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健多くんシリーズ。(短編)
終わらない。
謎の電話から二日後、ついに藍崎が帰ってきた。


―――――終わらない。




『今日は俺の家でやる』

金曜日。昼休みにかかってきたそんな電話に、僕はかなりテンションが下がった。

やる?何を?もちろん勉強だろうな?

なんて決して口に出して言えないような疑問がぐるぐる頭の中を回って、午後からの授業はまったく集中できなかった。

放課後、僕は指示されたマンションに向かった。
言われたとおりにお泊まりセットを持って。

「あ〜……もうダメだ」

今日僕はアイツに抱き殺されるんだきっと……

藍崎と一晩過ごしたことなどない。そして今日は金曜日。

僕のカラダはもつのか……

鬱々とした気持ちのままチャイムを押す。

マンションはとても大きく、学生の一人暮らしにはとうてい似つかわしくない。

まぁアイツのことだから、我が儘に育てられた坊ちゃんってとこだろう。

「おお。入れ」

しばらくしてドアが開き、出てきた藍崎の姿に僕は驚いた。

ボサボサの頭、首のまわりが伸びきったヨレヨレのスウェット。目は虚ろでいつもの無駄に放出する生気がまったく感じられない。

「どうしたんだよその格好!具合でも悪いのか?」

「あ?………ああ、だいたい締切前はいつもこんな感じだから気にすんな」

「締切?」

「言ってなかったか……俺、大学行きながら小説書いてんだよ」

……初耳だ。

だからコイツは就職探す必要がなかったのか。

「適当に座れよ。紅茶でいいか?」

12畳はあろうかというリビングに通され、適当にと言われたので部屋のド真ん中にある黒い革張りのソファに座った。

慣れた手つきで紅茶葉を蒸らす藍崎と、部屋全体を見まわして不思議な気分になる。

部屋はほとんどの壁が本棚になっており、夥しい数の本が並べられている。その中で優雅に紅茶を入れる若者。

まるでドラマの中のような光景だが、その若者の姿はヨレヨレだ。

「ほらよ。熱いからな」
白い高そうなカップに赤みがかった紅茶が映える。

「なんかイメージ違う。小説家っていったらコーヒー中毒って感じ」

「コーヒーは昔から飲めない。あの匂いだけで頭痛がしてくる」

藍崎は向かい側のソファに腰掛け、深いため息をついた。

「………疲れてるんじゃないの?僕のことなら気にしなくても今日は帰るし……」

本当の親切心で言うと、背もたれにもたれかかったままの姿勢で視線だけを投げられた。

「いいから。勉強始めろよ」

原稿はさっき上がったから、と眉間にシワを寄せたまま言う。

そこまで言われればもう従うしかないので、僕は勉強を始めた。

藍崎が不在の間に済ませておいたあの小テストの山を渡し、採点する間に今日の課題を済ませる。

途中で黙々と採点をする藍崎に視線を向けると、まだ眉間のシワはとれておらず、眠いのか機嫌が悪いのかよくわからない顔をしていた。

一時間ほどして、僕の課題と採点が終了した。

「思ったよりできてんな………まあ俺がいないからいろいろ調べながらやったんだろ」

「うっ」

図星だ。教科書とか人に訊いたりとか

しかしそれについては特に怒られなかった

それから解説をして、九時頃にデリバリーのピザをとった。

ピザが届くまでの時間、向かい合わせに座る僕と藍崎の間に微妙な空気が流れる。

久しぶりな感じがして、気まずい。

(あ〜……なんか、話題…)

