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健多くんシリーズ。(短編)
抑えきれない。
「ぃッ・・・た」

無様に転がった僕の足首を男が撫で上げた。

「教えてあげるよ。キミも・・・キミの彼氏も助かる方法」

クスクスと笑いながら男の指が制服のズボンの裾に入り込む。

ソックスを下ろされ素肌に感じる熱い感触に鳥肌がたった。

「や・・・やだ・・・!」

慌てて足を引き、男の手から逃れる。

「簡単なことだ。キミがちょっとその服を脱いで俺に撮られてくれればいいんだよ。ちゃんと顔は隠すし、世間にはキミだってバレないから」

冗談じゃない。

いくら顔を隠したってバレないはずがない。

それよりなにより、鳴人以外に肌を晒すなんて絶対に嫌だ。

嫌だ・・・・死んでも、絶対に。

「そんなことしない・・・!」

震える声で男から離れようとするとギリ、と今度は力強く足首を握りしめられる。

「今すぐ逃げたっていいんだよ?そのときはキミの大事な彼氏が二度と世間を堂々と歩くことなんてできなくなるけど」

あの写真を世間が見たらどう思うだろうね?と男は楽しそうに笑う。

目の前が、真っ暗になった。

アレが世間に出回ったら。そう考えただけでも背筋が震える。

僕は未成年で、しかも男で。

周りには隠してることばっかりで。

鳴人。

僕は・・・・

「・・・・・った」

「なぁに?」

絶対聞こえてるはずなのに、男はワザとらしく僕の口元に耳を寄せる。

こんなことしたって知ったら絶対鳴人に嫌われる。

鳴人ならきっと、何をいわれても言うことを聞くなっていうはずだから。

でも僕は、鳴人を守りたい。

たとえ嫌われても。

「・・・わかった、から。鳴人にはなにも・・・しないで・・・ください」

僕の言葉を聞いて満足そうに笑う男の顔に、吐き気がして仕方がなかった。







チャララララララララ〜

もう何度目かわからない着信音。

「ほら、また彼氏から電話だよ」

男が僕の耳元に置いていたケータイを開き、電源ボタンを押す。

・・・また希望が断たれた。

「・・・ぁ・・・や、だ・・・!」

縛られた手首を捩りながら、僕はただ強制的に与えられる快楽に耐えていた。

あのあと乗せられたのは古いパイプベッド。

撮影用とわかるほど明らかにわざとらしく破られたシーツの上で、両手を頭上で縛られてズボンと下着を剥かれた。

ほとんどのボタンが弾け飛んだシャツを左右に開かれて胸の飾りを弄られる。

感じたくない。

実際、普段いくら感じる場所を弄られたからといって僕は恐怖と嫌悪で眩暈が止まらなかった。

それでも男の指は僕の突起を充分に勃たせると、左右ひとつずつフィルムにおさめていく。

羞恥にカッと首筋が燃えて息ができない。

嫌だ。怖い。助けて。

こうして見ず知らずの男に縛られるのは二度目だ。

一度目は鳴人。

あのときも確かに死ぬほど嫌で、怖くて。

置かれた立場は変わらないはずなのに、鳴人のときとは何かが違った。

目・・・そう、目が。

あのときの鳴人の目は明らかに僕を見て興奮していて、まるで獣のようだった。

でもいま僕を見ている目は、本当に僕を『玩具』として見ている目。

ただ自分の興味を満たすためだけのそんな『玩具』。

少なくとも、鳴人のように僕を『人』として見てはいなかった。

「く・・・」

男は充分に尖った突起を撮ると、今度は脇腹を撫でて僕のペニスを摘んだ。

「あらら。全然きもちよくない?」

男の愛撫にまったく快感を拾わない僕のカラダは完全に強張って、男の証すら萎えたままだった。

「きもちよくなんか・・・」

この手は僕を感じさせる気なんかない。

ただ写真のモデルになる『興奮したカラダ』が欲しいだけだ。

「へぇ・・・あの夜はあれだけエッチなカラダだったのに。木頭ショウスケってそんなにウマいの?」

面白そうに言う男。

「教えてほしいなぁ・・・キミがいつもどんなふうに可愛がられてるのか・・・ココも、どうやって触られてるの?」

「・・・ッ!」

柔らかいソコをつつかれ思わず腰がピクリと震えた。

思い出してしまったのだ。いつものことを。

鳴人にペニスを苛められ、泣き叫ぶほどのあの快楽を。

「・・・あれ?ちょっと勃ったね」

クス、と笑いながらまたシャッターがきられる。

「そんなにすごいんだ。思いだしただけで勃起しちゃうくらい」

パシ、パシ、と乾いた音と降り注ぐ光。

