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LIBRARIAN〔長編小説〕
6
最初俺が図書館に行ったとき、アレは仕事だったから仕方がない。

喫茶店で遭遇したのもまったくの偶然。

だとしたらいったい俺は衛人さんにとってなんなんだろう。

これは俺にとってもけっこう深刻な質問だったのに、彼はなぜか俺よりももっと困惑した顔をした。

「・・・・さぁ。なんでだろう。とにかくそう思っただけで・・・よくわからない」

それははっきりとしない、曖昧な返事だった。

冷たく、低く。

本当になにも理由が思い当たらないと言っているような。

「でも、別に俺は男が好きなわけじゃないから」

パッと衛人さんの表情が笑顔に切り替わる。

「そうなんですか?」

「ああ。ただ女を恋愛対象に見ないだけで、男なら誰でもいいわけじゃない。だから叶くんも安心していいよ」

「・・・」

それは暗に『俺にそう言う意味で興味はない』と言われているようだった。

そんなことわかっていたし、実際に好きだと言われても戸惑ってしまうだろうけど、なんだか心臓の奥が鈍く疼いた。

「それでも俺と一緒にいるのが嫌だっていうなら残念だけど仕方がない。叶くんのせいじゃないよ」

違う。

そうじゃなくて、俺は。

「・・・よくわかんないです。でも、これだけは言えます。俺、衛人さんのこと嫌いになったりしてません」

自分でもいったいどうしたいのかわからない。

ただ、衛人さんともう会えなくなるなんてことだけは嫌な気がした。

「あの・・・俺、友達として衛人さんの力になりたいです。あの人のこととか、知りたいって言ったら迷惑、ですか」

せめて見守るだけでも。

たとえ力になれなくても、この人がこんな寂しそうな顔をしなくてすむのなら。

いつもみたいに微笑んでくれるなら、俺はそれでいい。

すると衛人さんはふと遠くを見つめ、そして小さく笑った。

重苦しい沈黙が俺の胸を締め付ける。

「すみませんでした・・・変なこと言って」

「・・・いや、いいんだ。ただこうやってあの人のことを誰かに話すのは初めてだから」

視線は遠くに向けられたまま、衛人さんの唇がポツポツと語り始める。




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