キリリク小説。
健多くんの苦難の日々3〜ナツさまリク☆〜
その日、なぜか鳴人はずっと機嫌がよかった。
「なにニヤニヤしてんの」
金曜の夜、鳴人のマンションに泊まる僕は夕飯の片づけをしながら、ソファの上でひとり、どことなくソワソワしている鳴人に言った。
はっきり言って、気持ちが悪い。
「別に」
そう言う声もいつもと違って少しウキウキとしている。やっぱり気持ちが悪い。
どうしてもその笑顔の裏に、なにか悪いことが起きる予感がしていたが、本人が何も言わないことには予防する方法がない。
仕方がないから放っておくことにして、僕はキッチンで食器を洗い始めた。
ピンポーン。
突然、インターホンが鳴った。
僕が濡れた手を拭いて玄関に向かおうとすると、一足先に鳴人が立ち上がった。
「俺が出る」
いや、そもそもここはアンタの家ですから。
そうツッコんでやろうとしたが、黙っておく。玄関に向かうその顔がやけに嬉しそうで、やっぱり、気持ちが悪かったから。
しばらくして、鳴人がリビングに戻ってきた。その手には大きな紙袋が握られている。
ちょうど食器を洗い終わった僕は、鳴人の手に握られたその紙袋を見て絶句した。
「ちょ、っと・・・・ソレ、その袋・・・」
黒の、ロゴもなにもない紙袋。
少し前にその紙袋の中から口にするのもおぞましい淫具の数々が出てきたことを、僕の鳴人危険探知センサーはしっかり覚えていた。
あのときの凄まじい体験を思い出し、僕はザーッとすごい勢いで血の気が引いていくのを感じた。
そんな僕とは対照的に、鳴人はとても嬉しそうだ。
それこそ、新しい玩具を手に入れた子供のように。
茫然としてていいのか、それとも逃げるべきか。そう迷っている僕に、鳴人はその紙袋を押し付けてくる。
「へ!?」
こんなもの渡されても困るんですけど!
意味がわからず、とりあえずそれを受け取ってみる。
「ほら、着ろ」
・・・・・・・・・・・・・キロ?
何を言ってるんですか、という表情をしてみると。
「ひとつ、なんでも言うこときくって約束。覚えてないとは言わせないからな」
ニヤ、とあの人の悪い笑みを浮かべて、大魔王さまは僕の胸に紙袋をぐいっと押しつけたのだった。
それはほんの数日前のこと。
友達の秋月にどうしてもと泣きつかれて、鳴人にその日の家庭教師を中止してくれるように頼んだ時のことだ。
まあ、その結果があんな悲惨なことになるなんて僕も予想してなかったが、それはさておき、家庭教師を一日休むための条件として鳴人が出したのが。
『ひとつだけなんでも言うことをきく』
というものだった。
「それがこんな・・・」
寝室。クローゼットに備え付けの大きな姿見の前で、僕は自分の情けない姿を見て溜息をついた。
白い半袖のシャツに、黒のチェック柄のプリーツスカート。
胸元にはスカートと同じ柄の大きなリボン。
極めつけは、黒のハイソックス。
俗に言う。
「・・・・・・・・・女子高生」
ベタな・・・・なんてベタな男なんだ、藍崎鳴人。
それにしても全然似合ってない、と思う。
いくら男にしては小柄で痩せている僕でも、骨格は男だ。胸にもお尻にも女の子のような膨らみはない。
それに、スカートが短すぎる。
一応下着は穿いてるが、それがプリーツスカートの下から見え隠れしている。
これを人に見せなきゃならないと思うと、死んでしまいたいほど恥ずかしい。
鏡の前でひとり寝室を出るタイミングをうかがっていると、ガチャっといきなり扉が開いて、鳴人が入ってきた。
「ぅぉあっ!?」
まだ心の準備ができていなかった僕は、慌ててスカートを押さえる。
「着替え終わってんならさっさと来い」
「いや、その・・・・あの」
モジモジとスカートを引っ張りながら後ずさる。
「なんだ」
「あの・・・だから、やっぱり、ヤメにしない・・・?」
「なにを今さら」
鳴人の顔にはなに言ってんだコイツ、とでかでかと書かれている。
「いや・・・だって、コレ、絶対気持ち悪い」
どう見たって女装してる男だし、こんなの見て喜ぶ人間がいるとは思えない。
