プライベート泡姫3 〜お店の外でも会えませんか?〜
「おーい、谷田! やーだー!」
休日で賑わう商店街の奥、人混みのなかでひとりだけひょっこり頭が出ている谷田脩平に向かって、津村明之は呼びかけた。ざわめくアーケードに明之の声が一際大きく響き、道行く人は立ち止まってキョロキョロと辺りを見回した。
何度目かの呼びかけで明之に気づいた脩平は注目されるのが恥ずかしいのか、日に焼けた顔を指でかきながら足早にこちらへやってくる。
「おい津村、声でかいだろ」
だが言葉とは裏腹にまったく怒った様子のない脩平。明之もそんな脩平に悪びれず答える。
「だって谷田が遅いから」
「それは、ごめん」
時刻は午後3時。今日は土曜日。脩平の部活が午前中で終わるため、ふたりは昼から待ち合わせをして出かける予定になっていた。ちなみに予定していた待ち合わせの時間は午後1時半だ。
「なんてな。いいよ、練習長引いたんだろ。連絡もらってたからそこの漫喫で時間つぶしてたし。それにしても腹減ったなー」
スマホの時計を確認しながら呟いた明之に、脩平は目を見張った。
「飯くってないのか?」
「だって一緒に焼き肉食おうって……あっ! もしかして昼飯くってきちゃった? あーそうか! だよな〜……」
練習終わりで腹を空かせたスポーツマンが食事をしていないわけがない、と明之はがっくり肩を落とした。
「しくったー。ちょっとコンビニ寄っていい?」
空腹を自覚したとたんに大きな音をたてて鳴りだした腹を押さえながら、角のコンビニを指さす。
すると脩平はちょっと笑いながら、
「俺も食ってないから。焼き肉いこうぜ」
と言った。腹を押さえたままの明之が驚いて脩平を振り返る。
「そうなん?」
「おう。っていうかお前待たせてると思ってたから、飯なんて忘れてたし」
ほら、行こうぜ、とジーンズを履いた長い脚が当初の目的どおり、いま学生の間で安くて美味いと評判の焼き肉店へ向かって歩き出した。
背を向けた脩平の白いTシャツの背中がうっすらと汗を滲ませていた。急いでやってきたのは本当らしい。自分のために慌てて家を出る脩平の姿を想像すると、その真面目さに明之はあらためて感心した。
谷田脩平は明之の高校の同級生で、県内でも強豪といわれる野球部の現エース。いっぽうの明之は帰宅部だ。ここひと月以上、放課後はまっすぐ帰って、腰を痛めて療養している祖母の代わりに、祖母が営業している銭湯の番台に座っている。
ふたりともお互いが同級生であるという認識はあったが、休日を一緒に過ごすほど親しくなったのはここ最近。その理由は、明之が店の手伝いをしている間に常連客である脩平が、銭湯の閉店の手伝いをしてくれるようになったから。
もちろん孫として店を手伝っているだけの明之にアルバイト代を支払えるほどの権限はないのだが、脩平はそんなこと気にするなという。むしろ広い浴場をのびのび使えて得しているといって、アルバイト代のかわりに明之が背中を流してくれればいいと条件を出してきた。
この申し出を明之はありがたく承諾したが、それでも一ヶ月近くタダで手伝いをさせているとなると良心が痛んでくるのもたしかだ。
そこで明之は父親に相談して、今回の焼き肉代をひそかにもらっておいた。これで日頃の感謝をこめて脩平に奢りたいと思うのだが、その金すら自分で稼いだものではないと思うと、それはそれでまた良心が痛む。
それでも世話になっている礼をしっかり伝えてこいと両親にいわれた手前、なにもしないわけにもいかず、脩平がやってくるまでのあいだ漫画喫茶でひとり悶々と悩んでいたのだ。
