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無双小説
●春のまにまに・壱


小春日和と呼ぶに相応しい穏やかな天気に恵まれ、ともすれば昼寝のひとつもしたくなるような昼下がり。
清正は緩みそうな気を引き締めて書簡に目を通していた。
開け放たれた障子から射し込む日差しがなんとも眠気を誘ってくる。
現に先ほどから同じ文面を繰り返し読み直して必死に頭に叩き込まないと考えるに至らない状況が続いていた。

…逆に少し寝たほうがいいかもな。

決して春の誘惑に負けたわけではない。効率を上げるためだ。
そう己に云い聞かせて書簡を丸めかけたとき。


「やっと休む気になりました?」

「ッ!!」


心臓が口から出るかと思った。

唐突に声をかけられたことも理由のひとつだが、そんなことよりもこの声は…


恐る恐る振り返ると、いつからいたのか部屋の入り口の柱に寄りかかるようにして立つ長い黒髪の男がいた。
左目の下に古傷を覗かせたこの男は、清正が数日前の夜を境に一気にこの世で一番苦手な相手と化した人物だ。


「…な、なんでいる」

「なんでとはまた随分ですね。一緒にお昼寝しましょうって云ったらうんって返してくれたじゃないですか」

「云ってないだろそんなこと!」


にこにこと底の読めない微笑を浮かべる左近に思い切り噛みつくが、この男を前にして警戒するに越したことはない。

数日前、場の空気に流されて自分はまんまとこの男に体を許してしまったのだ。
しかもイかされた回数は数知れず…限界限界と思ったところで、人間やれば案外出来るのかというほど散々に果てた。


…更に困ったことに、俺の体は左近に完璧に酔いしれてしまった。
思い出しては体が疼き、何もしていないのに中心が熱を持ち、後ろは圧倒的な質量を求めて肉壁が蠢く。
しかしそんなこと誰に云えるはずもなく、余りに苦しくて女を抱いてみたり、自身で慰めもした。
だが内側を熱い肉棒で擦られ穿たれるあの感覚には到底及ぶべくもない。
半端に解すことができただけで、煩わしくてそれ以上に惨めになるだけだった。


「へぇ。貴方が政務を溜めるとは珍しいですね」

「…大きなお世話だ」


…欲求不満で集中出来なかったなんて云えるか。

本当は昨日終わらせることもできたはずの仕事であることは、皆の政務を統括する軍師殿にかかればお見通しなのだろう。
今なかなか進まない理由はこの日和とお前の存在の所為だ。絶対。

左近から顔を背けて書簡に踊る文字に目を落とす。
同じ空間にいるだけで心臓が暴れ出していることに気づかれたくはない。
…のだが。


「頭に入らないならやらないほうがいいですよ」

「っ、ちょ…何してるっ」


背後から清正を抱き込むようにして、左近が腕を絡めてきた。
着物越しでも相手の隆々とした筋肉の力強さを感じて清正の体はたちまち組み敷かれたときのことを思い出す。

…やばい。
まだ触れてもいないのに中心は反応している。
ここ何日か、ずっと焦がれていた体に抱きしめられている。その事実が乙女のように胸を昇ぶらせる。


「…顔真っ赤ですよ。もうこの先を期待してるんですか?」

「ふ、ざけっ…!」


耳元に吹き込まれる低く芯のある声。
カッとなって拳を握り込み、寝ぼけたことを云う男を殴り倒してやろうとした直後着物の上からいきなり自身を撫でられた。


「…ほら、勃ちかけてる。まだ何もしてないのに想像だけで感じてるんですか?」

「さ、触るな変態!」

「変態、ね…」


左近に図星を突かれ、羞恥にふつふつと体が熱くなる。
愛しそうに撫でてくる指先を剥ぎ取ろうと必死になっていると、左近の声音が一段下がったことに気づくのに一拍遅れてしまった。
そしてそれが仇となり、清正が反応するよりも早く後ろに体が引き倒され、上体を起こせないよう左近が上から覆い被さってくる。


「テメッ、何の真似だっ」

「いえね、本当に淫乱で変態なのはどっちかってことを教えてあげないとと思いまして。」

云いながら左近の手がすっと下に伸び、これだけは死守しなくてはとしていたはずの下穿きをあっさり取り払われてしまった。

「やっぱり直に触られるほうがお好きでしょう?…ね、固くなってきた」

「ッ、ぁ、やめ…ろ」


中途半端だった雄は容赦なく左近の手にあしらわれ、急速に硬度を増していく。
自分と同じ…否、下手をしたら自分より節くれ立っている男らしさしかない手に施される愛撫は、確実に官能を引き出してくる。
腹筋に力を入れて変な声が出ないよう吐息だけで逃がすが、そうする余裕すら左近の手に簡単に奪われてしまう。


「ふ……ぁあっ、ぅ」

「濡れてきましたね……ここ、清正さん確か好きでしたよね」


穏やかな声で云うと、左近の指先が清正の自身の先端に突き込まれる。
途端、高い声が上がった。


「んぁああっ!やめっ、そっ…ぁ、ああッ」


ぐりぐりとそのまま入り込もうとしてくる指の動きに痛みともいえる強すぎる快感が押し寄せ、その気が触れんばかりの心地よさに涙が目尻に浮かぶ。
その間も反対の手が荒々しく竿を扱き、ぐちゅぐちゅと耳を塞ぎたくなるような淫音が聞こえてくる。


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