「あのさ」

「あ。そうだ」

出鼻を挫かれた。

「…………なに」

「土産あんだよ、鹿児島の」

そう言って藍崎が持ってきたのは細長い小さな袋。

「………ナニこれ」

開けてみると、中には鹿児島名産黒豚の着ぐるみを着た、ご当地限定○ティちゃんのストラップが入っていた。

「カワイイだろ」

「なんでこんなもの……」

「ちなみにお揃い」

嫌な予感がしたが案の定、藍崎のケータイにぷらぷらと黒豚○ティちゃんがぶら下がっている。

斬新な嫌がらせだ。

「これ、猫なのか豚なのかはっきりしろよ」

「お前なあ。世界の○ッキーマウスだって家で犬飼ってんだぞ。猫が豚かぶるくらいなんだ」

「そういやこのネコも家で猫飼ってんだったな……」

そんな不毛な会話をしていると、ピザが届いた。
あれやこれや話ながらピザを平らげてしまうと、藍崎は僕に風呂を勧めてきた。

「絶対入ってくるなよ!?」

にやにやしながら見ている藍崎にクッションを投げつけ、バスルームに飛び込む。

この部屋は何から何まで上等で、バスルームにもしっかりした鍵がついているのでとりあえずは安心して入浴することができた。





風呂から上がると、藍崎の姿がない。

「あれ………」

向こうからは見えなかったが、ソファに沈んでいたらしい。長い手足を持て余すようにはみ出して、苦悶の表情を浮かべながら寝息をたてていた。

「やっぱ疲れてんじゃん」

このまま寝かせておいたら風邪をひくかもしれない。それはなんとなく後味が悪い気がした。

「おい、起きろよ」

「…………ん」

もぞもぞとでかい体を捩り、薄く目を開けた。

「風呂入って寝ろよ。あと僕はどこで寝ればいい?」

「…………あっち、寝室」

指をさされた扉の向こうが寝室らしい。

同じベッドか……まぁ、これだけ疲れていれば、今日の僕の安全は保証されたようなものだ。

「先に寝てるからな」

藍崎がひらひらと手を振って了承したのわ確認して寝室に向かった。

緊張が一気にとけて、その夜は思ったより早く寝付くことができた。






ぎしっ。

(…………?)

深夜。

僕はベッドが軋む音で目が覚めた。

一瞬、自分が今どこにいるのかわからなかったが、しばらくしてここが藍崎の家なのだと気づく。

(あぁ……風呂入ったから寝るのか……)

きっとあれからしばらくして目を覚ました藍崎がベッドで寝直そうとしているのだろう。

僕を起こさないためか、普段はとても感じられないゆっくりとした動作に少しおかしくなる。

かすかに漂う石鹸の香りが心地良く、僕はまた眠りの世界に旅立とうとしたのだが。

ぎしっ。

(!?)

びっくりするほど耳の近くでベッドが沈む感じがして、思わず声を上げそうになった。

(な、何?)

心臓がばくばくと跳ねる。

怖くなって目を開けることもできず、とりあえず寝たフリをしてみることにした。

しかし、もっと驚くべきことが起こった。

ぎゅっと結ばれた唇に、しっとりとした固い感触を感じたのだ。

(なに、して………!)

唇が何かで触られてる。
その感触はたぶん、指。

ゆっくりと、その指が僕の唇を擦っている。

(んっ………!)

暗闇の中の慣れない刺激に、触られた唇がびりびりと痺れ始めた。

ゆっくりと左右に擦り、離れたかと思うと今度は右の耳朶に移動した。

こっちも優しくくすぐられ思わず声が漏れそうになる。

こんなに優しい触れ方を僕は知らない。

藍崎はいつも急激に僕を高めて、激しく抱くから。

(やだ!………なんか調子、くるう……)

飛び起きてしまえばいいのかもしれない。

背筋を這い上がってきたこの痺れを振り払って、嫌だ、やめろ、と抵抗して枕の一つでも投げつけてやればいいのかもしれない。

でも、できない。

こんなに心地いい感触を、僕は振り払うことができない………

しかしそんなことを考えているうちに、今度こそ声を上げずにいられない事態が起こってしまった。

「……………んっ?んうっ!!」

熱いものが僕の唇を覆ったのだ。

「んっ!ふうっ……んふっ!」

「………………はっ、やっぱり起きてたか」

暗闇から笑い声。

それも息がかかるほど近くで。

その様子から、先程唇を覆ったのが藍崎の唇だと知る。

「なに、すんだっ!」

藍崎の手は暴れる僕の両手を軽々と頭上で拘束する。

はっとして目を開けると藍崎の欲情した瞳が月明かりに光り、いままでに感じたことのない種類の恥ずかしさが沸き起こった。

それを悟られたくなくて首を振って視線から逃れようとする。

しかし、それは許されなかった。

大きな手に顎を掴まれ、また口づけられる。

「ぁっ………ん、ふっ、んふっ………!」

息ができない。

貪られる、という表現がぴったりの荒々しい口づけ。

苦しくて自由になる両足で藍崎の太もものあたりをがむしゃらに蹴りまくると、やっと唇が解放された。

「はっ、はっ……はぁ」

「お前とのキスは今日が初めてだな」

お前との…………

僕の中で何かがチリッと悲鳴を上げた。

「………………けんな」

「ん?」

瞬時に頭に血が上る。

「ふざけんなよ!僕は、僕はっ」

「ああ………もしかして初めて?」

「黙れよ!」

図星だ。たとえ混乱して頭の中がぐちゃぐちゃだったとしても、これは確かに生まれて初めてのキスだった。

だからきっと、こんなにイライラするんだ。

そんな僕の気持ちも知らず、藍崎は笑って言う。

「なら覚えておけ健多。俺がお前の……最初で最後のキスの相手だ」

「なに………………んうっ!」

また深い口づけ。

苦しくて隙間から息を吸おうとしたところに、今度は濡れた何かが入ってきた。

もしかして舌!?

