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キリリク小説。
健多くんの苦難の日々7〜碧さまリク☆〜
適度に空調の効いた部屋。

ブラインドのわずかな隙間から差し込む朝日。

広いベッド。静かな窓の外。

それはとても快適な朝の風景のはずなのに。

「・・・・・・重い」

どうしても寝続けることができなくて、僕はしぶしぶ目を開けた。

全身に普段はありえない体重を感じる。

原因はわかりきってるけど。

「・・・・・・鳴人。重いんだけど」

いつもは寝にくいからと丁重にお断りする腕枕。

なのに僕のカラダはいつの間にかすっかり鳴人の腕の中におさまっていて、しかもほとんど押し潰される形で覆いかぶさられていた。

そもそも男子高校生を抱きしめて寝て何が楽しんだとツッコミを入れたくなる。

小さくも柔らかくもないだろうに。

「おーもーいー」

いくら抗議の声を上げても鳴人の目はいっこうに開く様子もない。

首筋に気持ち良さそうな寝息がかかってくすぐったい。

それにもうひとつどうしても解放してほしい事態が起こっている。

「勃ってるし・・・」

いや、仕方ないんだけど。

生理的メカニズムに文句を言ったってしょうがないってことはよくわかってるけど。

それでも太腿に当たるソレをどうしても意識してしまって恥ずかしい。

「起きてくれー」

ほぼ祈りのような気持ちを込めて僕は呟く。

そしていつしか鳴人のゆっくりとした鼓動に誘われるように、もう一度目を閉じた。








浅い眠りから目を覚まして時計を見てみると、あれから30分ほど経っていた。

そろそろ起きないとこのまま一日中ベッドの中で過ごすことになりそうだ。

朝はたいてい鳴人のほうが先に起きる。

着替えてリビングでお茶を飲んだり、執筆をしたりしているらしい。

たまにベッドの横からいつまでも視線を感じることもあるけど、それはしれっと気付かないフリをする。

視線が離れるまでずっと同じ態勢で寝たフリをするのもつらいが、それでも我慢しているとたまに鼻で笑われたりするので、もしかしたらバレてるんじゃないかなとも思う。

そしてやっと鳴人が寝室から出て行った頃を見計らって僕も起きるのだ。

だからこうして僕が鳴人が起きるのを待つというのは珍しい。

昨夜は早く寝たし、疲れてるってことはないんだろうけど。

「よ、っと」

がっしりと僕の肩を掴んでいる手を引き剥がして、カラダごと鳴人のほうに向きなおる。

しっかり閉じられた長い睫毛。

・・・近くで見てもムカつくくらい綺麗な男。

「鳴人」

湧き上がってきた少しの悔しさにまかせて額を叩いてみた。

ぺち、とマヌケな音がして、さすがの鳴人も小さく呻る。

「・・・・?」

まさか寝ているところを叩かれるとは思ってなかったんだろう。

不思議そうな顔をして薄く目を開けた。

「朝。もう9時半だけど」

サイドボードに置いてある目覚まし時計を肩越しに指差す。

「・・・ん」

しかし返事はしたものの、鳴人はまたタオルケットの中に顔を埋めて寝息を立て始めてしまった。

しかもせっかく離した腕を僕の腰にきつくまわして抱きしめながら。

「ちょっと」

力強い腕が少し苦しくて僕は身を捩る。

これは起きる気がない、ということだろうか。

「鳴人!」

もう一度、今度は頬を軽く叩きながら呼んでみる。

すると返事をする代わりに腰を掴んでいた腕にさらに力がこもる。

・・・だめだこりゃ。

溜め息をつくと、それに反応するように僕のお腹がぐうと小さく鳴った。

「・・・お腹すいた」

一回意識してしまうとそればかりが頭の中をぐるぐると回る。

何か食べないと気分が悪くなりそうだ。

今すぐ鳴人を起こすなら何が一番効果的だろうか。

いろいろ考えた結果、ベッドを降りずに僕ができることがひとつだけあった。

でも、それは思いついた方法の中で一番避けたい方法でもある。

そもそもこれで起きるとも限らないけど・・・まあ、試してみる価値はあるだろう。

目の前で眉間に皺を寄せて寝入っている鳴人に再度呼びかける。

「・・・・鳴人、ねえ」

反応がなくてもめげずに何度も呼んでみると、何度目かの呼びかけでやっと目が開いた。

鳴人がまた寝てしまう前に僕はさっき考えた言葉を言ってみる。

「・・・キスしたいから、顔上げてよ」

