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LIBRARIAN〔長編小説〕
7
「俺があの人に・・・ハルさんに出会ったのは高校のときで、俺が一年のときハルさんは二年だった。文化祭の実行委員で一緒になったときに初めて会って・・・あの人おかしいんだ。短気ですぐ怒るくせに、誰かがつらそうにしてるとその人よりも先に泣く。そんな優しいところを好きになった」

衛人さんの口調はどこか懐かしい思い出をいとおしむような、そんなふうだった。

きっといま彼の胸の中には、ハルさんという人に出会った頃の温かい気持ちが溢れているんだろう。

楽しくて、キラキラした思い出。

「そのときにはもう俺の恋愛対象は男だったけど、ハルさんはもちろんストレートだったから苦労したよ。毎日いろんな理由をつけて二年の教室まで通って、やっと親しくなって。それで卒業式の日に告白した」

「・・・ハル、さんは・・・そのときに受け入れてくれたんですか」

「いや。フラレた。完膚なきまでに叩きのめされた。気持ち悪い、なに考えてんだってさ。さすがにあのときは傷ついたな」

「でもそのあと付き合ったんですよね?」

俺の知ってる限りでは、少なくともこの間まで2人は恋人同士だったんだから。

俺の質問に衛人さんは細く長い溜息をついた。

「その後は俺の粘り勝ちだよ。ハルさんが進学した大学を俺も受けたんだ。最初は呆れてたけど、大学2年のとき、やっと好きになってもらえた」

そんなに長く思い続けてたのなら、叶ったときの喜びは大きかったに違いない。

嬉しそうな衛人さんの顔が目に浮かぶようだ。

「そうだったんですか・・・」

「司書になったのもそのせいかな。少しでも一緒にいたくて、学年が違っても受けれる講義だった司書課程のカリキュラムをとったんだ。俺は本があまり好きじゃないけど、ハルさんは大の本好きで、将来司書になろうとしてたから。それで、今の俺がいるってわけ」

衛人さんはハルさんが好きだという気持ちだけで大きな選択をした。

それなのに、あの夜のハルさんの言葉はなぜか俺の中でひっかかっていた。

「あの・・・そんなに好かれてたのに、なんでハルさんは別れようって言ったんでしょうか」

あの人は『無理をさせてる』と言っていた。

でも俺にしてみればそれは衛人さんが自分で選んだことだし、それに対して彼がまったく後悔をしているようには見えなかった。

なのに、なぜ。

衛人さんは俺が疑問に思っていることにも、とっくに答えを見つけていたようだった。

「俺が、気持ちをぶつける方向を間違ったんだよ」

「・・・え?」

「俺は・・・結局のところ、ハルさんの気持ちを全然わかってなかったんだ」




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