これでなんとか両親の面目は立ったとホッと胸をなで下ろし、明之も慌てて脩平のあとを追った。
目当ての焼き肉店はアイドルタイムに入っているからだろうか、ちらほらと一人客がいるだけだった。店内は夏の暑さが一瞬で凍りつくほど冷房が効いている。
ふたりは衝立に隠された奥の席に座った。頭上では大がかりなファンが音をたてて白い煙を吸い込んでいた。
「いやー、かえってラッキーだったな。静かだし」
「だな。ゆっくり食おうぜ。ほら、メニュー」
脩平は壁際に立てかけられた巨大なメニューを、明之のほうに向けて開く。
「谷田が先に決めろよ。腹減ってるだろ」
メニューの向きをくるりと変えて、脩平の前に滑らせる。脩平は、さんきゅ、と目で語ってページをめくった。
「俺、ホルモンは欠かせないんだよ。津村はホルモン食える?」
「食う食う」
「じゃあ豚ホルモン、ミノ……タレは?」
「塩」
「塩。カルビ、は食べ放題のコレでいっか。何皿?」
「んー。めっちゃ腹減ってる」
「じゃあ……」
結局はお互いが食べたいもの、食べられるものを話し合って決めた。
男子高校生がふたり、前髪が触れそうなほどの距離で真剣にメニューと格闘した結果、テーブルの上にはけっこうな量の皿が並んだ。
4人掛けテーブルを所狭しと皿が占領しているのを眺めて、明之は呆れ半分に呟いた。
「すげぇ量になっちゃったな。食べきれるか心配になってきた」
「そうか? これくらいふつう」
「えええ、野球部、食い過ぎだろ」
そう言って笑う明之だったが、じゅうじゅうと油を垂らしながら網の上で焼き上がる肉を片っ端から平らげていく脩平に、驚きよりも感嘆の声を上げることになった。
「ははっ、すげー」
あまりに豪快できれいな食べっぷりに、自分が食べるのも忘れて肉を補充してしまう。
それに気づいた脩平がちょうどいい感じに焼けた肉を明之の小皿に移した。
「津村、焼いてばっかいないでお前も食えよ」
「え? いやー、なんか谷田のこと餌付けしてるみたいで楽しくなっちゃって」
そういう間にも新しく注文したタン塩を網に載せる。上に山ほど盛られたネギを落とさないよう慎重に配置していく。
「お前がどんどん焼くから、俺が焼く暇がないんだよ」
「気にしない気にしない。あ、それともそろそろギブ?」
「まだ全然余裕」
「無理そうになったら言えよー」
にこにこと嬉しそうに網の上を肉で埋めていく明之に、脩平の忙しなく動く口元も思わずといった様子でほころんだ。
結局食後のアイスまできっちりと食べきって、ふたりは大満足で店を出た。
明之にいたっては、あれほど焼くことに専念していたにもかかわらず、薄い腹が目に見えて膨らむほど満腹だった。
会計についてはレジの前で明之が説得した結果、脩平も「津村の両親がそういうなら」としぶしぶ了承した。
「別に礼してもらうほどのことしてないんだけど」
店を出て腹ごなしにぶらぶらと歩いている途中で、脩平が思い出したように呟いた。
「そんなことないって。助かってるし」
「最初から俺の押しかけみたいなもんだったろ。むしろいつも津村のこと待たせてる」
「谷田は遠慮しすぎ。片付けもすぐ終わるし、マジで感謝してるから」
「でも、」
なおも素直に感謝を受け取ろうとしない脩平にしびれを切らした明之は、
「本当はさー、親からじゃなくて俺からも礼したかったんだけど、俺じゃあんまり礼になるようなことも思いつかなくて。あ、なんかあったら言ってくれよ。俺にできることはなんでもするからさ」
お金がかかること以外ならなんでも、と張り切って拳をつくった。
「いや別にお前にどうこうしてもらおうと、か…………」
