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無双小説
 安眠法・弐


だから機嫌を直すには…曹操に笑顔を戻すには手は一つしかないのだ。


こちらに身体を向けたままくるりと小さく丸まっている曹操の、敷布についていないほうの肩を軽く押して天井に身体を開かせる。
身体をずらして片膝だけ曹操の向こう側へと突き、肩を掴んだ手でそのまま相手の身体と寝台を縫い留めて曹操を見下ろす体勢になる。


「何しに来たかは知らんがな、明日も早いことくらい判っているだろう」


一方的に云って曹操が何か反論する前に唇を塞いだ。
貪るようなそれではなく、ただ優しく宥めるような口付け。

…だったはず、なのだが。


「っ……、おい孟と…っ、」


下に組み敷かれているはずの曹操が、合わせるだけの口付けをしていた夏侯惇の唇を割って舌を侵入させ、歯列をもこじ開けてきた。

予想外の相手の動きに思わず夏侯惇は頭を引いた。


「くくく、何しに来たか、だと?
……夜這いに決まっておろう」


何がそんなに誇らしいのか知らないが、自慢げに鼻を鳴らして夏侯惇の夜着の袷から手を入れて肌を撫でてくる。

対する夏侯惇は頭痛に見舞われていた。
云うに事欠いて夜這い…

つまり、曹操は最初からその気なのだ。
朝が早いとかいう理由では逃げられそうもない。


「判ったから…脚を絡めるな!」

「ん?主が儂に遠慮して体重をかけないようにしていることなどお見通しよ。ならば儂自ら体重をかけざるを得ない状態にしてやるまで。
…それとも眠りたいか、元譲?」

「……まったく…その性の悪さはなんとかならんのか」


ここまで求められておきながら背を向けて寝息を立てられるほど朴念仁ではない。

己の言葉に期待の色を滲ませた眼差しを向けてくる曹操に、夏侯惇はまとめてもいないのに掛け布に潜ったりしたため乱れてしまった黒髪をゆっくり手櫛でとかしてやりながら困ったように笑った。


「夜這いか…。二度とそんな気を起こせないようにしてやろう」

「それは楽しみだ」


本当は単に暖を取りたかっただけなのだが、そんなことを云えば夏侯惇はきっと優しく身体を包み込んでこちらが寝付くまでじっとしているだけだろう。

ここまで来たらそれではつまらん。


「だが、朝はちゃんと起きろよ?お前が居ないと進むものも進まん」

「起きる?寝ずともよいではないか」

「……仕様のない奴め」


さも楽しそうに喉を鳴らして笑う曹操の首筋に顔を埋め、浮き出た筋に沿って舌を這わせ鎖骨まで下降する。
邪魔な薄い夜着の衿を噛んでぐいと強く引き、胸元だけではなく腹部まで露出するほどに寛げた。

寒いかと問えば、状況的に不利にあるはずの曹操は不敵な微笑を返してくる。


「なに、すぐに暖めてくれるのだろう?」

「ああ。熱くてくっついているのが欝陶しくなるくらいに暖めてやる」


云いながら胸の飾りを緩く弄ると、曹操が痛みに眉をぴくりと寄せた。
続いて反対の飾りを舌先で焦らすように舐め、じわじわと曹操の余裕を奪っていく。

時折腰に絡められた脚が堪えるように強張り、呼吸も心持ち速くなって来た頃を見計らって熟れた飾りを口内に納め強く吸った。


「ふ、ぅあっ!」

「あまり大きな声を出すな、孟徳…。夜中だぞ」


囁くように云いつつ、指で遊んでいた飾りの中央を爪で暴くと曹操はびくびくと電気を流されたように背を波打たせる。


「駄目…だっ、んああっ…!」

「…ほぅ、これが気に入ったか」


過剰な艶のある反応に気をよくしたのか、上がる口角もそのままに夏侯惇は飾りのしわの奥へ侵入するように人差し指の爪で同じところをより深く刔った。
神経を直に引っ掻かれたような鋭利な刺激にじくりと血液が快感を腰に運ぶ。


「やぁあっ、…っはぁ、く……やめ…」

「やめろ?お前がそこまで云うとは珍しいな。そんなに善ければもっとくれてやる」


黒々としたものを胸の内に感じながら嗤う夏侯惇に、曹操は荒い息を整えるのもそこそこにふるふると首を振った。
目頭が熱く、目尻には僅かながらも涙が溜まっている。


「頼む…元譲っ、もう…」


こんなに胸を弄られたことは今までなかった。
しかしここまで身を跳ねさせ、おかしくなるんじゃないかと思うほどの快感を胸だけで与えられるなど耐えられない。

悔しいと表現するとどうにも幼いが、これ以上刺激を受けたらもしかしなくとも達してしまう。


やだやだと駄々を捏ねるような曹操の様子に夏侯惇は目を細めた。
先を強請る曹操というのは珍しくないが、やめてと弱々しく乞う曹操は滅多に見ない。
同時に目尻を今にも伝いそうな涙を見兼ねて、夏侯惇はしわをぐっと指で押し拡げて容赦なく突起の中をぐりぐりと爪で嬲った。

「ッ、あああぁ!」

首を反らし、溜まっていた涙をぱたぱた敷布に散らしながら数度痙攣して曹操は触れてもいない雄から精を放った。


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