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ルトネがいなくなり広い会議部屋に一人になったアスナは、先程の調査隊の報告結果が書かれた書類を端から端まで見直していた。
報告書には、メルが連れ去られたと思われるあの場所は人通りが少なく目撃者がいなかったことや犯人の直接的な手がかりになる物は見つからなかったこと等が書いてあった。
アスナは胸の前で腕を組み目を閉じ今回の事件について考えているようだった。
「失礼いたします」
1時間ほどたった頃だろうか、ルトネの声が部屋の外から聞こえてきた。
「入れ」
アスナが入室の許可を出すとガチャっと大きな扉が開いた。
「ただいま戻りました。遅くなってしまって申し訳ありません」
隣の国の事を1時間で調べるのは大したものだと思うのだが、ルトネの中では主が求めているものを素早く、待たせずに差し出さなければ側近として失格だと思っている。
「良い。報告をしろ」
アスナに促され自分が1時間で調べたことを報告する。
「――これが今回調べた全てです。いかがいたしますか?」
「あいつに伝えろ。この事件はいい機会だと」
「はい。かしこまりました。では早速。」
部屋に戻って30分もしないうちにルトネは主の言伝てを伝えるために部屋から出ていってしまった。
再び一人になったアスナが部屋にある大きな古い時計を見ると時刻は9時を示していた。
アスナの表情は、大切なあの子がいなくなってしまったというのにどこか余裕があった。
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