「んんっ!あっ、ん、んやっ!んふっ!」

くちゅくちゅと口腔をまさぐる藍崎の舌。

歯列をなぞられ、奥の上顎をくすぐられる。

息苦しさに暴れまわる僕の舌を軽く噛まれ、引っ張られる。

頭の中が、口の中が、体中が火傷しそうだ。

全身に激しく血が回り顔が真っ赤になっていくのがわかる。

ぴちゃぴちゃと口を犯す水音に心臓が破裂しそうだった。

「健多」

吐息混じりの声。

「ひんっ」

いつの間にかパジャマの中に入り込んだ指が、悔しくも勃ち上がった胸の突起を摘んだ。

くりくりとそこを弄られればすっかり敏感になったカラダに火がつく。

「ここも勃ってる」

「ちがぁ、う、あっ、だめっ……!」

首筋を舐められ、力が抜ける。

藍崎が口で僕のカラダに触れるのは今日が初めてで、そのことに自分でも異常に興奮しているのがわかる。

唇が、首筋から胸へと降りていく。

鎖骨を吸い上げられ、ついに僕の尖った乳首にたどり着いた。

「んっ!あっ、だめっ、やっ!」

真っ赤に色づいたそこを交互に舌がなぶる。

乳輪をくすぐられたかと思うと、下から上へとしつこく舌で跳ね上げられる。

「あうっ!」

カリッと音がしそうなほど硬くなった乳首を甘噛みされると、びくびくと腰が跳ねてしまう。

「やめてっ………ねえ、やめ、てっ……!」

譫言のように何度も繰り返す。

男なのにそんなところでこれほど感じる恥ずかしさと、あらがいきれない気持ちよさに、触られていないペニスさえもぐしょぐしょだった。

ちゅ、ちゅ、と両方の乳首を吸い上げながら藍崎が言う。

「こんなので降参するなよ?もっと気持ちいいところ、舐めてやってないだろ……?」

「やっ!?」

ズボンが一気に脱がされ、現れた僕のぐちゃぐちゃのペニスがしっかりと握られた。

「ここを誰かに舐められるのも初めてだろ?」

「やめてっ!いや、口はいやぁっ!」

必死に抵抗するが藍崎の手は緩まない。

それどころか、空いている手で僕の左足首を掴むと、股間をぐっと割り開いた。

「お願いっ………だめっ………」

僕の懇願など聞きもせず、藍崎は上目遣いに僕を見ながら、まるで見せつけるようにゆっくりとその舌を先端に近づけていく。

ぴちゃっ。

「ひあああっ!!」

瞬間、走った物凄い快楽に僕は悲鳴を上げた。

藍崎の指は茎を扱き始め、舌が敏感な窪みやくびれをグリグリと抉る。

「あんっあん!ああっ、ああんっ!」

しばらく先端を楽しまれた後、今度は両手で脚を左右に開かれる。

そして、ピンといやらしく天を向くペニスを口の奥まで入れ、ジュルジュルと音をたてながら唇で上下に扱きあげられた。藍崎の口から覗く僕のペニスは溢れ出る先走りと唾液で月明かりにヌラヌラと光り、死にたくなるほど卑猥だった。

