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現世乱武小説
●出来るものなら(小十佐)


大きな手に全体を擦られ、確実に質量も息も上がっていく。


こんな、いつ誰が入ってくるかも知れない用具庫で…

いつもならお互い弁えてそんなことは言い出さない。
男が男に抱かれている光景など誰が考えたって気色悪い。まして抱かれている側の自尊心の行方など知れたことでない。


でも今は…

……今だけは。


先端から滲み出る透明の液を自身に馴染ませるように塗り広げられ、指先で裏筋をつぅとなぞられると膝が震えて腰が引けた。


「ぁ、ふっ…」

「…やけに濡れるのが早ぇな」


崩れそうになる身体を小十郎の腕に抱かれて支えられながら、吐息混じりの言葉に首を竦める。

じゅぷ、と粘性の液体に包まれた気泡を潰す音がいやに耳につく。
口を開いたらあらぬ声が出てしまいそうで、ドア一枚隔てた向こうに誰かがいるかもしれないという恐怖にひたすら奥歯を噛み締めた。

蹲ってしまいたいと暴れる気持ちを抑えてドアに爪を立て粟立つ快感を捩伏せるが、雄の先端を親指の腹で捏られ完全に小十郎に身体を預けた。


「はぁっ、ぅ……ちから…ぁ、はいん…なっ…」

「…可愛い奴だ」


小さく笑う、小十郎の微かな息遣いが好きだった。
直接それが耳元にかざると鳥肌が立つ。

歓喜。悦楽。

小十郎の一挙一動に劣情は一方的に揺さ振られて。

「ひっ ぁ…、んゃっ」

そろりと長い指が蕾を撫でた。
たっぷりと佐助の先走りを絡めたその指で。

無意識に下肢に力を入れるが、膝が使いものにならない今となっては単に尻を小十郎の手に押し付けるだけの行動で終わってしまう。

そんなに急かすな、と若干掠れた声が鼓膜を擽り、勝手に中心に甘い疼きに変換されて蓄積されていく。


ぬる、と内壁を舐めるように辿って中指が侵入してきた。

「っ、く……、」

異物が押し込まれる不快感と、意志に反して蠢くそれの圧迫感。

自然と詰まる息をどうにかしてやろうと小十郎が後から項を舐めた。
ひくん、とのけ反る白い首に徐々に迫るかのように、襟を鼻先でよけてほつれ髪を口に含みながら耳の下や首筋に舌を這わせてくる。

その間も着実に指は侵攻し、内壁を押し広げて自由に動ける範囲が増やされていくのが判る。

「ふっ ぅ…んっ、ひぁぅっ」

唐突に耳の中に湿った感覚が広がり、寒気がぞくぞくと皮膚を這う。
同時に小十郎の指をきゅうと締めた。

どくりと自身が脈打ち、変化を楽しむようにそれを包み込んでいた小十郎の手が再び律動を開始する。


「ぁあッ、っ!…ゃ、はぁっ」

「…佐助、声」

「だっ、て…!も、むりっ…ぃあァっ」


ぴちゃりと唾液が耳の中に流され、制限のきかない嬌声が零れてしまう。


もしカウンターに人がいたら、聞こえているかもしれない。
それだけでなく、風呂に行こうとしている人にも。

しかしそんな周りのことを気にする余裕など残っていない。

追い立てるように小十郎は熱を取り出し、その猛りの先端を僅か蕾に潜り込ませてきた。

「ぁ、あ…っ、」

逃げるに逃げられず、攻められる前と後に翻弄されて意識が混濁していく。

ずるり、ずるりと徐々に腰を進められ、息を詰めながらもひとつ息を吐いてぐっと身体を落とした。
急激に広げられる感覚に涙を滲ませつつも脱力して、驚く小十郎に再度凭れかかる。


「…おい、無理は…」

「へぃ…き、…ふっ、」

「ったく、どうなっても知らねぇぞ…」


佐助の雄を弄っていた手で上体を固定し独りごちると、小十郎は佐助の腰をゆるゆると揺すりだした。

確固とした熱が胎内を撫で摩り犯していく感覚。
自ら迎え入れた愛しい熱。


息苦しさも激痛も掻き分けてお互いを感じ合うその瞬間を、今、何故か狂おしいほどに求めていた。


がくがくと揺さ振られ、その猛々しい躍動にされるがままになりながら、


自分らしくないけど、出来るものならこのまま溶けてしまいたい――


と、痛烈に思った。


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