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現世乱武小説
政宗様ご乱心(小十佐)
*視点変更*





事務所に小十郎と戻り、適当な椅子に腰掛けた。

自分で言い出したゲームではあったが、少々張り切りすぎたかもしれない。
さすがに半日テンション高く出来るほど幸村じみていなかった。


「お前は気ィ揉んでばかりだな」


ぐっと背もたれに体重を預けるように伸びをしていると、自分のデスクにつきながら小十郎に言われた。

なんのために王様ゲームなんてものをはじめたのか。

理由も言わずに小十郎を巻き込んでしまったが、どうやら察しはついているらしい。


「要らぬお節介ってやつだったかもね。仲直りしてたみたいだし」

「そうでもねぇだろ。さっきのでほとぼりも冷めたんじゃねえか?」

「あはは、ありがとね」


気遣ってフォローしてくれる小十郎の優しさに心が暖まる。

キャスターを転がして起動させたパソコンが立ち上がるのを待つ小十郎の後ろにつけ、既にワイシャツに覆われている肩に手を添えた。

そのままぐっと指圧を加えてやれば、しこりのようになった筋肉の手応えを確と感じる。


「…万年肩凝り?」

「…うるせぇ」


結局三成にマッサージしてもらっただけで、そのあと王様になっても小十郎はマッサージの命令を誰にも下さなかった。

おそらくそれは、疲労した三成を見兼ねての遠慮。
全身の凝りが半端ではないことは小十郎自身が一番理解しているのだから。


「お前が凝る。やめておけ」

「土木の仕事舐めないでよ?角材とかしょっちゅう担いでんだからさ」

「……悪い」


殊勝に謝る小十郎にくすりと笑う。

つい無理しちゃう体質なんだよね…

周りに任せてもいいような雑用でも、自分が出来そうなら仕事の合間に片付ける。
ここで手伝いをするようになってから知ったことだが、この人にはそういう傾向がある。


「…それで一番疲れるのも自分なんだからなぁ」

「…?」


溜息混じりにぼやくと、内容が呑み込めていないようで小十郎が見返してくる。

……あ、なんか可愛い。

吊り上がった眉は捉えようによっては拗ねているようで。


「なんでもないよ。ほら、ちゃんと前向いて」

「……ああ」


うわわ、どうしよ、マジ可愛い…!
く、唇なんて尖らせて…

でもそんなこと言ったらきっとヘッドロックだ。


「ねぇ、仕事ってあとどのくらい?」


訊いていることはまともだが、今の顔はちょっとやばい。にやけににやけて取り返しのつかないことになっている。

何も知らない小十郎は、普段よりリラックスしているからか張りのない声で答えた。


「俺の分は終わってるからな。切り上げようと思えばいつでも大丈夫だ」


だから王様ゲームのときもすぐ来てくれたんだ…

納得するのと同時に佐助の中に案が浮かんだ。


「じゃあさ、さっき俺に貸してくれた部屋で全身マッサージしてあげるよ」

「ありがてぇが……いいのか?」

「いいのだ。そのうち身体壊すよ?」


三成に頼んだとき、最初は全身マッサージだったはず。
関節だけではなく腕や背中の筋肉だって凝っているのだろう。

少しくらい贅沢したってこの人の場合バチは当たらないと思う。


ぐりぐりと指の関節を折り曲げて肩に捩込みながら言ってやると、筋を刺激されたらしく一瞬息を詰まらせてから小十郎はふっと笑った。


「…そうだな。政宗様がお戻りになったら…頼む」

「だいぶ前にお戻りになったんだけどなぁー?」


事務所のドアのほうから不意に声が飛んできた。


「ま、政宗様!」

「伊達の旦那っ?いつの間に…」


慌てて小十郎の肩から手を離し、小十郎と二人、ぽかんと口を開けてドア枠に半身を預けて腕組みまでしている政宗を見つめる。


「あまぁぁぁい雰囲気出しちゃってよぉ…俺が帰ってきたことにも気付かないで全身マッサージだぁ?
俺だって幸村にやってもらいてぇじゃねえかっ!!」

「……」


ああ、そうか。
羨ましいんだ。

やるならとっととやってこい!ついでにヤっちまえ小十郎!!

政宗が喚き散らしたその言葉に、小十郎が律義に頭を下げた。


俺様もしかして……
やるだけじゃなくヤられる?

――たっぷり善がらせてやる。

夕方の小十郎の台詞が脳裏に蘇り、ひぃぃっと内心叫んで頭を抱えた。


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あきゅろす。
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