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現世乱武小説
しっくりこない(小十佐)


伊達の旦那は、もしかしたら俺たちに気をまわしてくれたのかもしれないな…


布団の上でうつ伏せの大の字にした小十郎の脇で膝をつき、鍛えられた二の腕を肩から肘へと揉み下げていく。

軽く目を閉じ、堪えるように眉を潜めて時折気持ちいいのか吐息をシーツの上に漏らしている。


「…はっ、なかなかの…腕じゃねえか」

「でしょ?マッサージ師に転職しよっかな」

「……調子のいいことだ……いっ!」


呆れたように言われたので、リンパ腺を思いきり押してやった。


「テメェ…」

「ん?なに?」


とぼけておいて最後に血流を促すように腕全体を刺激してよし、と息をついた。


「とりあえず一通り終わったけど……どっかまだやって欲しいところとかある?」


手を離すと小十郎がのそりと起き上がり、腕をまわしたり伸びをしたりと具合を確かめる。

180度回転した肩からは、数刻前に比べてだいぶ小さくペキッ、コキ…と小骨が鳴っただけで、小十郎と揃って「おぉ」と感嘆の声を上げた。


「かなり身体も軽い。転職ほどじゃないにしろ、センスあるんじゃねえか?」

「へっへぇ。小十郎さんのお墨付き〜」


自慢げに自らの腕を叩き笑顔を浮かべると、布団の上であぐら状態だった小十郎に腕を引き寄せられた。

膝立ちだったため、中途半端に体勢を崩してたたらを踏む。

ふわりと甘い匂いに包まれたと思ったら、しっかりと両の腕に抱きしめられていた。


「こ、小十郎さ…」

「やってもらったからにはヤってやんねぇと」


政宗に言われた捨て台詞のことを言っているのだろう。


後頭部に手を添えられ、ぐっと力を入れられる。
よろけないようにと手を伸ばすと、そこには小十郎の肩。
血行がよくなったためかいつもより熱を持っているような気がする。

そのまま引かれるままに小十郎に覆いかぶさるようにして唇を重ねた。


たいして体重をかけたつもりはなかったが、ぐぐっと小十郎が後ろに倒れる。
角度が浅くなるにつれてどうしても手に力が入ってしまい、最後は相手を押し倒すような体勢になってしまった。


「っは、……ち、忠実すぎるんじゃない?」

「それに超したことはねぇだろ?」


後頭部にあった手がどいて、代わりに羽織りと作業着を脱がしてくる。
脱がすといってもこちらは両手を突いてしまっているので適当にはだけさせるのみ。


「……たまにはさ、」

しどけなく肩や背中を空気にさらされながら片手を浮かせ、下に艶やかな黒髪をシーツに小さく広げる小十郎の鎖骨を指先でなぞった。
指を降下させて胸板をさ迷わせ、くいっとワイシャツに引っ掛ける。

「…小十郎さんも…脱いでよ」


小十郎は情事の際、身なりをあまり乱さない。
こちらの着衣は容赦なく剥ぐくせに、自分は滅多に肌を見せないのだ。

……まぁ、そこがいいといえば…いいんだけどさ。

極論はいつだって惚気だった。


こちらの言葉が意外だったのか、僅かに目を見開いてすぐに挑発的な微笑を見せる。


「…いいぜ、脱がせてみせな」


その言を受けると、作業しやすいように体勢を立て直し、小十郎の腹を跨ぐように膝を突いた。

しかしそれは小十郎にとっても作業しやすかったようで、襟を引っ張られて一気に肌が露出する。
上着は腕に袖がとおっているから落ちないというだけで、服としての機能を果たすどころかなまめかしさすら演出している。


謀られたような一連の流れに少しばかり憮然とし、先程着直したばかりのワイシャツのボタンを外しはじめた。

誰かの服を脱がせるなんて、幸村がまだ小さかった頃以来だから何年ぶりか。


「…震えてんのか?」


低く問われ、ボタンを外していた手を掴まれる。

昔散々やったはずのこの行為。
何故か手が思うように動かず、拙く指先のボタンを逃がしてしまう。

小十郎に掴まれると、情けないことに肩が揺れた。


その反応に小十郎の目が微かに細くなる。


「なに緊張なんてしてんだ」

「そ…いうわけじゃ…」


たどたどしく答えるが、仕方ないといった感じに小十郎が起き上がり、バランスを崩したこちらの身体を支えてふわりと布団に寝かされた。

唐突な抱っこに声さえ出ず、抵抗する暇なく逆転した立場に唖然とする。


「やっぱりこれじゃねえと落ち着かねぇか?」


"これ"とはまさに、小十郎に組み敷かれている今の状態。


「ぅ……ち、違うって!いいから早く脱いでよねっ」


そう言っておきながら、さっきに比べて明らかに安定した心に気付いていた。

……なんか俺様、ちょっと改良されてきてる…?

嬉しいやら悲しいやら、そんな複雑な心を押し込むように半ばやけになって小十郎の残りのボタンを外した。


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あきゅろす。
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