「女の子にも見えないし・・・」
ぼそっと言うと、鳴人はふんと鼻で笑った。
「まあ、女には見えないな」
「じゃあ、」
「つか、誰が女になれって言った?」
「・・・え?」
わけがわからず訊き返すと、鳴人は大股で僕に近づいてきた。
そしてまだスカートを押さえたままの僕の手首を掴む。
「わ、ちょっ、」
「・・・顔はもともと女顔だけどな。カラダは、まあ高校生だから無理があるだろ。それに」
鳴人の顔が首筋に近づく。
「んっ・・・」
耳元に息がかかり、ぞわ、と痺れが走った。
「俺は、お前がそんな格好して恥ずかしがってるのが見たいんだよ。見ず知らずの女がそんなん着てるの見たってしかたねえだろ」
「・・・っ!ぁ、ちょっと・・・指・・・!」
シャツの上から鳴人の悪戯な指が胸の尖りを探る。
そこを弄り慣れた指はすぐに小さな突起を見つけ、くりくりと摘みあげた。
「ん、ぁんっ・・・は、あっ・・・」
耳元で低く囁かれ、服の上からでも感じる場所を弄られればあっという間に熱は高まっていく。
そんな僕を見て鳴人は楽しそうに笑った。
「・・・女には見えなくても似合ってるぞ。すげーエロくて・・・そそられる」
「やっ・・・!」
シャツを着ていてもしっかりと膨らんで見えるようになってしまった乳首をカリカリと引っ掻かれ、ついに腰が砕けそうになると鳴人はぱっと手を離した。
てっきりそのまま押し倒されるのかと思ったのに、どうやら鳴人はまだ僕に要求があるらしい。
「よし。じゃあそうだな・・・これからは俺のこと先生って呼べ」
「せっ、せんせい!?」
「そ、先生。イケナイコトしてるみたいでいいだろ?まあそもそも俺はお前の先生だからな」
「でも、先生って・・・」
そうか。コイツ、本物の変態だったのか・・・
「ほら、さっさとリビングに戻れ松森。授業を始める」
ノリノリでリビングに向かう背中を見ながら、鳴人ってこんなヤツだったっけ・・・と絶対に思ってはいけないことを思ってしまったのだった。
「ここは返り点がついてるだろ。次が『能う』だから可能。で、訳は?」
「えっと、訳・・・んっ、訳は・・・ぁ・・・ちょ、っと、もう!だからやめろってば!」
バシッと僕の太腿を這う手を思いっきり叩く。
「なんなんだよさっきから!全然集中できない!」
そう。勉強・・・いや、鳴人いわく授業が始まってからずっとこの調子だ。
ソファの前の床に僕と鳴人は並んで座っている。
僕がせっかく自分の格好を忘れようと勉強に集中する努力をしているのに、鳴人がさっきから僕のスカートの中に手を入れて、剥き出しの太腿を擦ってくるのだ。
服の上からじゃなく、直接手のひらの熱い感触が這いまわり、まるで裸にされているような不安がつきまとう。
スカートの感触とスースーする下半身に慣れることができない。
ギッと隣の鳴人を睨むが、鳴人はあろうことか逆に睨み返してきた。
「おい松森。先生にむかってその口のきき方はなんだ」
「〜〜〜〜っ!!!このセクハラ教師!PTAに訴えてやるからな!」
「PTAぇ?中学生かお前は」
意味の分からない返し方をされて、もう呆れてものも言えない。
もういい。無視だ無視。
僕は鼻息も荒く再度ノートに向かった。
教科書を見て、ノートに訳を書いてい・・・・こうとすると、またセクハラ教師の手が伸びてくる。
スカートの中が見えてしまうので正座をしている僕の膝頭を指でくすぐり、そのまま太腿まで上っていく。
「んっ・・・ぅ、くっ・・・!」
すりすりと乾いた手に撫でられると、くすぐったさにどうしても声が抑えられない。
自然とシャーペンも止まってしまって、ついに僕はぎゅっと目をつぶって机に突っ伏してしまった。
「も・・・やだ・・・やめてよ・・・!」
こんなの生殺し・・・とか思ってしまう時点でもう鳴人の手の中に落ちたようなものだ。
「なんだ松森。もう降参か?」
ふふん、と勝ち誇ったような声が耳元で聞こえた。
「違うっ・・・」
触られてるところからぞくん、ぞくん、と疼きが上がってきて、顔が熱くなっていく。
