテリーにまで指貫通したんですか!」
綱元「おうよ!リアルに火花散ったぜっ」
左近「喜ばないでくださいっ!……はぁ、自分で蒔いた種とはいえ、代償がとんでもないことになったな」
小十郎「何を今更……お前はそういう星の下に生またんだ。運命には素直に従え」
左近「相手があんたじゃなけりゃもっと可愛く収束しましたよ…」
綱元「はははっ!確かにこいつに可愛さは求めらんねーわなっ」
左近「…鬼庭さんも笑える立場じゃないと思いますが」
綱元「ばっか、俺はおめーらみてぇに顔に傷なんかこさえてねぇんだよ!さーて…おい片倉、もう行こうぜ。買いに行くんだろ、シャーボ」
左近「ああ、これから行くんですか。んじゃあ俺も同行しますかね」
小十郎「あ?要らねぇよ、厄のもとなんざ」
左近「…人を貧乏神みたいに言わないでもらえます?仕事でよく使うんですよ。機能性については目は肥えてるつもりです」
小十郎「なんだ……鬼庭だけじゃなくテメェもか、島」
左近「はい?何がです?」
小十郎「ったく…仲間に入れてほしいならそう言えって何度言わせんだテメェ等は」
綱元「……イラッときたぞ、今」
左近「……片倉さん、性格悪くなりました?」
小十郎「お前ほどじゃねぇさ」
とりあえず。
誰も血を見ることなく事態は収まった。
金で解決するのが大人のやり方、というのもここでは結果論だが、かくして佐助のクリスマスプレゼントは無事に選ばれたのだった。
このあと左近が三成へのプレゼントを何にするのかという話題で大いに盛り上がるが、それはまた別の話。
そして佐助から小十郎へのプレゼントが腹巻きと靴下であったことも、ここでは語るまい。
クリスマスを迎えるまでのこの時期を、こうして今年も男たちは乗り越えていくのだった。
あとがき→
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