現世乱武小説
アッシー(左三)
「な、なんだか某、すごく手応えを感じたでござる…」
「俺もそんな気ィする…」
「私もなかなかだったな。三成はどうだった?」
「まあまあだな。こんなものだろう」
「俺も結構出来た気がするぜ。今日の教科が一番山だと思ってたんだけどな」
「我がついてやったのだ、出来て当然よ」
午後のテストも無事に終え、学校を出ながらいつものメンバーで本日の出来具合を報告しあう。
政宗と幸村は普段どれほど出来ていなかったのかは知らないが、とにかくひどく驚いていた。
「綱元殿が仰ったところ、誠に出ましたな!」
「だなっ。小十郎や佐助なんかより全然役に立つぜ!」
今まで世話になっていたであろう人たちをばっさりと切って捨てるような発言をして、政宗と幸村は満足そうに笑いあっている。
その前を歩いていた兼続が ん、と何やら声を上げた。
「確かあの車は……三成、あれはお前だろう」
兼続が指差すほうを見遣ると、その先にはよく見知ったグレーのセンチュリーが停まっている。
それを認めたと同時に、三成の両サイドを政宗と幸村が固めた。
「左近殿の車でござる!」
「へぇー、完全にアッシー君だな」
「お、俺が頼んでいるわけではないぞっ」
「む…?もう一台入って来たぞ」
そのセンチュリーに横付けするようにすっと入ってきたのは、漆黒のベントレー。
"竜の住み処"の従業員用駐車場でよく見かけるあの外車の持ち主を三成も知っていた。
「…政宗、あ奴は確実にアッシー君だな」
「Ah...ま、自主的には来てくんねぇけど」
「片倉殿…本当に来ていただけるとは!やはり佐助を用いた効果は絶大でござるっ」
どうやら佐助をエサに小十郎をおびき寄せたらしい。幸村は流石は佐助だ!と喜んでいるが、やっていることはなかなかえげつない。
「ならば今日はここで解散だな」
兼続がそう言うと、元就はすっと目を細めて元親に視線を投げる。
「明日は何時からだ、長宗我部」
「あっ?えーと……明日はー…」
「明日は一時限目からですぞ、元就殿!」
「そ、そうっ!朝一から!判ったかー毛利っ」
「…ふん、真田に感謝しろ」
すかさず親切心を披露してみせた幸村の肩をばしばし叩いて笑う元親から、元就はぷいと顔を背けた。
そんなやり取りを眺めていた政宗が三成に肩を竦めて失笑し、行こうぜとそれぞれのアッシー君が待つ車の方を顎でしゃくる。
幸村はあとでついてくるだろう。
三成は軽く頷くと、政宗と共に先に歩き出した。
左近と小十郎は互いに車から降りて何やら話し込んでいた。
どうやら小十郎のベントレーにエサの佐助は乗っていないようだ。人質にでもとられているのだろうか。
「小十郎ー、帰ろうぜ」
「…っと、政宗様。どうぞ、お乗りください。…真田はどちらに?」
「すぐ来る。気にしなくていい」
後部座席のドアを恭しく開けて政宗を中に促す小十郎。
執事さながらの堂に入った動きに見とれていると、左近が悪戯っぽく笑って名を呼んだ。
「左近にもああいうのをお求めですか?」
ああいうの、とは無論小十郎のような仕える者としての所作のことだろう。
…左近がするのは似合うかもしれないが…
ドアを開けてもらったり靴を履かせてもらったり、…め、飯を食わせてもらったりするのだろう?果ては風呂に入れてもらったり、か…?
……それはちょっと、俺が無理だ。
「いや、いい。お前はそのままで……というか俺がそのままでいい」
「え、は?…そ、うですか」
真面目に返したこちらに左近は逆に言葉を詰まらせたが、三成は構わずさっさと助手席に乗り込んだ。
左近が小十郎に何か言葉を投げているのが窓から見える。
そういえばあの二人が顔を合わせるのも久しぶりかもしれない。
邪魔をしてしまったかとも思ったが、左近は俺のものだからいいのだと結論づけ、早くしろとばかりにクラクションを鳴らしてやった。
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