健多くんシリーズ。(短編)
触れられない。
「脚きちんと広げてろよ。一回でも離したらイかせないからな」
「ぁあっ・・・、ぁ、はぁんっ・・・!」
仰向けに寝転ばされ、自分で膝を支えてろと言われる。
鳴人にむかって開かれた僕の恥ずかしところには、長い指が一本、抜き差しされていた。
クチュ、クチュ、とローションの滑りをかりて奥まで入り込んでくる指先は、時折僕の感じるしこりを押し潰す。
それだけで腰がビクンと跳ねて、耐えられないほどの刺激に涙が溢れる。
イきたい。
さっきからずっとこうやって苛められて、今にも爆発しそうな僕の性器はトロトロと僕の腹に透明な水たまりを作っていた。
「もぉ、やだっ・・・ゆびやめて・・・!」
感じすぎて情けなくゆるんだ僕の顔を見下ろす鳴人の目は楽しそうに細められている。
「なんでやめてほしいんだ?ココは嬉しいって言ってるぞ」
ココっていうのはきっと鳴人の指を呑み込んでる場所。
確かにソコは僕の意思とは関係なく、抜き差しされる指をおいしそうに締め付けていた。
「だ、って・・・ん、ぁっ、ひゃんっ!」
突然指を二本に増やされて、掴んでいた脚が跳ねあがる。
「ココきもちいいだろ」
入り込んだ指が僕のペニスの裏側、一番感じる前立腺を挟んで揺さぶる。
コリコリとしたその場所を弄られると、僕は声さえあげることができずにただ甲高い悲鳴を吐きだすことしかできない。
「ひぃっ、ぁ、いやぁああぁっ!!」
宙を蹴る爪先がきゅっと丸まって、自然と脚を開いてしまう。
鳴人の指がソコだけを責め始めると、僕は涎を垂らして泣きじゃくった。
「っめ・・・やめてぇ・・・らめッ・・・きもちい・・・そこ、きもちいっ・・・!!」
男の証には一度も触られていないのに、ソコだけで何度も絶頂がやってくる。
脳味噌がドロドロに溶けていきそうな快感に、僕のカラダは何度も強く痙攣して、射精ともいえない勢いで精液を垂れ流し続けた。
しこりが弄られるたびに、気持ちよすぎてカラダがバラバラになりそうだ。
ゾクゾクと全身に走る痺れに朦朧としながら、僕は脚を開いている自分の手を離してしまいそうになった。
触りたい。
こんなグズグズした射精じゃなくて、男の証を扱いて思いっきりイきたい。
そんなあたりまえの欲求さえ鳴人の視線に奪われ、僕は逆らうことのできない自分のカラダを呪った。
「ぁっ・・・るひとっ・・・イきたいよぉ・・・!」
指を呑み込んだ穴にきゅっと力を入れながら懇願すると、鳴人が小さく笑う。
「なに言ってんだ、さっきからイきっぱなしのくせに」
「ちがぅっ・・・っも、うしろだけ、やだっ、ひっ!」
ビクッ、ビクンッ!
またトロッと精液が流れ、僕は深い息を吐いて下半身を侵す快感をやり過ごそうとする。
「ひ、ぁああぁぁぁッ・・・!!」
か細い悲鳴は自分でも、まるで溢れてこぼれていく快感を一滴残らず味わっているようにも聞こえた。
何度目かわからないほどの絶頂の後やっと指が抜かれて、膝を掴んでいた手を離すことを許される。
もう起き上がる力もなくて、僕は床にだらんと伸びたまま、まだカラダ中に燻る鈍い快感に小さく声を上げていた。
小さく息を吐きながら顔を上げると、鳴人は自分の下着の中から硬く滾った性器を取り出していた。
何度アレを中に入れられても、こうして目の当たりにすると絶対に入るわけがないなんて思ってしまう。
特に今日の鳴人のモノは蜜がこぼれそうなほど怒張していて、鳴人がどれほど我慢していたかがわかる。
巨大な熱を挿れられる恐怖と、それを上回る期待と悦び。
てっきりもう貫かれると思っていたら、鳴人は僕の上で自分のモノを扱き始めた。
「鳴人・・・?」
いつもはそんな姿見せないのに、歯をくいしばって熱い息を吐きながらペニスを慰めている。
「・・・っ、今日は、一回じゃ無理だ。壊されたくなかったら、黙ってろ」
額に汗を浮かべながら、鳴人は言う。
クチュクチュという水音と、僕を見下ろす鳴人の快感に耐える顔。
ひそめられた眉が僕を見て興奮しているせいだとわかり、思わず股間が疼いた。
ぽた、と僕の肌に落ちる汗。ゾクゾクと走る興奮に我慢ができなくて、ついに僕は自分のペニスに手を伸ばした。
それを見た鳴人が僕の手を掴む。
「ぁっ!」
「・・・おい、俺をオカズにしてオナる気か?」
唇の端を歪めて笑う。
図星をさされて、僕は慌てて顔を背けた。
「自分で触るな。指くわえて俺のイく顔でも見てろ」
そう言うと自分のモノをグチュグチュといっそう激しく扱く。
震える肩、荒い息遣い、滴る汗。
