測量
――俺と俊樹との距離、25センチメートル――
俊樹は親友だ。しかも、小学校からの。進学先は別々になったけど、絶対、一番、親しいやつは俊樹だって言える。正直言って、俊樹と離れるなんて俺には考えられない。それぐらいの仲だ。
「優嗣、何見てんの」
俊樹と話せなくなるのも、あと2ヶ月って思うと辛すぎて、吐きそうだ。
「んー、いや、あのピアス良いなって」
ウソ。本当はショーケースに写った俊樹見てた。
「え、どれ」
「ほら、」
「ああ!って、これ?あんまり優嗣の趣味じゃなくね?」
「良いだろ、別に。イメチェン、イメチェン」
「ふーん。優嗣は今のままが良いと思うけど」
「…」
俺だって、お前と、ずっと今のままで居たかった。離れてしまうなら、恥ずかしいけど、女子みたいにプリクラとか、写真で、形に残したかった。
「な、ゆーし」
「んー?」
「俺さー、東京行っても友達沢山できる自信あるんだ」
「だから何だよ、自慢か、死ね」
「でも、優嗣みたいな一番の親友はもう一生できないと思うんだ。だから、そんな寂しそうな顔すんなよ」
「うぜー!頭撫でんな、にやにやすんな、ヤメロ!!」
いつものノリでこんな言葉が出てしまった。これからは俊樹に頭を撫でられないのに、俺のバカ。
「俺の一番は、優嗣だよ」
「ふん」
「可愛いくないやつめ!!素直に喜べ!」
「ちょ、首を締めんな!」
――俺と俊樹との距離、0センチメートル――
耳元で俊樹が呟く。
「俺だって、寂しいんだからな」
「うん」
「俺がいないからって、勝手に彼女とか作んなよ」
「俊樹こそ」
「ふ、バカかお前は。俺の一番は優嗣って言っただろ」
「俺だって一番は俊樹だし!」
いつもは恥ずかしがって言えない本音も、ゼロ距離なら言える。
俊樹は俺の、この言葉を聞きたかったみたいで、それ以上何も言わなかった。
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