現世乱武小説
欲しいのは(左三)
ぎり、と奥歯を噛み締めて顔を俯け、呪詛でも唱えるように呟いた。
「…あとで覚えてろ…」
それでも楽しみですねなどと返してくるこの男の頭の中は本当に何か涌いてしまっているのではなかろうか。
しかし既に放置して収まる熱の域を超えてしまっている。
左近の反応に構っている暇があるなら一秒でも早く欲を放って楽になりたい。
「くっ…」
後ろ暗い欲望と悔しさがない混ぜになったまま、そそり立つ自身を無造作に掴んだ。
「ん、ふっ…ぅ…」
ゆるゆると竿をしごくだけで、一度ぎりぎりまで昇り詰めた熱はとろりと透明の液を流す。
ぬるい刺激ではすぐに煩わしくなり、意識とは関係ないところで勝手に手の動きは激しさを増していった。
「あ…はぁッ、…くぅ んっ」
強く。早く。
もっともっとと本能が駆り立てるままに自身を乱暴に抜き上げる。
零れる獣じみた呼気も、左近の視線も、くちゅくちゅと泡立つ音すらもはや気にかける余裕すらない。
もう少し…
びくびくと痙攣する熱を容赦なく追い立てながらそんなことをぼうっと考えていると、不意に嚢丸を強く揉まれた。
「ゃ、あァッ!」
唐突の愛撫にぴゅっと自身から少量の精液が飛び出す。
無意識に瞑っていた目を開けると、赤く膨脹した自身を掴む己の手とその付け根にある張り詰めた双球を左近が片手に納めているという卑猥極まりない光景が飛び込んできた。
「こっちも可愛がってあげないと可哀相ですよ?」
そう言って左近が手の平で転がす度にきゅんきゅんと縮み上がる双球。
「ふッ、あ!ゃ…ひぅ、ん!…ぅ、」
竿を伝った先走りで濡れそぼった嚢丸を弄る左近の手までもがぬめりを帯びていく。
堪えていたが、己の恥態にぼろぼろと涙が溢れてきた。
まだ達していないというのに、後ろの口がひくひくと蠢いている。
いつの間にか内側を思いきり擦ってほしいなどと思っている自分に気がつき、ちりっと胸が熱くなった。
「っ、ふ…くぅ」
「三成さん…」
とめどなく溢れ出てくる涙を止める術が判らなくて、掠れた声で呼びかけてくる左近からひたすら顔を背ける。
すると、ふわりと優しい匂いが鼻孔を掠め 暖かくて柔らかいものが額に押し付けられた。
「っ――?」
「遊びすぎました。……すみません」
吐息混じりの謝罪。
額の感触がキスによるものだと理解したのと、予備動作なしで左近が鈴口に爪を立てたのはほぼ同時だった。
「んぃッ ああぁぁっ――」
弾けるように腰が浮き、一拍遅れて勢いよく白濁を放った。
不規則に跳ねる下半身など無視して射精は長く、呼吸すら忘れて左近のシャツの腕に縋るように指先を絡める。
射精が終わっても残滓まで搾り取ろうと先端に向かって動かされる指に鳥肌が立った。
「泣かせるつもりはなかったんですが…」
どことなく申し訳なさそうに控えめな声音で言うなり、左近がこちらの目尻に唇を寄せて涙を舐めとる。
それだけの気遣いがすごく嬉しくて、やっぱり俺はこの男を好いているのだと実感したとき。
「ッ、や……ま、待てっ」
左近の手が背中を滑り下り、腰骨も通り越して尻を揉むのもそこそこに蕾に指を伸ばしてきた。
慌てた理由など言うまでもない。
先の前への愛撫で後ろが刺激を欲していたのだ。つまり今、明らかに平素とは異なっているはず。
それを知られるのが嫌だった。
が、左近が俺の制止を聞くことなど有り得ず(ということに最近気付いてだいぶへこんだ)、結局関節がはっきりした長い指をそこに受け入れることになってしまった。
「や、や……ぁ、はぁっ」
ぬるりと容易に侵入り込んだ指が肉壁を這い摺りまわる。
その感覚に俺の体は快感しか拾わなかった。
「こっちまで濡れてるなんて…女みたいですね」
「ひっ……ぁ、うご…かさなっ…!」
耳をかじられながら言葉を吹き込まれ、ぞわぞわと体中を痺れが駆け回る。
納めた指が多少無理な動きをしても包み込んでしまう己の体は、認めたくないが確実にこの刺激を欲しがっていた。
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