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現世乱武小説
 聖夜までの男事情・弐


オレは伊達成実。
女顔と言われながらも実は柔道や空手を極めたやり手だ。そんなギャップが女の子のハートをキャッチしているんじゃないかとこっそり期待していたりする。

だがそんなオレにも勝てない強敵がいる。
それがこの、極悪面の傷モノ支配人、片倉小十郎である。
…まさかそんな人物が、ポケモンをやらせてくれと脅迫ばりの懇願をしてくる日がこようとは夢にも思わなかった。


そしてその支配人はあろうことか職場でポケモンをプレイ中だ。
普段の彼ならまず有り得ない。どうやらものすごく急務らしく、声をかけることも憚れるような気迫すら醸している。
が、ここで空気を読まずに突き進むのがオレのセールスポイント。

椅子のキャスターを滑らせて小十郎の隣に寄せると、成実はゲーム機の画面を覗き込んだ。




成実「ねぇねぇかたくー、急にどうしちゃったの、ゲームなんてやってさ」

小十郎「……」

成実「オレで力になれることとかある?ポケモンなら大体制覇したけど」

小十郎「…成実殿、ひとつ伺いたいことが」

成実「うん、なになに?」

小十郎「シャーボとやらはどのあたりで出るのですか」

成実「アーボ?」

小十郎「いえ、シャーボ、です」

成実「…シャーボ?……え、そんなのいるの?」

小十郎「やはりご存知ありませんか…。なんでも、影の伝説のポケモンだそうで」

成実「まじっ?うーわ、なんかすごい悔しい!オレも捕まえたいんだけど!
…あれ、つなもっちゃん!」

小十郎「おう、鬼庭」

綱元「…お、成実さん。……と、ついでに片倉」

小十郎「ついでとはなんだ」

綱元「うるせぇ。仕事しねーで何してんだテメェ」

小十郎「なんだ、仲間に入りてーならそう言え。ったく素直じゃねぇな」

綱元「つーかほんとに何してんだ?……ゲーム?………な、ゲームっ?なんだ片倉っ、お前熱でもあんのか!死ぬのか!」

小十郎「…面倒くせぇ奴だなお前」

成実「ねぇつなもっちゃん、シャーボ持ってる子知らない?オレたち探してるんだけどさ」

綱元「え、持ってますよ。俺」

成実「え」
小十郎「ぁあ?」

綱元「シャーボでいいんすよね。ちょい待っててください」

小十郎「……あいつポケモンやってたのか」

成実「しかもオレより進めてるんだ……うわ、ショック…」

綱元「お待たせしました」

小十郎「…おい、なんでボールペン持ってきてんだ。ポケモンだろ」

綱元「あ?ポケモン?……いや、シャーボっつったらコレだろうが」

小十郎「……? …なんなんだコレは」

綱元「だからシャーボだよ。シャーペンとボールペン両方使えるやつ。知らねえ?」

小十郎「………シャーボ」

成実「ねぇかたくー……今パソコンで調べてみたけど…シャーボなんてポケモンいないみたいよ」

小十郎「そんなハズは……ポケモンだと聞きましたが」

綱元「なあ、それ誰に聞いた?」

小十郎「あ?島だが……………あ。」

綱元「……」

小十郎「……」

成実「…騙された……的な?」

小十郎「……………ミシ、…バキャッ」

成実「うわわオレのDS!!!」

小十郎「……ガキャッ、ジジッ…」

成実「ぎゃぁぁぁ!!かたくー待った待った!!!」

綱元「目が据わってんぞ…」

小十郎「…鬼庭、ついて来い」

綱元「俺っ!なんで俺!!」

小十郎「うるせぇ…縛るぞ」

綱元「めちゃくちゃだなおい…」

成実「オレの……DS…」




筐体がひしゃげてケーブルも剥き出しになったゲーム機を成実の手に押し付け、怒りに満ちた小十郎は綱元を伴って事務所をあとにした。

向かうところはただひとつ。
恋人煩悩な旧友のもとである。


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あきゅろす。
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