たまに尿道口をきつく吸い上げられ、ブルブルと腿が震える。

「ひぅぅうっ……!あっ………、やぁっん……!」

あと少しで射精してしまう、というところで唇が離れた。

「………今日はここじゃイかせてやらねえよ」

にやり、と先走りに濡れた唇が笑う。

そしてまた股間に藍崎の顔が沈んだ。

ジュブジュブと出し入れされ、性器から生まれるとてつもない快感に、僕はただ高く嬌声を上げ続けた………







「あっ……あんっ!あっ…ああっ……!」

ギシギシと煩いスプリングの音。

貫かれてからどれぼどの時間が経っただろう。

藍崎を受け入れている僕の穴はもうドロドロで、先ほどから何度も注がれた藍崎の精液が突かれるたびに溢れ出す。

いつもは一回出せば満足するのに、今日はもう数え切れないほど注がれている。

「はんっあんっあんっ!も、もぉ………ああっ!」

今はうつ伏せにされ、獣の態勢で犯されている。

僕の方は挿れられてから一度も出させてはもらえず、ずっと意地悪くペニスの根元を握られていた。

時折弄られる乳首と、ぐちゃぐちゃにしごかれる性器への刺激で意識が飛びそうになると、また激しく突かれる。

「ひっ!んんっ!ああんっ!」

腰骨を掴まれ前後に揺さぶられる。

あれだけ出したにも関わらず藍崎のモノは一向に萎えない。

硬い切っ先が僕の前立腺だけを狙って突き上げてくる。

僕を犯しながら藍崎は背中を舐める。

熱い唇に肩甲骨を吸われ、また痺れが走った。

何度も僕の中へ放つ瞬間の掠れた声と、体中を舐め回される音。

それがいつもとは違った快感を呼ぶ。

射精できない焦れったさと、怖いくらいの快楽と、普段とは違う藍崎に対する戸惑いとがない交ぜになって、僕のペニスはさらに熱くなっていく。

「あ、ああっ……なる、ひとっ………出、したい!」

「待てよ。もっと気持ちよくなりたいだろ……?」

背後から囁かれ、耳朶を舐められる。

「ふあっ……も、もういい、からぁっ……!」

僕の言葉などお構いなしに藍崎は茎を扱き上げ、濡れた先端に指を這わせてくる。

ぱくぱくと息づく尿道口を弄られ、硬いモノを呑みこんだ後ろが激しく収縮した。

「んっ……健多、ここ、好きか……?」

クリュクリュクリュクリュ

「ぁああんっ!やっやめてぇっ……!」

締め付ければ締め付けるほど内壁が藍崎の形を覚えていく。

耳の中に舌を挿し入れられ、乳首を転がされ、赤く顔を出した先端を弄られる。

「ほら、ここ……」

指はさらに蜜を溢れさせる穴を擦る。

「ひんっ!あ、あんっ、ああっ!す、きっ……すきぃ……っ!」

「気持ちいい?」

「っき、きもちっ、いいよぅ……っ!」

「やらしー……」

「ぁああんっ!」

藍崎のペニスが前立腺を突き上げる。硬いしこりがグリグリと擦られた。

がつがつと腰を入れられ、首を掴まれて無理やり後ろを向かされる。

そして唇を奪われた。

ぎゅうっと舌が吸われ息ができない。

下半身が痺れる。

「んっ、ひぅんぅぅっ……!!」

咥内を埋め尽くされたまま、僕は声にならない悲鳴を上げて激しく射精した。

そしてもう受け止めきれない藍崎の白濁がとろけた穴から流れ出し、腿を伝っていくのを感じる。

それからは僕が、もう何も出せなくなるほどイかされた………







「………なんで今日は、あんなに……」

僕は行為の間ずっと気になっていたことを訊いてみた。

「あんなに?」

隣に横たわる藍崎がこちらを向く。

「い、いつもは一回なのに……」

ごにょごにょと歯切れの悪い口調になった。

「……ああ。まあ俺も若いから。あれくらいは出る」

「言い方が下品!」

「お前が訊いてきたんだろ」

呆れたように笑われた。
「………溜まってたんだよ。一週間、お前でヌくこともできなくて」

さすがに疲れたのか、その声は小さい。

なんか今、ものすごく恥ずかしいことを言われた気がしたが、あえて無視することにした。

それにしても体が痛い。明日は起きれるだろうか………

「健多」

「え?」

肩に手が回され、ぐっと引き寄せられた。

「おい!やめろよっ」

藍崎は笑うだけで放してくれない。

「疲れてんだ……抱き枕になれ」

「自業自得だろっ」

しかし僕の非難に答えたのは、藍崎のかすかな寝息だった。

僕の体も疲労を訴えていて、引き剥がす力もない。やがて眠りがやってきた。

深い眠りの途中、僕はあることに気がついた。

そういえば、一週間も彼女と旅行していてなぜ溜まっていたのか。

しかし、自分なりの答えが出るまで僕の意識は保たず、隣からかすかに感じる藍崎の熱に誘われるように僕は意識を手放したのだった。



Fin.




終わらない行為。
終わらない疑問。
終わらない、戸惑い。


続く。

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