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現世乱武小説
マジ勝負(左三)


佐助と三成が抱き合っている頃、殺気すら醸した二人の男が立って向かい合っていた。

どちらかに主導権が移るまで。

きっとお互い譲らないだろうからという理由で付け加えられたルールだったが、そんなもの結局二人のやる気を掻き立てるだけのものでしかない。


小十郎も佐助の状態に気付いていないのか、喧嘩でもないのに何故か指の関節をべきぼきと鳴らして戦闘意欲十分のご様子。

最初元親の気勢がなかったのは単純に相手が男だからという理由だったらしく、思考を切り替えた今では男でも構わねぇ落とすなどと意気込んでいる。


元親だからとかではなく、小十郎を落とすなんて芸当、出来る奴がいるのかと左近は正直思っていた。

女は言わずもがな、左近自身直接小十郎と口付けを交わしたことはないが、男だって膝が立たなくなる。


「あんたの威厳も今日限りだな」

「威勢のいい餓鬼だ……来い」


煽る元親に挑発的な微笑を返す小十郎。

キスだというのに、互いが互いの胸倉を掴んで唇を合わせた。

そこからは恋慕の情なんてものは微塵も感じず(当然といえば当然なのだが)、ただ相手を落としてみせるという気概だけが伺える。


先に動いたのは元親だった。
相手の下唇を舐め上げ、即座に舌を捩込む。
舌を掬い、絡めながら引っ張り出したところで訝しそうに元親が眼前の小十郎を盗み見た。

先程から目を閉じたまままったく動じない。
勝負にならないと抗議の声を上げようとして唇を離しかけたとき。


「んんっ!」


唐突に小十郎が元親の後頭部を押さえ込んで唇を合わせなおした。

ゆっくりと細く目を開け、驚いて顔を引こうとする元親の左目を射抜くような目つきで捉える。

…毎度思うことだが、その視線がエロいんだよなぁ


「お!今小十郎のターンかっ?」

「うむ、これは人生経験がものを言うな!」


政宗と兼続は爛々と目を輝かせ、元親の上唇を甘噛みする小十郎の技術をまじまじと観察していた。

兼続さん…普通に見てるけど抵抗ないのか…?


基本ここにいる人達は何があっても動じない。
柔軟な思考といえば聞こえはいいが、一言でいえば常識はずれの連中である。


「っ……ん、ぐ!」


おー、堪えてる堪えてる。

小十郎の舌は元親の口内に進攻し、上顎や歯列を尖らせた舌先でつついていた。

苦しげに呻きながらも負けじと舌を引かずに真っ向から受ける元親。
その気概やよしと言わんばかりに小十郎は元親の舌を搦め捕った。

今までされたことのない愛撫に苦渋の表情になりながらも必死に食らいつく幼なじみの姿は、元就の目にはさぞ珍しく映っているのだろう。
楽しそうな顔はさながら新しい玩具を手に入れた幼子。


しばらくして、舌を吸われ、裏筋を舐め上げられ、目茶苦茶に翻弄されて元親が音を上げた。


小十郎の胸をど突いて身体を離し、ぜーはーぜーはーと荒々しい呼吸を肩でする。


「あ…あんたなんなんだよっ」


もう膝立たねえよと理不尽な罵声を浴びせ、元親はへなりとその場に膝を抱え込んで座り込んでしまった。
精根尽きましたと顔に書いてある。


「その歳でここまでついてこれりゃあ十分だ」


意地の悪い笑みを浮かべて言う小十郎に向かってびしっと指差し、次はこうはいかねえ!と断言していた。

ちょうど油断してたんだとか俺にはまだ潜在能力が隠されてるんだとか、色々と喚き散らす元親から視線を外すと、佐助と、いつの間に加わったのか幸村が三成にしがみついている光景が視界に入った。


「もう終わったみたいですよ」

「む、そうか。佐助、幸村」


三成に促されて顔を上げる二人。

一番に小十郎を見た佐助と、小十郎本人の目があった。


「…小十郎さ…」


小十郎が言いかけた佐助の頭をくしゃりと撫で、長身を屈めて座りながら相手の耳に囁く。


「…悪かった。今夜はたっぷり善がらせてやる」

「……っ!」


ぼふっと目を点にさせたまま髪色以上に赤くなる佐助の隣に小十郎が腰を下ろす。
そして佐助と三成越しに、こちらにも目を配り口の動きだけで「手間をかけさせた」と言ってきたので、少しだけ笑って顔の前で手をぱたぱたと振ってみせた。

手を抜くのは片倉さんらしくない。


と、そこで三成の不服そうな視線を感じた。


「……」

「……」


口には出さないが、目が訴えてくる。
考えあぐねて思い至った。

佐助たちを宥めていたこと――三成にとっては踏ん切りが必要だった行為でもあるそれを、褒めてほしかったようだ。


偉い偉いと頭を優しく叩くと、ひとつ頷いてもう用は済んだとばかりに円の中央に向き直る。

切り替えの早さに苦笑を漏らしつつ、要求してきたものの可愛さに思わずにやけた。


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あきゅろす。
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