我ながらすごい言葉だと思う。

鳴人の意識がはっきりしてるときには絶対言わないけど、これだけボーッとしてれば目が覚めた時には忘れてるだろうと思ってるからこそ言えることだ。

だからちょっとだけ目を覚ましてくれればよかったのに。

「・・・ッ!?」

突然、Tシャツの中に潜り込んできた手のひらの熱に驚いて僕は全身を硬直させた。

まさかと思ったが案の定、目の前の鳴人は・・・・必死に笑いをこらえていて。

「起きてたわけ!?」

「・・・途中までは寝てた」

言葉どおりその声は低く掠れている。

でも、背中を這いまわる手は止まらない。

背中を反らせたせいで浮き出た肩甲骨を指がなぞる感触に痺れが走った。

「お、きたんなら離せよ!」

ぐ、とカラダを引き離せば、またそれ以上の力で引き戻される。

「・・・キスは?」

その目が絶対に逃がさないと語っている。

しまった。完全にミス。

「あれは無し。言ってみただけ!それよりもお腹すいた」

なんとか鳴人の意識をキスから遠ざけようと早口で捲くし立てるが、かえって逆効果だったようだ。

ギシ、とベッドを軋ませ、鳴人が上半身を起こす。

そのまま起きてくれればいいのに、背骨を撫でるように蠢いていた手が抜かれて、あっという間に両手首を掴まれた。

「や、だから・・・ほら、お腹が・・・」

ものすごい至近距離で見下ろしてくる鳴人の顔が場違いなほど真剣で、思わず目を反らしてしまう。

それでもこんな状況で逃げられるはずもなく。

「俺も腹減った」

「だったら・・・んッ、ちょっ、」

首筋に齧りつかれる。

硬い歯で皮膚の柔らかいトコロを甘噛されて力が抜けた。

「食べるな!」

冗談じゃない。

このままコトに傾れ込まれたらあと一時間は確実に食事抜きだ。

「なにか作る、から・・・離して」

「お前からキスするまでダメ」

くすぐったさに上下する喉仏を舐めながら言われる。

子供か!少しくらい我慢しろ!

力一杯叫びたかったが、そういえばこういうことに関しては鳴人は絶対に折れないということを思い出してガックリした。

まあ自分が言い出したことだし・・・仕方がない。

「わかった。わかったから手どけて」

組み敷かれたままじゃキスしづらい。

そう訴えるとやっと手首が解放される。

それでもまだ僕の上から退こうとしないので、肩を掴んで引っぺがしてやった。

ぼすん、と横たわった鳴人の上に今度は僕が乗り上げる。

「・・・・言っとくけど、キスだけだからな」

一応念を押しておいて、鳴人の顔の向こう側に手をつく。

キスくらいもうなんてことないはずなのに、いざこうして目が合ってるとどうもやりにくい。

鳴人の目がじっと見上げてくるこの態勢だとイケナイコトをしてしまってるようなそんな感じだ。

一度意識してしまうともうどうしようもなくて、急に心臓が暴れ出した。

「・・・早くしろ。また寝るぞ」

「いや、うん。します」

します、なんてなに馬鹿なこと言ってるんだと心の中で自分にツッコミながら、鳴人の目を見ないように顔を近づける。

恥ずかしくて目を瞑ったら、僕の下で鳴人が小さく噴き出した。

「なにがおかしいんだよ!」

慌てて顔を上げようとしたが、それよりもこんなこと早く終わらせてしまえと笑ったままの鳴人に口づける。

するとついさっきまで笑っていた鳴人が急に黙って、カラダの隣に投げ出されていた手が僕の脇腹に添えられた。

突然の手の感触にビクッとすると、それに気を良くしたのか閉じられていた鳴人の唇が開いて舌が伸びてくる。

くるくると器用に蠢くその舌に上唇を舐められるとどうしても感じてしまって声が漏れてしまう。

「ふ、ぁ・・・」

いつしか僕の両手は鳴人の髪をかき回し、夢中になってキスを味わっていた。

唇を端から垂れた唾液を鳴人の舌が掬いあげる。

そのたびにゾクゾクとした痺れが背筋を駆け上がって、空腹の二文字なんてどこかに飛んでいってしまう。

朝っぱらからこんなことして・・・頭がおかしくなったのかも。

朦朧としてくる意識に溺れそうになっている僕を鳴人が引きとめる。

「・・・お前、コレ朝勃ち?それともキスでこうなったのか?」

グリ、と膝で膨らんだ股間を擦られて一気に目が覚めた。

「あッ、朝の生理現象!」

慌ててカラダを起こそうとしたところを鳴人の手が捕まえる。

マズイ。コイツこのまま流す気だな!

そうはいくか!