「・・・ッ、・・・ぁ!」
やがて鳴人の背が強張り、僕の腹に白い迸りが勢いよく散った。
一瞬の緊張と、弛緩。
床に手をついて息を吐きながら汗を拭う仕草にすら僕は興奮して喉を鳴らす。
男のイく姿に欲情するなんて、僕はおかしいんだろうか。
「・・・物欲しそうな顔して」
鳴人の濡れた手が僕の顎を掴んで上向かせた。
苦しくて息をついた瞬間、鳴人が僕の腰を抱え上げ、熱いモノで一気に貫いた。
「ひっ、ぁああああっ・・・!!」
予期せぬ挿入にカラダが強張る。
ついさっき出したばかりだというのに、鳴人のモノは全然萎えていなかった。
ゴリゴリと硬く張り出した先端で感じるところを容赦なく抉られ、指の先まで快感が走る。
「ぁ、ああ、ああっ、あんっ、あんっ・・・!」
さんざん焦らされたカラダは突かれる悦びに震え、先端からプルプルと蜜を飛ばす。
「クソ、一回出しただけじゃ足りなかったか・・・」
鳴人の手が僕の腰をぐっと掴み、激しく打ち付けてくるたびに泣きそうなほどの愉悦に僕は叫ぶ。
力の入らない腕を鳴人の背に回し、激しすぎる突き上げに耐えるように歯を食いしばった。
「ぁああっ、ひ、ぃやああっ、あ、あーーーッ!!」
ガクガクと揺さぶられ、身体の内側から押し出されるような感覚に頭がスパークした。
「あっ、ああ、あ、なるひとっ、つよ、いっ・・・つよいよッ・・・!!」
しがみつくだけで精一杯で、マットに擦れる背中が痛い。
鳴人は荒い息を吐きながら僕の首筋に顔を埋めた。
「ッ、壊れるなよ、健多・・・」
「あ、ぁあーッ・・・!ひ、ぃやあッ!!」
ビクンッ!
ひときわ大きくカラダが痙攣して、声もなく蜜を飛ばす。
同時にお腹の奥で熱い塊が弾け、内側が濡らされる感覚に僕は涙を流した。
鳴人の腕は痛いくらいに僕の腰を押さえつけて離さない。
「・・・・ッく!」
僕の中にすべてを注ぎこむと、ゆっくりと満足げに深い息を吐いた。
それはまるで獲物を味わいつくした肉食獣のような吐息で、僕は喰らいつくされた悦びを感じている自分が心のどこかにいることを感じずにはいられなかった。
「・・・・痛い」
関節も背中もナカも痛い。全部が痛い。
カラダを綺麗にしてベッドに横たわり呟く僕の頭を鳴人はぐしゃっと掻き混ぜた。
「お前が煽るからだろうが」
「・・・・冗談って言った」
ほんの悪戯のつもりだったのに、こんなことになるくらいならやめればよかった。
「・・・冗談でもヤバいんだよ。次は覚悟してやるんだな」
クスクス笑いながら毛先を弄ぶ鳴人の手から逃れ、ぷいと背中を向ける。
「おい、健多」
「・・・・」
絶対許さないからな。この仕返しはいつかしてやる。
そう心に誓ってタオルケットの中に顔を埋める。
「お前、そんな態度とってもいいと思ってるのか?」
それでも何も言わずにいると、鳴人は聞えよがしに大きなため息をついた。
「ああ、そうか。俺みたいな悪趣味な男は好きじゃないんだったな」
その言葉に僕はチラッと後ろを振り向いた。
鳴人はこっちを見てニヤニヤ笑ってる。
「どうした?そうなんだろ」
「・・・・・・・・・嘘だもん」
好きじゃないなんて、嘘。
じゃなきゃこんなことさせるわけない。
「そうか、俺に嘘ついたのか。いい度胸だな」
「・・・・自分だって今日は嘘ばっかりのくせに」
そもそもこんなことになったのは全部鳴人のせいだし。
そう目で訴えても鳴人はただ笑うだけ。
「楽しかっただろ、ドキドキして」
「楽しければなんでもいいわけ」
楽しいどころかずっと冷や汗かきっぱなしだったんですけど。
「・・・俺の嘘は全部お前のためだからいいんだよ」
長い指がゆっくりと僕の頭を撫でる。
その感触がくすぐったくて、僕はまた顔を埋めた。
「・・・馬鹿じゃないの」
「馬鹿でけっこう・・・・・ああ、そうだ。今度俺を誘惑するときは冗談抜きでやれよ」
「・・・・・・・・・・・・・この、バカ!アホ!変態大魔王!」
「・・・お前、その変態大魔王って定着なわけ」
僕たちの夜はこうして更けていく。
きっとこうやってこれからも振り回されるんだろう。
それでもいいかも、なんて思ってしまう僕は、とっくにこの変態大魔王に骨の髄まで侵食されてるに違いない。
でもとりあえず、ああいう嘘だけは心臓に悪いから勘弁してほしい。
触れられないカラダ。
触れられない痛み。
触れられない、もどかしさ。
Fin.
続く。
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