脩平は、子供のように目を輝かせてこちらを覗き込んでくる明之の表情を眩しそうな目で眺めたあと、ふと顔を強張らせ、眉根を寄せた。
「……谷田? おい、大丈夫? 腹痛くなった?」
「……」
そのまま黙り込んでしまった脩平の腕を揺さぶるが、脩平は足下を眺めたまま何かぶつぶつと呟きはじめた。
「待てよ……これってチャンスなんじゃ……どうせならなにかしてもらって……いやでも下手したら全部台無しに……」
「え、なんて? おい谷田」
「でもこんな話ことわったら後悔するだろ、絶対……」
「ちょっと、谷田! マジで大丈夫かよ」
「えっ? あ、ああ。悪い。ちょっとボーッとしてた」
ようやく顔を上げた脩平がよく焼けた顔を擦った。そして何度か息を吸い込み、小声で明之に、
「あのさ、津村。礼、の話なんだけど」
「おう。なに? 何か思いついた?」
「あの、あー、えっと。マッ……ト、プレ……い、いやいやいや、違う。違う違う」
「マ、なんだって?」
「あの、いや、マッ……マ、マッサージ! そう! マッサージしてくれよ!」
言いにくそうにしていたわりには大した話ではないことに、明之は細い眉を跳ね上げた。
「マッサージって、そんなことでいいのかよ。素人がやって身体痛めたりとかしないの?」
「だ、大丈夫大丈夫。プロの野球選手でもないんだし」
「ふうん。じゃあ張り切って揉んじゃおうかなー」
どこぞのエロオヤジのようにわきわきと両手を蠢かせる明之。それを見た脩平は若干顔を引きつらせる。その両目には後悔の二文字が浮かんでいた。
「あ、そうだ」
いいこと思いついた、と明之が両手を打った。
「なに」
「今日さあ、ばあちゃん退院するっていったじゃん。親がふたりとも迎えに行ってるんだよ。それでそのまま温泉に泊まるっていってたから」
「……から?」
「泊まってけばいいじゃん」
「誰が?」
「谷田が、俺んちに」
当然、と脩平の顔を指さした。
「えっ」
脩平の表情はあからさまに動揺している。
「嫌?」
しかし大きな澄んだ目で見上げてくる明之の顔を見てしまうと、断る理由も断る気も消え失せたらしく、
「泊まります」
「きまり」
満足そうに着替えと夕食の相談をはじめる明之に、脩平はそっとため息をついた。冷静そうに見えて、彼もまた複雑な男心をもつ男子高校生なのだ。
さっそく明之はレンタルビデオショップでDVDを2枚見繕い、着替えをとりにいったん家に戻った脩平が来るまで部屋を片付けていた。
夕食、といっても買ってきた総菜を温めるだけだが、準備をするあいだ明之の心はうきうきと弾んでいた。
新しい友人と一緒にすごす初めての夜。脩平が退屈しないよう万全の態勢で臨みたかった。
「飲み物すくないな。あとで買いに行くか」
冷蔵庫を閉めてキッチンを片付けているとき、約束の時間ちょうどに玄関のチャイムが鳴った。
インターフォンの画面を覗くと、どこか緊張した面持ちの脩平が視線をさまよわせている。
「親いないっていってんのに」
緩む口元を手で押さえながら玄関の鍵を開けた。
「いらっしゃい。入れよ」
「……お邪魔します」
まだキョロキョロと落ち着きのない脩平の足下にスリッパを出して、
「腹減ってないだろ? DVD観ない?」
「おう」
「俺の部屋こっちね」
そういって階段を上っていく明之に、脩平は黙ったままついてきた。
細い廊下の一番奥の部屋が明之の部屋だ。木製のドアには子供の頃に彫られた「Aki」の文字。
「これさ、ちょっと恥ずかしいんだよ」
「いいじゃん。俺なんて自分の部屋ができたの最近だぜ」
「谷田んち姉ちゃんたくさんっていってたもんな」