「離せ!キスだけだってば!」

必死に抵抗するが、寝起きとは思えない力でカラダを起こされ、反転させられた。

また上から見下ろされて太腿に鳴人の硬くなったモノを押し当てられる。

「俺のも勃ってるんだけど?」

「そんなの知らな、」

「俺はお前のキスで興奮した」

耳元で囁く低い声。

不意打ちに首筋がカッと燃えた。

「俺と、俺のを起こした責任とれ」

「このッ・・・下品!」

僕の悪態なんてさらっと流して鳴人の手がTシャツを捲り上げる。

タオルケットはすっかりぐしゃぐしゃに丸まってベッドの端に押しやられていて、僕の上半身はブラインドから漏れる光に照らされていた。

つまり、丸見え。

「・・・乳首まで朝勃ちするのか?」

さっきのキスでピンと勃ち上がった胸の尖りをそうからかわれて耳まで真っ赤になった。

悔しくて返事もしないでいると、意地悪な指が乳首の先端のくぼみを爪でくすぐる。

「んッ・・・ふ、ぅッ・・・!」

きもちいいなんてもんじゃない。

なんでコイツの苛め方っていちいちいやらしんだろう。まったく、どこかおかしいんじゃないだろうか。

「ココ、昨日たくさん舐めてやったもんな・・・まだ敏感だろ?」

クリクリと左の尖りを弄りながら耳元で囁かれると、どうしようもなく興奮してしまう。

最後の抵抗とばかりに鳴人の腕に爪を立て、唇を引き結んだ。

それでも反応していく自分のモノは隠せなくて。

「ほら、もうソノ気になった」

笑いを含んだその声に首を左右に振る。

「ゆう、べも・・・さんざん、したくせにッ・・・!」

なんで朝からこんなに盛れるのかわからない。

ほどほどっていう言葉を知らないんだろうか、この男は。

そんな文句をコイツに言ってみたってどうせ「お前が悪い」の一言で済まされるのはわかってる。

実際、今回は僕が半分くらいは・・・悪いんだろう。

仕方がないから一回くらいなら、と覚悟を決めたその時。

ぐう。

「・・・ぁ」

僕の、お腹が。

「・・・・・・・・・・ぶッ、くくッ、くくくッ・・・!!」

長い長い沈黙の後、鳴人がついに耐えきれずに噴き出した。

僕の上で口元を押さえながら涙目になって笑っている。

・・・・・・・死にたい。

すっかりきもちよくなっちゃって僕の頭が空腹を忘れてても、カラダはしっかりと覚えていたのだ。

我慢できないくらいの空腹を。

「ぶふッ・・・ふッ」

「・・・笑いすぎ」

なんだか怒るのもバカバカしくなって、勃ち上がってたモノもすっかり萎えてしまった。

それは鳴人も同じみたいで、さっきまでの欲情した顔がウソみたいに笑い転げている。

僕はひっそりとため息をついて、でも内心これで助かったなんて思っていた。

このままコトに及んだら確実に一日潰れるから。

捲られたTシャツを戻して、未だ笑い続ける鳴人を押しのけカラダを起こす。

開き直ってしまえば僕の頭の中は今から何を作るかということでいっぱいになった。

冷蔵庫に卵はあったかな。牛乳があと少し残ってたからスクランブルエッグにしよう。
手早くできるものがいい。

・・・・・ええ。お腹も空いてますしね。

「ご飯作ってくる」

ちょっといじけながら立ち上がると、涙目の鳴人も一緒にベッドから降りた。

その目はまだ笑ってるけど、なんとかこらえている。

「俺も手伝う」

するとそんな珍しいことを言うもんだからびっくりした。

いつもなら黙ってご飯ができるのを待ってるのに、いったいどういう風の吹き回しだろうと不思議に思っていると。

「さっさと食べて続き」

ちゅ、と小さな音をたてて首筋にキスをされた。

・・・・ああ、そういうことですか。

じとっとした目で鳴人を見上げると、今度は唇に温かい感触が。

触れる吐息がまだ笑いを含んでいる気がして全然嬉しくない。

いや・・・全然、ってことはないけど・・・

ぐう。

「ふはッ!」

「・・・もういいから」

とりあえずこの邪魔な腹の虫をどうにかしよう。

それから、今日一日をベッドの上で過ごすことになってしまった不幸を呪うとしようか。

お腹を押さえて肩を震わせている鳴人を置き去りにして、僕はさっさとキッチンに向かった。



・・・たまには、こういう日もあると思います。












<あとがき。>
この話を碧さまへ捧げます!
リクエスト、寝ぼけた鳴人の健多への甘ーい感じ。とのことで。
甘い、ではなく、甘ーい、ですよね。
甘ーい・・・・(管理人的には)ギャグ甘・・・になってますね・・・うふ☆
こういう15禁的なイチャコラが大好きで、こうなってしまいました(笑)スミマセン・・・
最後までギャグっぽくなってしまいましたが一応甘いってことで!どすか!
あの二人の日常会話的な感じで!
お、お粗末さまでございました(汗)☆



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