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現世乱武小説
俺のルール(小十佐)


抜きっこ…

それはつまりあれだよな、一人で慰めるところを二人でするという…


有り得ない、有り得ないと何度も呪詛のように呟く佐助を布団の上に座らせて、小十郎は細く長い溜め息をひとつ吐くと、居心地悪そうに唇を尖らせている政宗に向きなおった。


「政宗様、野暮な質問をお許しください」

「なんだよ…」

「今、真田はどちらに?」


時刻は遅いとはいえ、まだ深夜というほどではない。
少しそういったことをしたからと言っても眠るには些か早すぎると思ったのだ。

そんな中、政宗のみがここに来た。

まさか部屋に幸村一人を置いて報告にきたわけではないだろう。


小十郎の問いに、軽く放心状態だった佐助もはっと顔を上げた。


「そうだよ……もしかして真田の旦那、恥ずかしさのあまり帰っちゃったりっ?」


あながちなくもない佐助の言葉に、小十郎も政宗を見やる。
映画館に二人で行ったその帰りの擦れ違いが脳裏をよぎったが、政宗はふるふると頭を振って俯き加減にぼそりと言った。


「幸村なら……シャワー浴びてる」

「……」

「……」


それは……要するに…


「政宗様、再度の無礼お許しを。…つまり真田は……続きを承諾したということでしょうか」


言葉を選びつつ慎重に訊ねると、政宗は鼻の横を指先で掻きながら僅かに頷いた。
直後、佐助が飛びかからんばかりの勢いで政宗の手を握った。


「伊達の旦那っ…も、もう知ってるかもしれないけど改めて言うよ」

「お、おう。なんだ?」

「真田の旦那は色事がすっごい苦手っていうか、睦言とか甘い雰囲気も慣れてないから……無意識に拒んだり嫌がったりするかもしれない。でもそれは旦那の本心じゃないから…本気にしないでやって。
ほんとは旦那だって伊達の旦那に触れられたいって思ってる」


佐助の表情は真剣そのもの。
不器用な幸村の言動で政宗が傷付かないように。政宗を傷付けたと思って幸村が苦しい思いをしたりしないように。

必死に立ち回ろうとする佐助の頭に、俺はぽんと手を乗せた。


「安心しろ佐助。…政宗様はもうすべてご存知だ」

「……それ、どういう…」


目を瞬かせながらこちらを見上げてくる佐助に小さく笑いかけると、政宗も苦笑した。


「ああ。幸村はちゃんと俺を好いてくれてる。無理はさせねぇけど遠慮はしないつもりだ」

「え…っと、言葉にされると複雑だけど……うん、そっか…ありがと」


大きく息を吐き出して再びへたり込む佐助の頭をよしよししつつ、壁に掛かった時計を視線で示して政宗に向かって口を開く。


「…そろそろ戻られたほうが」

「ん、そうだな…じきに上がるか。…ああー!小十郎に色々訊きてぇことあったのにっ!もういいや、じゃあ俺行くわっ」


このタイミングで俺に訊きたいことと言えば大方予想はつくが、政宗様は慌ただしく部屋から飛び出していってしまった。


足音も遠ざかると、急に嵐が去ったような静けさが降りた。
一枚壁を隔てて聞こえてくるシャワーの水音は相変わらずで、いい加減止めてくるかと佐助の横を通りすぎようとしたとき、不意に手首を掴まれた。


「……心配か?」

「…や、なんか……ほっとしちゃって…」


ぺたんと内膝を畳にくっつけるようにして座っている様からも佐助の脱力加減が窺えて 思わず笑いが込み上げてきてしまう。


「……なに笑ってんの」

「いや、別に?」

「………」


くいと下に引っ張られ、されるがままに膝を折ると腕が首に絡みついてきた。
腰にバスタオル一枚のみの今の格好は相手の服の衣擦れの感触が直に伝わってきて、一気にぐらっと理性が傾きだす。


「ねえ…俺様たちもしようよ」


首にまわされた腕に力が入ると、少し遅れて首筋に唇が押し当てられる。
唇は焦らすようにゆるゆると下降して鎖骨に辿りつくと、わざと音が鳴るようきつく吸い付いた。


「積極的じゃねぇか……政宗様の話に充てられたか?」


佐助の頬に手を添えて胸元から顔を離させ、角度をつけて薄く開いた唇を塞ぐと「んぅ、」という返事だかなんだか判らない音が返ってきた。その愛らしさに自然と頬が緩んでしまいそうになる。


「っん、…俺も、シャワー…」


キスの合間を縫って懸命に言葉を紡ごうとする様が堪らない。
顔を背けつつ舌足らずに訴える佐助の腕と後頭部を捉え、徐々に体重をかけて仰向けに押し倒していく。


「シャワーなんざ必要ねぇよ…」

「お、俺がやなんだよっ」

「そうか。じゃあ我慢だな」

「ええ!!ちょ…やっ、待っ」

「うるせぇ。お前が誘ったんだろ」

「だ、だって小十郎さんがエロいカッコしてるから!」

「ぁあ?俺のせいだってか?……なあ、聞き分けのねぇ奴には多少の乱暴も許されるよな?」


にやりと笑ってみせるとたちまち佐助の笑顔が引きつった。


「……そ、それは…どうでしょう…?」

「それが俺のルールだ」

「なんて横暴なっ……わ、わ、やめっ!」


断続的に床を叩くシャワーの水音に、佐助の抗議の声は呑まれていった。


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あきゅろす。
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