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現世乱武小説
授業中はお静かに(左三)


やはり、と言うべきか。

なんというかもう、俺はひどく落ち込んでいた。


幸村に対してはそこそこ覚悟していたが、彼だけでなく元親や政宗にまであてられるとは思っていなかった。


黒板にチョークを叩き付けながら文字を書きなぐる秀吉を視界の表層で映し、そっと溜息をつく。
…もしかしたら担任が一番俺に近いのかもしれないとまで思えてくる有様。
もう…色々と末期かもしれない。


「なあ…お前大丈夫か?顔色悪すぎだけど」


倫理の授業中である現在、皆自由に席順を交換して座っている。
三成の斜め後ろに座っていた政宗が、机に身を乗り出してこそっと三成に耳打ちしてきた。

それを聞いていたらしい幸村は政宗の隣。つまり三成の後ろなのだが、こちらはこくこくと首を縦に振って同じことを思っていたとジェスチャーで伝えてくる。

授業中幸村は口をきかない約束になっていた。
こいつは声のボリュームを調整することが苦手らしく、いくら頑張っても教師どころかクラス中に聞こえる音量になってしまうからだった。

ちなみに俺の隣は兼続。
実は先程から時折横目を投げてくる。
夕べの様子と今朝の様子を合わせて考えて心配してくれているのだ。


「…いや、」

大丈夫だ、と返しても兼続はもちろん他のみんなも更に気を揉むだけだろう。
だったら…少しだけ。

「……ちょっと、疲れているだけだ」


そう、疲れていた。

慣れないことを考えて、必死に答を見つけようとしたからか、今はただ無心でいたいというのが本音だった。


「あー…じゃあさ、」

政宗は難しい顔をしたかと思うと、口角を上げてニヒルに笑んだ。

「帰りにマックおごってやるよ」

「某も行きたっ…むっ、んぐー!!」


案の定通常の音量で騒ぐ幸村の口を政宗がすかさず押さえて蓋をし、「心配しなくてもお前は兼続がおごってくれるってよ」などと適当なことを吹き込んだ。


「おお!真にござるかんぐぅっ!」

「な、わ…私がかっ?」

「……君たち。」

唐突に脳天に冷水のように冷ややかな声が降ってきた。
ぴしりと四人の背筋が固まる。

「…君たちは秀吉の授業をなんだと思っているんだい?」

「ちょ、調教師っ…」


そろりと振り返ると、酷薄な冷笑を浮かべた半兵衞がものさしを片手に立っていた。


「寝ている元親君のほうがまだ刑は軽いよ。…私語は厳禁だ」

「あ…いや、これは…」


誰ともなく口ごもるが、半兵衞は反対の手の平にものさしをぺちんと強く当て、どすの利いた低い声で一言、廊下に出ろと呟いた。


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あきゅろす。
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