ドアノブを開いて脩平を招き入れる。部屋の中はシンプルな学習机とシングルベッドがひとつ、そして小さなローテーブルとテレビだけ。今は閉じられているクローゼットの中にいろいろなモノが詰め込まれているのは脩平には内緒だ。
「俺の部屋です」
おどけたように頭を下げると、脩平はいっそう落ち着きをなくしたようにソワソワと歩き回った。
「ちょっと飲み物とってくるから、テレビでも観てて」
「おう」
脩平を一人残してキッチンに飲み物をとりに行く。戻ってみると脩平はまだ部屋の真ん中に突っ立ったままだった。長身の男がひとり増えただけで部屋が相当狭く感じる。
「座れよ。ほら、ベッドにでも」
「いや、まだ風呂はいってないから」
「お前マジメだな」
最初から勝手にベッドに座られると、それはそれで腹も立ちそうなものだが、明之はまた脩平の人の良さに感心するばかりだった。
持ってきたアイスコーヒーをローテーブルに置いて、テレビの電源を入れる。セットしておいたDVDを再生して脩平を隣に誘った。脩平も荷物を部屋の隅に置いて、明之の横に腰掛ける。
新作のDVDは学校でも話題になっていたバトルもので、評判どおり面白かった。ふたりは途中で飲み物休憩を挟みながらも物語に没頭した。ラストの、ヒロインが助けられるシーンでは明之も隣にいる脩平にバレないよう、そっと涙を拭った。その様子を脩平もバレないようにそっと微笑ましく見ていたけれども、明之はそれには気づかなかった。
スタッフロールが流れはじめて、早送りでおまけがないか探したあと、小腹が空いたふたりは明之が用意した総菜を食べた。机の上のデジタル時計を見るともう9時半になっている。
「もうこんな時間か」
腹も膨れ大きく伸びをした明之は、何気なく脩平に声をかけた。
「よし谷田、風呂入ろう」
そのあまりに唐突な発言は、今日一日緊張しっぱなしだった脩平の思考を奪うのに充分な威力をもっていた。
「………………へ?」
呆然とした様子の脩平に、明之は繰り返す。
「いや、もう9時だから風呂に…………」
入ろう、ともう一度いいかけた唇が、やっと自分が発した言葉の意味をとらえた。
そしてその途端、猛烈な恥ずかしさに襲われて明之は力の限り手と首を振った。
「で、すよね?! ここ俺んちだし! 男ふたりで風呂入るとかできるわけないですよ! 言い間違いだから、ね! いつものクセで!」
そうだった。明之は軽いパニックになった。
ここは自分の家、いつも大勢の男たちが裸の付き合いをしている大衆浴場ではないのだ。
当然狭いし、自宅の風呂で脩平とふたりきりだと考えるだけで、言いようのない羞恥が明之を襲った。
そしてなぜかそんなときに限って、脩平の均整のとれた身体や濡れた褐色の肌が目の前にちらついて離れない。
脩平の身体などもうすっかり見慣れたものと思っていたのに、それは銭湯の中でだけだったのだと気づいてしまった。
「えっと、風呂の準備、するから、先に入れよ」
気まずい雰囲気に耐えきれず、たどたどしい口調でいいながら明之は部屋を出た。
湯を張っている間に心を落ち着かせて、脩平を先に入らせる。カラスの行水よろしく、ものの5分ほどで風呂から出てきた脩平に代わって明之も湯を浴びると、脩平は部屋でスマホを弄りながら明之が戻るのを待っていた。
「よし! じゃあさっそくマッサージしますか!」
Tシャツの袖を捲り上げ無駄に気合いを入れて、明之は脩平にベッドへ寝るよう指示した。脩平は驚いて、
「布団敷けばいいだろ」
となぜか頑なに、ベッドへ横になるのを拒否する。そういえば脩平が部屋に来てから一度もベッドに触れてないのを思い出し、ちょっと口を尖らせて、
「言っとくけど俺のベッドきれいだからな。シーツも枕カバーもさっき変えたし」
