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現世乱武小説
信じる貴方は俺だけの(左三)


溜め込むとヘソから朝顔が生えてくる。


真に受けるわけがないだろうから、とりあえず適当なことを言ってみただけだったのだが…


意を決したようにこちらを見据え、細く息を吐いて気持ちを落ち着けている三成さん。
しかも先程、切羽詰まった表情で「言うから聞け」と言われてしまった。

一連の挙動からして明らかに…


「……あの、信じてくれるんですか?」

「え、や……信じるわけがないだろう!た、ただちょっと……話してやってもいいかなって…」


…いや、信じてますよね?

もじもじしながら尻すぼみになりつつ言い、とにかく!と自分で自分の言葉を遮る。

…まさか早く言ってしまわないと芽が出る、とか思ってるんじゃないだろうな。


「……あの、だな…最近の俺の……か、か…」

「か…?」


ぷるぷると赤くなりながら必死に何かを伝えようとぱくぱくしている。

三成さんが赤くなることといえば…そういう方面の話なのだろうが、滅多に自らそんな話題を振ることがないだけに勘繰らずに本人の口から言わせてみたい。

それからあーとかうーとか苦い顔で言っていたが、ようやく目を懸命に逸らしながら言葉らしい言葉を口にした。


「うぅ……かん、ど…が、その……変わりない…か……と」

「…え、あの…なんですか?感度?」


消え入りそうな声でぼそぼそと言われた内容がよく聞き取れず、思わず訊き返すと湯が顔面にぶっかけられた。


「ぶっ、は!何すっ…」

「う、煩い!聞こえているなら普通に流せっ」


聞こえて…?
って…


「…三成さん、今感度って言ったんですか?」

「ええい黙れ黙れ黙れっ!俺のヘソから朝顔を咲かせたくなかったら黙って聞け!」


喚き立てて拳を振り回しているが、どうやら朝顔話を真面目に信じてくれたらしい。

黙って聞けとまで言われてしまってはさすがの左近も慎むしかない。
…しかしまぁ、「最近の俺の感度…」まで出てしまってはその先もなんとなく読めてしまう。

黙れと言っておきつつ次の単語を発せずにいる三成に、左近はくすりと笑って頷いた。


「ええ、よくなってると思いますよ」

「なっ、あ……おまっ!」

「というか、左近がどんどん進化させてます」


以前はそれほど敏感でもなかった耳の裏は今では微弱な吐息にも反応するし、脇やら首やら擽ったがるヵ所も今となっては快感の波の震源地。

どれもこれも、殴られても蹴られてもめげずに三成を可愛がった成果だ。


努力は報われる。
近頃では情事の度に思う教訓のひとつである。


「なんなら試してみます?」

「……遠慮する」

「なに水臭いこと言ってんです。ほら、こことか三成さん大好きでしょう?」

「やっ…ん!」


湯の中に手を忍ばせて三成の内股を擽るような手つきで触れると、飛沫を散らしながら細い体躯がびくりと竦んで左近の手から引こうとする。
予想通りの反応に口許を緩めつつ反対の手で腰を引き寄せてやるものの、尚も内股を摩り続ける手を逃れようと必死に暴れる。


「…ね?前は顔顰めてただけだったんですよ。それが今となっちゃ…」


こんなにも悦んで。


「やめっ、ぁ…」


内股を彷徨っていた手で三成の雄を掴む。
さして目立つ反応をしていたわけでもないそこを煽り、肩を悸かせる三成に顔を寄せ、女殺しと謳われた低い声で耳に囁いた。


「何も知らない顔して……えっちな三成さん」

「!」


手の中の雄がどくりと脈を打つのが伝わってくる。
言葉だけで快感を拾える体質は、最早天性と称賛してやりたいくらいだ。

目尻に僅か涙を溜めて至近距離で睨み付けてくる三成に優しい笑顔を向け、腰を押さえていた手で髪をゆっくりと撫でる。


「また出しましょっか」

「…左近、」

「はい?」

「……ひとつ訊く」

「なんでしょう」

「…これで……朝顔の心配はないのだな?」


まさかそこに立ち返るとは思っておらず、笑顔が凍る。


本当に…本っ当に信じたのか、朝顔の件…

素直に自分の話を信じてくれたことは非常に嬉しい。片倉さんあたりに報告したいくらいの嬉しさだ。
だが反面、騙しているという事実に後ろめたさを覚えていた。
無垢な三成を、隠しごとを吐かせるためとはいえ誑かしたということに変わりはないわけで。


それでも、まぁ…


「ええ、大丈夫でしょうな」


面白いから別にいいか、などと思ったり。


「これからも何かもやもやしていたら左近にぶちまけてくださいね、芽を出さないためにも」

「わ、判った。左近もだぞ!なんでも聞いてやるから…」


真剣きって言ってやれば、迷走しながらもこくこくと首を縦に振ってくる。

懸命な眼差しに吸い寄せられるように、少し強引に唇を奪った。


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あきゅろす。
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