男の顔を見ないように目を瞑ればあの夜のことを鮮明に思い出してしまう。

考えないようにすればするほど。

「ふッ・・・ぁ・・・・んッ」

撮影する合間にゆるゆるとペニスを扱かれ、小さな火種が燃え上がっていく。

腰骨のあたりがジンと痺れ、快楽が嫌悪感を押し出し始めた。

「やだッ、やだぁッ!」

めちゃくちゃにカラダを捩って男の手から逃れようとする。

でも縛られたこの状態では黙って嬲られるしかなかった。

「濡れてきた。キミのって高校生にしては可愛い形してるよね。もしかして女の子に使ったことない?今度いいコ紹介してあげようか」

その言葉は僕の怒りを煽った。

そんなことコイツに言われたくない。

お前には関係ない。

僕には・・・鳴人が。

「なる、ひとぉ・・・!」

男に聞こえないくらい小さな声で呼んでみる。

こんな誰も知らないような場所に来るはずがない。そんなのわかってるのに。

クチュクチュと濡れた音が高い天井に吸い込まれて消える。

今や僕のモノは意志とは関係なく硬く勃ち上がっていた。

裏筋をくすぐるように撫でられ堪えられない射精感に膝が伸びきると、男は最後の仕上げとばかりに僕のモノを扱き上げる手の速度が上げた。

「一回イってみようか。この間も思ったけど、キミがイクときの顔ってすごくエロいんだよね」

パシ。

「やぁ・・・や、あ、あん、ぃあッ・・・!!」

ビクッ!!

目を開けていられないほどの閃光の中、僕は耐えきれずに男の手の中に精液を放ってしまった。

瞼の裏に残る光がチカチカと点滅して、歯を食いしばりながら声を上げないように息を吐きだす。

「んく・・・ん・・・・ッ」

イカされてしまった・・・・・。

絶望と悲しみとあまりの悔しさについに涙が一粒こぼれおちた。

感じたくなかった。

鳴人以外の手に乱れてしまった自分が死ぬほど嫌だ。

ごめんなさい。ごめんなさい、鳴人。

「ふッ・・・・うぅ・・・」

声を殺して涙を流す僕のことなど気にならないのか、男はお腹に白く広がった精液を撮っていた。

「いやぁ、やっぱり最高だよ。俺の目に狂いはなかった。キミは高く売れる」

・・・売れる?

「本当はこういうの好きなんじゃないの?この間だって外でヤってたんだし」

「違う!」

ギリ、と布が手首に食い込む。

僕の怒りに満ちた顔を男はまた一枚撮った。

「ふぅん、どうだかねぇ。ま、これだけ感じやすいならなにされても気持ちいいんだろうけど」

クチュ、と力をなくした性器に僕が出した精液を絡め、それも写す。

「本当は今日はここまでにしてあげようと思ったけど・・・キミもその気みたいだし次もいっとく?」

「つ、ぎ」

嫌な予感が頭をよぎる。

今まで意図して考えないようにしていたのに、男の声は容赦なく僕を地獄へ突き落した。

「そ。ココにオモチャ咥えて撮ろうか」

「ひっ!?」

高そうなカメラを慎重にベッドに置き、男の手が僕の足首を掴む。

そのまま屈伸をするように膝を曲げられ、男の目の前に恥ずかしい場所を晒してしまう。

あまりの仕打ちにジタバタと暴れるが、僕の何倍も力強い腕はまったく動かない。

「へー。さすがにココは使い込んでるみたいだね。エッチな色」

「ひッ・・・や、だ・・・みるなッ・・・!」

「エッチしまくりなのに処女みたいに薄い色ってのもいいけど、そんなの映像とかマンガの中の話だよねぇ。俺はこっちのほうが普通にエロくて好きかなぁ」

クニクニと入口を押すように揉まれ、ソコに指が入ってしまうのではないかという不安が僕を押し潰す。

「ここにモノ挿れるの慣れてるみたいだから、一番太いのでいい?」

そう言って男が僕の目の前に差し出したのは見たこともないような大きさのピンクのバイブだった。

「いやだ・・・そんなの、だめ・・・」

「またまたぁ。これくらい平気だよね?」

カチッ、ウィンウィンウィンウィン

男の手の中でグロテスクな凶器が頭を振る。

そして男によってローションをかけられ、ゆっくりと僕の下半身に。

「ひぃッ!?」

グチュグチュと蕾にローションをまとった先端が擦りつけられる水音が僕の耳を打った。

人ではありえない硬く冷たい感触に僕は腰を捩じらせて抵抗する。

怖い。

気持ち悪い。

助けて。助けて。助けて。

グチ、と閉じた入口が押し開かれ・・・
僕は力の限り泣き叫んだ。

「ぁあ、ひ、ああッ・・・なる、ひとッ・・・たすけ、て・・・なるひとぉッ!!」

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