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現世乱武小説
call(小十佐)


素肌をまさぐる手、耳元に吹きかかる息、そして体の異常な火照り。

それらのあまりの気持ち悪さに、佐助の意識は覚醒した。
最初は何がなんだか判らなかったが、次第に路地のような閉塞した細い道の上で己が尻だけを突き上げた体勢でいることを理解する。

焦燥がこちらにも伝わってくるほど性急にシャツの中に突っ込んだ手を彷徨わせ、尻には固く熱いばかりの肉棒が沈められていた。
頭の中は驚くほど冷静だったが、それ故この状況の異常さに吐き気がする。


そして何より、この疼くような熱はなんだろう。


その熱を自覚しはじめたとき、肉棒がぐっと奥に押し込められた。
途端に腰から駆け抜けるあり得ないほどの快感に思わず声が出る。


「ッああ、ん!」


びくんと背を戦慄かせると、卑下た笑い声が耳に届いた。


「おい、起きたみたいだぜ」

「へぇ、結構効くんだなーあれ」

「つーか…俺もうやば…」


三番目の男が呼吸を乱してそう言って腰を激しく扱いはじめると、燃えるような悦楽が自身の中心へと流れ込んでいく。


「ッ!や、ぁ…っ」


自分自身信じられなかったが、単純な抽挿だけで雄からは白濁が溢れた。
まるで詮がなくなってしまったように、がつがつと衝撃がくるたびにぴゅっと放たれる光景が気持ち悪くて、思わず目を閉じる。


なんだこれ。
俺様って男だったよね?
夜道が危ないのって女の子じゃなかったっけ。

……なんで俺、襲われてんの。


抵抗しようとしてみても力は入らず、ねじ伏せられる感覚が憎らしくて堪らない。


小十郎さんとは全然違う。
快感なんて拾いたくないのに、普段なら痛みにすら思うことにも甘く感じてしまう。


不意にかしゃん、という軽い音が聞こえて朦朧としつつも視線を巡らせると、ずり下げられたズボンのポケットから携帯が滑り落ちて地面に転がっていた。
肩で息をしながら周りの男たちの様子を窺うが、どうやらこちらの体にばかりで特に気にしている風もない。


……これしか、ないかな。


そっと不自然にならないよう男たちの死角から携帯を引き寄せ、画面も見ないまま押しなれた番号を呼び出してコールする。


どんな反応をされるだろう。
あっさり体を許したことに軽蔑されるかもしれない。
それでも、今この状況を救ってくれるのはきっとこの人だけだから。

僅かな望みをかけて電話をかけたが、当然相手が出たか出ていないかも判らない状況。
終話ボタンを押したりしないように携帯を伏せて、佐助は声を殺しつつひたすら押し寄せる快感に耐えた。
















「もしもし……佐助?」


旅館の事務所でパソコンと向き合っていた小十郎は、携帯電話を片手に眉根を寄せた。

はじめはパソコンをいじりつつ応対していた携帯を持ち直し、もう一度かけてきた恋人の名を呼んでみるが、どうもおかしい。


いったん耳から離してディスプレイに目を落とし通話中であることを確認するが、いくら呼びかけても返事はこない。


怪訝に思いながらも諦めて電話を切ろうとしたとき、荒い息遣いが微かに聞こえてボタンを押そうとしていた親指を止めた。


「佐助?おい、」


しかし反応が返ってくることはない。
代わりにきたのは獣のような盛った呼気と、品のない笑い声。
そしてその合間に聞き間違えるはずもない者の喘ぎ声を聞いた気がして、小十郎はぴくりと双眸を細めた。

苦しげで、しかし確かな妖艶さを滲ませた喘ぎ。
一度だけその声が高くなり、少しして知らない声が次代われよ、と言ったのを耳にした瞬間にはもう小十郎は席を立ち事務所を出ていた。


「っと……片倉さん?…どうしたんです」


ドアを開けるとちょうど入れ違いに左近が入ろうとしていたところで、軽く肩がぶつかったが小十郎の表情を見るなり驚いた顔で訊ねてきた。

滅多なことじゃ動揺しないこいつがこんなことを訊くほどひどい顔つきだったのだろうか。


「…島、真田の番号わかるか」


そう訪ねる自分の声はいつになく低くて。
ええ、と頷き左近はメモリから幸村の携帯番号を呼び出してこちらに渡したが、どことなく戸惑いがちだった。


「…ああ、真田か。片倉だ。……いや、ひとつ訊きたいことがあるんだが」


話しながら足早に歩き出すこちらの後ろを、携帯が心配なのかはたまた俺が心配なのか島がついてくる。


「こっちに来るっつったんだな?……そうか、霧隠の家ってのは?……、学校のすぐ隣……じゃあその間か…
いや、なんでもねぇ。じゃあな」


佐助が今どのあたりにいるのか大体の見当をつけつつ再び自身の携帯を耳に当てる。
繋ぎっぱなしの電話からは相変わらずの気配が続いていて。

携帯を強く握りしめ、小十郎は左近を伴って車に乗り込んだ。


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あきゅろす。
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