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現世乱武小説
おやすみ(小十佐)


眠くなってきて意識も霞がかり、ぴったりと小十郎にくっついている部分から伝わる体温が心地いい。

相手の胸から頬を通して鼓動が聞こえる。
規則正しい、どこか安心できる速さで鳴り続ける心臓までが愛しいと思うのは少々病気だろうか。


「風呂、行けそうか?」

「ん……行く…」


重たい瞼を懸命に持ち上げるが、口から出た声は呂律がまわっているとは言い難い。

頭のてっぺんに苦笑するような呼気がかかった。

続けて背中に布団がかけられる感触。
今まで人肌に触れていたため、温められていない布団との温度差が気持ちよく感じる。


「寝れる…」

「もう半分がた寝てんじゃねえか…。ここで出していいか?」


何をと問う前に、優しい手つきで腰を撫でられた。
中に放った自分の精液のことを言っているのだろう。
確実に小十郎が処理してくれるので経験したことはないが、そのままにしておくと腹痛に見舞われるらしい。


普段なら終わったあとに担がれてでも大浴場に向かうところだが…

若干気後れしたが、やっぱり動きたくない。
気怠い返事と首肯を返すと、放られていた羽織りを引き寄せてこちらの下腹部へと詰め込んでくる。

ほんの少しだけ、それが原因の腹痛というのも体験してみたい気がするが、きっとそれは小十郎が許さないだろう。


すぼまりかけていた後腔に小十郎の指が一本差し入れられた。
少し掻き混ぜられれば再び甘い疼きが下肢に蓄積する。


「…広げるぞ」

「っ…、ぅ……んんっ、く…」


もう一本も難無く受け入れ、ぐっと指を開かれた。
これも何度目かの経験になるものの、肉壁を伝って逆流していくこの感覚には一向になれない。

固く目を瞑ってぞくりと足先から背中に這い回る寒気をやり過ごした。

掻き出されるあいだも小十郎の胸にしがみつき、乱れる呼吸を制そうとする。


「こんなもんだろ」


言いながら羽織りの裾で内股を拭われた。

身じろごうとしても腰は鈍い痛みを返すばかりで満足に出来ない。
こりゃあ明日は覚悟しないとなぁ…

朝飯までに帰れるだろうかと溜息をつくと、体重を支えていた小十郎の身体がふらりと傾いだ。


「っとと…」

「…ん、わりぃ」


胴にまわしていた腕を突いて、変な体勢になりつつ小十郎の身体を押しとどめる。


「…もしかしなくても、今寝てた?」

「……みたいだな」


ぱちぱちと瞬きを繰り返しながら、どこか呆けたように返してくる。

小十郎の身体が眠気を訴えるのは珍しい。
しかし、それはそれで休養を取るべきときだと判るのだ。
いわば危険信号。


ぐっと腕を立てて小十郎から身を起こし、少し横にずれて布団に直接転がった。


「汚れたのはあの羽織りだけだしさ、片付けは明日にしてもう寝ない?」


夕飯も摂っていないため、腹は減っていないのかと訊ねられれば返答しかねる。
しかし今は、たまにしか発信されない小十郎の危険信号をきちんと受け入れることが先決。

こちらの話を聞いているのかいないのか、こっくりこっくり船を漕ぎながら小十郎は呻き声のような返事を返した。


布団は一組しか出していないけれど、もう一組押し入れから出してくる気力も体力もない。
多少狭くたって寝れりゃいいんだ。

小十郎の肩を軽く押してみると、なんの抵抗もなくぼふっと背中から敷布団に倒れた。

が、何せ一人で寝ることを前提としたサイズ。
頭だけ畳に落ちた。
どす、となんとも形容しがたい鈍い音に続いて、「ぅ…」という割と痛くなさそうな低い声。

…痛覚鈍ってんのかな。
今のはだいぶ痛いと思うけど…

つまりそれだけ睡魔に犯されているということ。


「小十郎さんの寝顔、見るの初めてだ」


自分も寝転んだまま小十郎を引っ張り、なんとか布団の上に納めて改めて顔を見遣る。

寝てるってのに眉間のシワはそのまんまなんだ…
あ、ちょっと口開けてる。明日よだれ垂らしてたりして。

勝手に考え勝手に想像してみたけれど、やっぱりよだれを垂らした小十郎なんて似合わない。
幸村に当て嵌まることは小十郎には適用されないらしい。


「…おやすみ、小十郎さん」


閉じられた瞼に触れるだけのキスを落とし、電気を消すのも面倒だったのでそのまま小十郎に擦り寄って目を閉じた。


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あきゅろす。
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