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05月10日
「優一、新しい学校の方はどうだ」
「別に」
 朝刊をポストから取り出して父さんに渡す。
 真っ白い大きなマグカップに、なみなみと入っている黒い飲み物を、父さんは少しずつ口をつけては俺から受け取った新聞のページを進める。テレビ版の面に、トーストのマーガリンが少しくっついた。じんわりと油が紙に染み込む。
 父さんは俺の一言に差ほど気にした様子もなく、最後のひとくちのトーストを手に取った。ぽろぽろこぼれるパンの耳のカスが、新聞の上に落ちている。
「そうか」
 俺はコップの中の牛乳を飲み干した。










「ねぇねぇゆういちくん、一緒に遊びに行こうよ!」
 転校してから一週間が過ぎた。
 最初は先生を苛めた悪いヤツだった俺は、どうやら一週間も経てば物珍しい何かになったみたいだ。
 黄色い花柄のワンピースに長い髪の毛を垂らしている女の子が。赤いTシャツに紺の半ズボンの、大きなゴムボールを持っている男の子を連れて俺に話しかける。
 俺は窓の外に向けていた視線を一瞬、男の子の赤いTシャツのロゴにやり、机にしまっていた分厚い小説を取り出して。はさんであったしおりのところから目を通す。
 女の子と男の子はその一連の動作を見ている。
 二人は無言で本を読み進める俺に、どうしていいのか分からないのか、なにかを言おうと口を開閉している。もじもじと指先を動かしながら、女の子は口をつぐんだ。
「俺、この本読むからいいよ」
 本から目を離さずに呟くと、二人は一瞬顔を見合わせて、なにかを言い残し、教室を出て行った。
 小説にしおりを挟んで、机に入れた。

 窓の外を見れば、あの女の子と男の子がいた。二人の周りにはクラスメート達がいて、男の子の持っていたボールが、左右に行ったり来たりしている。ドッジボールをしているのか、白いラインが地面に書かれている中に収まって。笑い声と、風の音が耳を通過した。
 静かな教室にまで、それは届く。
 そう懐かしくはないはずの思い出が、今とゆっくりと重なる気がした。
「……次はいつだろうな」
 いつでも別れは悲しいんだ。

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あきゅろす。
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