初対面
ルトネが扉を中指の背で軽く叩くと中から、はーいと高く透明感のある声が聞こえた。
「失礼致します」
重そうな扉を静かに自分の方へ90度に引いたルトネは、その扉のノブを掴みながら二人が入るのを廊下で待っている。
「す、すすすいません」
扉を開けたまま待機しているルトネに謝ったメルは、先に部屋へ入ったアスナをそそくさと追いかけた。
「あっ!遅いわよー!待ちくたびれちゃったわ」
応接間として使われているこの広い部屋には、アスナの大切な人だと公言したメルを待ちわび、今日という日を楽しみにしていたアスナの身内が集まっていた。
「おにーちゃま、おそいよぉ」
「にいちゃま、にいちゃま」
自分達の大好きな兄が帰ってきた事を喜ぶ幼い二人の兄弟は、走ってアスナの元へ駆け寄って、抱っこしてもらおうと一生懸命に腕を伸ばしアピールしている。
「それで?どこにいるの?噂の子は」
二人の歳の離れた兄弟の対応に困っていたアスナに、いないじゃない!と抗議をしている、雪のように白く透き通っている肌が、長く艶のある黒髪によく似合っていて、綺麗な顔をした女性はアスナの母ナナミである。
「メル」
座っていたソファーから立ち上がり、此方に不満そうな顔をし日頃のアスナの振るまいに文句を言いながら歩いて来る母親を無視し、顔だけ後ろに向け、アスナの陰になり皆から見えなくなっていたメルの名前を、普段発している声色とは180度異なる柔らかい声で大事そうに呼ぶ。
「は、はははい」
そんなアスナに声が裏返りながら返事をしたメルは、アスナの後ろからビクビクしながら姿を現した。
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