現世乱武小説
解放祝い(小十佐)
*視点変更*
「それではっ!旦那たちの手応えあるテストの終了を祝して…かんぱーいっ」
「かんぱーい!」
あちこちからがちゃがちゃとジョッキがかち合う音が響くと、皆一斉にビールを煽った。
「くあーっ!やっぱりうちのビールは最高だぜっ」
「政宗様…あまり一気に飲まれてはお体に障ります」
「堅っ苦しいこといってんじゃねぇよ片倉ァ。オーナーに構えねぇくらい俺が飲ますから覚悟しとけよー?」
「うーわ、出たよ!つなもっちゃんのかたくー独占宣言!じゃあオレは佐助さんと絡んでよーっと」
「ぎゃあ!成実さん重い重いっ、苦しいっ!!……ん、あれ?旦那?親ちゃん、どうしたの旦那っ」
「あー、なんかビールの予想外の味に目ェ回しちまったみてぇよ」
「義への指南が足りなかったか…!」
「み…未知でござ、る…」
「旦那ぁーっ」
すべてのテストを終え、政宗は解放祝いだとクラスメイトを集めた。
幸村が断る理由がないと目を輝かせたためお付きで佐助も参加しているが、ほかにも旅館の従業員である綱元と成実、共に勉強した元親と兼続の姿もある。
三成にも誘いを出したが、なんでも今日は忙しいのだとか。
…まぁ、おそらく島さんとのアレコレがってことなんだろうけど。
俺様だって小十郎さんとはご無沙汰なのに…
じゃなくて!
ちなみに元親は明日からこの旅館でアルバイトをするらしい。
いつの間にか流れていた話だと思っていたが、テストが終わったらという本人の希望があったから延びていたのだとか。
きっと元就あたりに勉強と仕事を並行させるなとか言われたのだろう。
「それにしてもすごいね、毛利の旦那パワー。あの親ちゃんが三年生だよ?」
「おう、俺が一番ビックリしてんだけどな」
「それが愛の力だ!」
「愛ィっ?あ、あいつから愛を感じたことなんてあったか…?」
苦々しく目元を歪める元親に、佐助の背にもたれ掛かっていた成実が人差し指を突き出した。
「ちっちっち、甘いなぁみんな。かたくーを見てみなって。あんな無愛想なのに佐助さんへの愛は海底より深いじゃない」
「ちょ、成実さん大袈裟だから!」
海底より深かったら偉大すぎる。
しかし成実の言葉がなんとなく気になって、楽しげに笑う皆から視線を外し、ちらりと小十郎を見やった。
ビールはすでに飲み飽きたのか、綱元と日本酒を飲みながらぼそぼそと何やら話し込んでいる。
伏し目がちにお猪口を眺める目つきには色気が滲んでいて、きゅっと胸が締め付けられた。
「…てか成実さん、あの二人って結構仲いいんだね」
「うん?」
盛り上がる会話の中からついと成実の袖を引いて小声で言うと、ビールを勇ましくぐびぐびと流し込みながら目線だけを小十郎と綱元のほうに向ける。
確か以前小十郎に聞いたことだが、この人は政宗の一つ下。
17、8歳の女顔の男がこんなにビール好きというのは少々衝撃的だ。
「ああ、同期だからかな。普段は顔あわせりゃいがみ合ってるけど、根は似た者どうしなんだよね」
「じゃあ仲悪く見えるのって…同族嫌悪みたいな?」
「そうそう!結局は話合っちゃうけどそれがむかつくんだってさ。可愛いよねー」
可愛いかはとりあえず置いといて。
似た者どうしか…
確かに鬼庭さんといるときの小十郎さんは俺が知らない表情をしてるかもしれない。
それってやっぱり、自分とどこか通じてる相手といるっていう安心感みたいなものなのかな。
……それはちょっと、面白くないかも。
「佐助さん佐助さん、」
「ん?」
にやりと口角を上げて成実が身を乗り出し、こちらの耳に手を当てて口を寄せてくる。
どことなく企んでいるような怪しい笑みではあったが、とりあえず聞き返すと控えめな声が吹き込まれた。
「ヤキモチ妬いてる?」
「んなっ…!!」
ヤヤヤヤキモチなんて妬いてませんけどっ!
かっと頬が熱くなるのが判る。
実際面白くないとは思ったけど、それは別にヤキモチなんて大したもんじゃなくてっ…
「まあまあ、なんならオレがつなもっちゃん引き付けるからさ、その隙にかたくー横取りしちゃいなよ」
「よ、横取り?」
「うん。後ろからかたくーに抱きついて、首筋舐めながらイチモツをこう、ぎゅっと握っ
「んなことするかあぁぁっ!!!!」
「おわあっ!?」
とんでもないことを言ってくる相手の腕をがっしと掴み、問答無用で背負い投げを仕掛けた。
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