「汚いとかそういうんじゃなくて……」
「じゃあ、どういうんだよ」
脩平のあまりの拒絶ぶりに、明之はもう少しで腹を立てそうになった。それを察知したのか、脩平がようやく折れた。その表情は、嫌々というよりも、恥ずかしさを耐えているようだ。
「あーもう、匂いが……」
明之が聞いたら誤解して怒りそうな言葉をため息交じりに呟いて、大柄な脩平が横になるとかなりの狭さになるベッドに突っ伏す。それでもどさくさに紛れて枕に顔を埋めてしまうのは仕方のないところだ。
「はじめまーす」
そんな脩平の葛藤も知らず、明之は暢気に声をかけて脩平の広い背中を指圧した。
「うわ、かたい」
高校生ながら鍛え上げられた背筋はしなやかだがみっしりと引き締まっている。押すと指が跳ね返される弾力に明之は感動した。
「うわ……ガチガチ」
明之としては素直に感想をいっているだけなのだが、脩平の背中がかすかに波打った。
「あのさ、ちょっと……いや、いいけど」
脩平がなにかを呟く。しかしすぐまた枕に沈んだので、明之はマッサージを再開した。
「パンパンじゃん。溜まってんの?」
「……乳酸がって? いや、乳酸が溜まって筋肉が張るわけじゃねぇから」
「ココの筋すごい……ほら、ココ」
「……腕の筋がって? それはどうも」
「すげぇ黒い」
「……日焼けがって? 今年は雨が少なかったから外の練習が多くてさ」
「な、コレ……さわったら痛い?」
「……そこは子供んときに木から墜ちたときの古傷で今は別に…………ってよし終わり!」
突然、横たわっていた脩平が勢いよく身体を起こした。
そのままサッと立ち上がり、テーブルの向こうへ這うように移動する。その表情は鬼気迫るものがあって、移動スピードはもの凄かった。
「うわっ、びっくりした。なんだよ急に」
「もうすっげースッキリしたからマジでありがとな」
テーブルの向こうから、爽やかすぎるほどの笑顔が明之に向けられる。
「でもまだちょっとしか……」
「いやぁ津村のマッサージが上手かったからめっちゃ元気になった」
普段の脩平からは考えられないほど早口で捲し立てる。しかし、ちょっと褒められた明之は嬉しくてそれに気づかなかった。
「そう? じゃあまた今度やってやるよ」
「ああ頼むそれよりちょっと水ほしいんだけど」
「あ、飲み物切らしてるんだった。買ってくる」
立ち上がろうとする明之を脩平が手で制した。
「いや俺が行く」
「でも、」
「コンビニの場所わかるしすぐ戻るから」
「えー、悪いな。コレで好きなモン買ってきて」
テーブルの向こうの脩平へ財布を渡すと、伸びてきた手がそれを受け取った。
「津村はなに飲む」
「なにか炭酸」
「わかったちょっと飲み物選ぶのに時間かかるかもしれないけど」
「え? ああ、わかった。なるべく早く戻ってこいよ。心配だし」
「コンビニついたら連絡する」
這ったままドアへむかう脩平をさすがに不思議に思って声をかけようとした明之だったが、脩平はドアまで辿り着くと勢いよく飛び出していってしまった。
このとき脩平が、明之の家のすぐそばにある電柱の影でうずくまり、元気になってしまった別の場所を必死に宥めていたことを明之はしらない。
そして真面目な脩平は明之を心配させないように、いまコンビニ、と熱を持ったままの指先でメッセージを送った。
「……やっぱ、マッサージなんてしてもらうんじゃなかったよなぁ」
呟く声は誰に届くこともなく、冷たくなり始めた夜風に溶けていった。
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