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現世乱武小説
 危惧を払拭するは・肆


熱すぎるものに満たされ、えも言われぬ充足感を覚えふるりと全身を震わせると立っていられなくなり、へたり込みそうになったところを背後から抱え込まれる。

次いでゆっくりと小十郎の雄が出ていき、押さえがなくなったためかとろりと欲が流れ出てきた。

「ん、くっ……ぁ」

内壁を這いずるように逆流してくる飛沫に腰が震えてしまう。


そこでようやくローターのバイブが停止した。
途端、資料室は二つの不規則な呼吸音のみに満たされることになり、なんだか急に生々しくなったように感じる。


暫くして、佐助は思い出したように左手首に巻いていた腕時計を見遣った。
いつの間に鳴ったのか、とっくに次の授業ははじまっていて、それどころかじきに終わりそうだ。


「…授業、終わるんだけど」

「サボり魔の言う台詞じゃねえだろ」


恨めしげに言ってやるが、しれっと切り返されて反論出来ない。


「でも最後までやることなかったでしょ」


たとえば、ローターをとっとと回収して俺の熱を手早く鎮める、とか。
次の授業に間に合うようにするための手段はあったはずなのに。

どことなく咎めるような口調で言うと、小十郎は喉を鳴らして笑った。


「授業中に欲情して息荒くしたお前が潤んだ目でこっち見つめてて…そん中をオモチャに掻き回されてる。それに煽られねぇほど枯れちゃいねぇさ」

「あーのーねー…自分で提案したことくらい我慢できてよ。それとも最初っからこうするつもりだったとか?」

「いや、そういうのも楽しそうだと思っただけだ。授業中にリモコンいじらなかっただけマシだろうが」

「嘘つけっ、初っ端からいじったじゃん!予告なしでさっ。あれかなり焦ったんだからね!危うく……あー、ううん、なんでもな

「危うく声が出そうになったか?それとも達きそうになった、とかか?」

「〜っ、なんでもないっつってんでしょ!変態!」


まったくこの人は…

まったくこの人は!!


「で!どこの誰だか教えてくれるんでしょ?」

「…何を今更。宮城の片倉小十郎だ。知らなかったことに驚きだな」

「何その即席プロフィール。中途半端すぎて聞かなきゃよかったよ。しかもあんたのことじゃなくて、」

「判ってる判ってる。代理人のことだろ?冗談も通じねぇのか」

「……あのさ、真顔でボケるのやめてくれる?俺様拾ってあげられないみたい」


なんだろう。
軽く頭痛くなってきた。

ごそごそと身なりを整えながらぼそぼそ交わされるやり取り。
次第に疲労感を覚えはじめた佐助の耳に、とんでもない告白が飛び込んできた。


「ま、元からそんなもんいねぇがな」


……。



………は?



どんなに魅力的な相手なんだろうとか。

もしかしたら近いうちに捨てられたりするかもとか。

どうやって引き離してやろうかとか。


色々考えていた頭の髄に、まるで五寸釘でもぶっ込まれたかのような衝撃。


「いないって……何が」

「代理人の話だろ」

「いや……いやいやいやいや、いるって言ったじゃん…?」

「言ってねぇよ」

「言っ……ぃい!?」

「お前が先走って勘違いしただけだ」

「なっ、あ…!」


顎を外れんばかりにあんぐりと開け、言葉にならない言葉を口をぱくつかせて発する。

まったく起動しない思考回路で記憶を手繰り寄せてみるが、白紙ばかりでなんの場面も思い出せない。
しかし、小十郎の声で「いる」と言われたかと訊かれれば肯定は出来なかった。


「だ…だったらいないって言ってよ!わざわざ話合わせてどうすんのさっ」

「それはそうなんだが…」


歯切れの悪い物言いに、やっぱりちゃんとした理由があったのかと内心期待したのだが。


「…ノリで、つい」

「………………」

「……なんだよ。そんな顔するな」


ノリったってさ…
普段ノリノリじゃない人間が突発的にそういうことしたって誰もジョークかましてるなんて思わないってば…


なんだか酷く物憂げな気持ちになり、やるせなさを紛らわすため無言のまま肘鉄を小十郎の横っ面に見舞った。


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