そんな姿で否定しても、まったく説得力がない。
「・・・感じてるんだろ?スカートの前が盛り上がってきてる」
「わ、ちょ、きゃあっ!?」
ピラっと突然下半身の薄い布を捲られ、僕はついスカートめくりをされた女子のように悲鳴を上げてしまった。
慌てて口を塞ぐが、時すでに遅し。
「・・・ぶふっ!」
鳴人が、盛大に噴き出した。
「きゃ、きゃあ!って・・・!きゃ、ぶっ、ぶはははっ!!」
鳴人が僕にセクハラしていた手も引っ込めて、腹を抱えて転げまわった。
ひーひー言いながら涙を流して床を叩く。
その様子をスカートの前を押さえながら見ていた僕は、もう恥ずかしさと怒りで死にそうだった。
「笑うなって!アンタだってこんな姿になってみればわかるんだよ!」
「ぶっ、アンタ、じゃなくて、せんせいだろっ・・・!」
この期に及んでまだそこにこだわる変態に、ある意味諦めのような感情が湧いてきた。
コイツに何を言っても無駄だ。
「あーもーわかったから!先生、藍崎先生!さっさと授業を進めてください!」
まだ床に寝ころんだままの鳴人の腹を思いっきり叩いてやる。
すると、ようやく笑いの嵐が過ぎ去ったのか、目尻の涙を拭いながら鳴人が起き上がった。
「いや、もう授業はいい。くくっ、今から課外授業だ」
「課外授業?」
「ああ。お前があんまり可愛いから我慢できなくなっちまった」
「はあっ!?」
か、可愛い・・・?
今のドコにそんな感情を引き起こす要素がありましたか!?
そんな心の叫びは鳴人には届かなかったらしい。
まだ小さく笑いながら立ち上がると、いきなり僕のカラダを担ぎあげた。
「うわっ!」
突然地面が遠くなって、軽い眩暈がする。
いくら小柄だからといって、こうも軽々と持ち上げられると男としてのプライドが・・・
「可愛い女子高生には、先生がたっぷりイイコト教えてやるからな」
「ちょっと、おい、やめろこの変態っ」
僕の制止なんて聞きもしないで鳴人は脚がるに寝室へ入っていく。
ライトを点けて僕をベッドに放りだすと、自分はその上に乗り上げてきた。
「あ、灯りは!」
そういう問題でもない気がするが、明るいところでされるのはすごく恥ずかしい。
「ダメだ。こういうプレイはじっくり見ないと面白くないからな」
もう抵抗する気さえなくなってきた僕を満足げに見下ろすと、スカートの裾を摘んで捲りあげた。
「きゃあ」
「・・・・・・・っ!!!!アンタ悪いモンでも食べたんじゃないの!?」
いったいどうしたんだコイツ。
なんかおかしい。絶対にいつもと違う!
「おかしくねえよ・・・・・ん?おい、なんだコレ」
「・・・は?」
なに、と言われても。
「そ、そんなじっくり見るな!」
鳴人の手から裾を奪い返そうとするが、あっさり跳ね除けられた。
「お前、これボクサーパンツ」
「・・・だから何だよ」
もしかしてブリーフ派?それともトランクス派か?って、今までもさんざん見てきたじゃないか。
「なんでこんな色気のない下着穿いてんだ」
「なんでって・・・ずっとコレ穿いてるんだから当たり前だろ、って、触るな!」
鳴人の手が下着の上から僕の股間を撫でる。
「やめろってば・・・!」
下から救いあげるように二本の指で擦りあげられ、簡単に息が上がる。
急いで股を閉じようとしたが、脚の間に素早く入られた。
「なにすんだよっ」
「気に入らない。脱がす」
「え!?」
気づいた時にはもう遅かった。
鳴人は僕の下着に手をかけると、ずるっと一気に僕の脚から抜き去ってしまった。
「ひゃっ・・・!」
途端に股間が寒くなり、急いで前をスカートで隠す。
とんでもない格好だ。きっちりと制服を着ているのに下半身は靴下しかつけてないだなんて。
でも鳴人はさらに僕の脚を腕で抱え上げ、大きく開かせた。
「やっ!やだ、コレ!」
とっさに上に逃げようとするが、睨まれて動けなくなる。
まさしく蛇に睨まれた蛙だ。
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