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部屋にはアスナとルトネの二人きりになった。
「ルトネ、あの事は聞いているな」
「はい」
「ならばよい」
アスナとルトネが話している「あの事」とは、隣の国で問題になっている奴隷制度のことだ。
ここセルシア王国では救済が進んでいるが、他の国では解決の糸口さえ掴んでいなかった。
特に隣の国、ニール王国では、国民には奴隷制度を廃止し、救済をしている最中と説明しているが、逆に年々増え続けているのだ。
なぜ国民はその事に気付かないかというと、ニール王国は他の国とは違いもともと裕福な家庭にしか奴隷は存在しなかった
昔のセルシア王国もそうだったが、普通の一般市民の家庭にも一人や二人は奴隷がおり、町を歩いているとあちこちに労働を強いられている者たちがいた。
しかし、ニール王国は裕福な家庭にしか奴隷はおらず、一般市民に奴隷の数か増えているか減っているかなんて分からないのだ。
それでも今まで、奴隷が救済されていると国民が信じていたのは、奴隷の売買に関わっている者たちが、偽物の奴隷役を演じるように金で雇っていたからだ。
「僕は奴隷だったんだけど、国が助けてくれたんだ」と人情味のある人を騙し、それを少しずつ広めていった。
この事実をこの国で知っているのは、アスナとルトネ、それからアベスのみだ。
「調べますか?」
「ああ」
アスナの返事を聞いたルトネは、失礼しますと自分の主に一礼をし会議部屋を出ていった。
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