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現世乱武小説
ツンデレ卒業?(左三)


欲を殺してただ抱き締めるだけにとどめる自分を称賛してやりたい。

三成は腕の中で勝手に身を捻り、座りのいい体勢を探してもそもそと動き出した。
結局テレビは視界に収めていたいらしく、俺を背もたれにして寄り掛かるような状態で大人しくなった。


顎の下に赤みがかった茶の髪がある。
三成の髪はまるで本人の特質を顕著に表したかのように猫っ毛だ。一本一本が細く柔らかい。
その髪の感触が愛おしくてつい触りたくなってしまうのだが…、


「…ん、左近、」


制止させる意を含んだ物言いと、軽く身じろぐ痩身。

そう。
恥ずかしいのか擽ったいのか、三成は髪に触れると僅かな抵抗を見せる。
それは僅かに睫毛が震える程度だったり微かに身体が強張る程度だったりと、本人が無意識下に行っているようなものではあった。


先程の声を完全に無視して髪に鼻の頭を潜らせる。
唇で軽く髪を撫で、慈しむように殊更優しく繰り返す。

いたたまれなくなってきたのか、俺から逃げるように寄り掛かっていた上体を起こそうとするが、そうはさせない。


「左近っ」

「なんです?」

しれっと返事をしてやると、案の定不機嫌な顔が少しだけ振り向けられる。

「三成さんの抱き心地がいいもので、つい」


いつもならここで、知ったことか!とか俺には関係ない!とか言って顔を背けるのだが、今回の反応は少し……否、かなり違った。


「ふん……当然だ。俺は左近サイズなのだからな」

「…左近サイズ、ですか?」


どことなく偉ぶりながら言ってのけた、少々理解しがたいサイズ名。
だが、わけがわからなくてもなんでもいい。
今のは可愛すぎる。


「…じゃあ左近以外の方にこんなことさせちゃダメですよ?」

「……そんな心配しなくても、俺に近付く奴なんてそうはいない」


本人は気付いているだろうか。
髪と同じ色をした亜麻の瞳が切なげに揺らいだことに。

中途半端に横を向いていた顎をさらりと掬い、相手に少し覆い被さるように身体をずらして唇を重ねた。


「っん……、」


離せと肩を押されるが、抵抗は無駄なのだと判らせるために距離を詰める。
力強く肩や背を一緒くたに抱き締めてやると、きゅっと身を縮こめた。

悩ましげに寄せられた眉。
ふるふると小刻みに震える長い睫毛。
朱を刷いた頬。
口唇の隙間から零れ落ちる熱の篭った吐息。


それらすべてが今、自分を受け入れていると思うと堪らない。


「三成さん…」

「ぁっ…や、め…っ…」


文句を言いたらしめんとする唇をこじ開けて舌を差し入れ、徐々に徐々に口内を犯していく。

上顎をつつく度にぴくんと頭を動かす敏感さに嗜虐心が掻き立てられ、無意識にキスも深いものになっていく。


「ん、ん…ふっ、ぁ…」


必死に流されまいと抗う姿がいつものことながら可愛らしい。

震える手を取り指を絡めてやり、すぅと開かれた劣情に潤んだ双眸を確認して頭を離した。


「はぁっ……さこん?」

「…折角の旅館ですし、朝風呂なんてどうです?」


いきなり行為を中断したのを不思議に思ったらしい三成が、どことなく心許なさそうに首を傾げる。
押し倒して目茶苦茶に鳴かせてやりたいと暴れる欲を押し殺し、いつもの笑顔でそう言った。

途端、三成の顔が噴火する。


「なっ…ダ、ダメだっ!」

「何故。立派な温泉がタダで入り放題だというのに」

「……そ、れは…」

「…まさか三成さん、」


肩を抱いていた手をするすると降下させていく。
本当は判っていた。
もともと煽り立てるような濃厚な甘いキスを仕掛けたのは自分だ。
三成の身体が反応するように意図してやったのだから、今手に触れた熱はあって当然なのだ。

しかし、わざとまるで反応してしまった三成の雄に驚いたように振る舞ってやる。
嫌でも感じやすい身体になりつつあることを自覚させるために。

その効果はそこそこあったらしく、頬を紅潮させて三成は俯いてぎゅっと目を閉じた。


「三成さん、キスだけでこんな…」

「う、煩いばかっ!お前が…悪いのだ……お前がっ…」


くっと言葉を飲み込む様子には恥辱の色が濃い。
気高い猫を陥落させていく手応えに、思わず口角が上がった。


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あきゅろす。
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