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ひぐらしハルヒの憂鬱な頃に

≪TIPS7≫
≪上納金横領疑惑の解決≫

「報告があります。動きがありました」

「アガリと美人局、どっちだ?」

「間宮リナが殺されました」

「なに?どういうことだ?」

「先日命じられた通り、ずっと間宮をマークしてました。

それで、おそらく美人局を実行に移そうとしたんでしょう、ターゲットである竜宮家の娘と思われる少女と接触したのです。

場所は粗大ゴミがたくさん捨ててあるダム建設現場跡です。

最初は普通に話していたようですが、すぐに間宮が怒鳴りはじめ、もみ合いになりました。

しかし最終的には間宮が少女に鉄管のようなもので撲殺されました」

「ほう。窮鼠ネコを殺したか。……間宮らしい最期だな」

「少女は間宮が死んだあと現場から逃走しました。間宮の死が警察に知られると

何かとまずいと思いまして、その場の判断で死体を回収しました。現在、園崎本家に隠させてもらっています」

「そうだな。組の裏切りモンの始末が終わる前に、警察に目を付けられると困る」

「間宮は美人局と同時にアガリをがめて高飛びする予定だったようです。

組の金について間宮の死亡とほぼ同時刻に不穏な動きがありましたので、

内通者を拘束し問い詰めたところ、全て吐きました。どちらの件もそいつと間宮が共謀したものだそうです。アガリは全額無事でした」

「そうか。そいつの処分は任せる。……北条が関わっている可能性はないのか?」

「北条鉄平は間宮に担がれていただけで、美人局の片棒でしかなかったと言ってました。

こちらが金を押さえた以上かばう理由も無いですし、おそらく本当でしょう。

もはや何もできないとは思いますが、念のため、北条も捕らえますか?」

「いや、いい。アガリが無事で、関連が無いなら、その必要はない。放っておけ」


≪オヤシロさま≫


あの女は何を言ってるんだ。オヤシロさまはいるのに。

だって間宮リナの死体を隠してくれたのはオヤシロさまだもの。

私のしたことが間違っていなかったから、それを見たオヤシロさまが、 体を隠してくださった。

間宮リナは「存在するだけで悪」だからだ。

花壇に勝手に生える雑草と同じ。他の花に必要な土の養分を吸い取ってしまう。

だから、雑草に何の罪がなくても、抜いてしまわなくてはならない。

それはつまり、敵。全身全霊で拒絶すべき敵。

私の父から母を奪ったアキヒトおじさん。何の落ち度もない父を裏切った母。

それと同列に並ぶべき敵。私から父を奪おうとした間宮リナはそういう存在だ。

間宮リナを殺すということは、他の花を枯れさせる雑草を引き抜くということ。

そう、私は最善の選択と行動をしたのだ。それをオヤシロさまは見ていてくださった。

死体を鬼隠しにあわせてくださった。感謝の心を忘れないようにしよう。

きっと今頃、あの鉄という男の死体も鬼隠しにあっているだろう。

涼宮ハルヒはどうだろう。私からキョンくんを奪おうとする、敵なのかな?かな?


≪宴の後≫


 車に揺られていると、睡魔が俄然やる気を出す。けど、私の思考回路の中に抜けないトゲがあるせいで、

眠りに落ちる気配は全く無いという、不思議な状況だった。

 綿流しの後は、本邸で親戚一同が集まって酒盛りをするのが恒例だ。

私もそれに参加して、隅っこでちびちびやっていた。去年、悟史くんのことにケジメをつけたとはいえ、堂々とできる身分ではない。

それに魅音も次期頭首さまとして振舞っていたし、他人行儀で接してこられても気持ちが悪い。

そんな訳で、気を使わずに済む叔父さんなんかとずっと話していた。

 お手洗いに行こうとして、鬼婆と魅音の側を通った時、何やら大事そうな報告をしにきた人がいて、それが私の耳にも入ってしまった。

「北条鉄平も殺されました」

 少しペースの早かった私は、お開きの頃になるとぐったりして、畳の上で寝転んでいた。

魅音はもう頭首モードじゃなくなっていて、アルコールで上機嫌になっていたせいもあってか、

私に「泊まっていけば?」としきりにすすめてきた。私もそうしようかと思っていたのに、葛西のやつは

本家に迷惑をかけられないとかいう理由で、乗ったら吐く!という私を無理やり車まで担いでった。

 葛西の車の助手席で、体は酔っていたが、意識は冴えていた。眠いのに、頭は寝ようとしなかった。

そして私の意思と無関係に、私の脳はひたすら考え事をする。

 北条鉄平は何故殺されたのか。

 私は、オヤシロさまの崇りについては、園崎主導をかなり疑っている。去年、北条の叔母が殺されて、

悟史くんが失踪した。これが園崎の仕業なら、動機は北条家と敵対関係にあったことだ。そして今年、

叔父の北条鉄平が殺された。鬼隠しにあうのは順番的に北条沙都子か。

 そうなると、明らかに崇りの対象が北条家ということ、ますます園崎が怪しいということが言える。

逆説的に悟史くんを消したのも園崎ってことになる。

 ……ん?北条鉄平「も」殺されたと言ってなかったっけ?ってことは既にもう一人殺されてるのか?

誰だろう。私の知っている人かな……北条沙都子が綿流しの後に殺されてるのかもしれない。

それで、どちらか一人を行方不明ということにするつもりか?

 明日は学校を休もう。涼宮ハルヒじゃないが、オヤシロさまの崇りについてもう一度調べてみよう。

去年鷹野さんに貰ったスクラップ帳がまだあるはず──。

 いつのまにか眠っていたことに気が付いたのは、家の前で葛西に起こされたときだった。


≪鷹野三四の死亡について≫


「今年も律儀にお勤めご苦労様ですなぁ、オヤシロさまは。それで、焼死体に問題ありなんだって?」

「はい。県警は焼死体の身元について調べたところ、鷹野三四に間違いないと判断しました。

しかし、鑑識の出した死亡推定時刻は綿流しの24時間前ということですが、綿流し祭で鷹野三四は目撃されています。信頼できる鑑識なので……」

「んっふっふ。死体が祭会場を歩き回っていたということですかぁ?怖いですねぇ」

「擬装死体である可能性が高いと思われます。ただ、県警は、鑑識結果か目撃情報がおかしいと主張して

譲りません。もっとも、鑑識に間違いがある可能性は殆どゼロですが」

「まぁ自分たちのミスをすんなり認めたりはしないでしょう。

それに綿流しで目撃されたのが鷹野三四に似た別人ということも考えられなくはないですから。とりあえず、目撃情報はどんなもんですか?」

「綿流し祭の奉納演舞の後、富竹ジロウと女性二名の計四名で神社の祭具殿付近にいるところを

目撃されています。それ以降、鷹野三四の目撃情報はありません」

「そうですか。綿流し前日の目撃情報は?」

「一件あります。興宮市内の図書館で女性二名と話し込んでいるのが目撃されています。

それが……その時一緒にいた人物と、綿流しの時に祭具殿付近で一緒にいた人物が一致するんですよ」

「んん〜?どういうことだ……??」

「女性二名のうち一人は、園崎詩音、園崎家の次期頭首魅音の双子の妹です。

もう一人は、園崎詩音と同じ高校に通う涼宮ハルヒという生徒です。

鷹野三四はその二名と、綿流し前日に図書館で一緒にいて、綿流し当日にも祭具殿の近くで一緒にいたようです。

富竹ジロウが殺されているため、鷹野三四に最後に会った人物は、現時点でその二名です」

「つまり、県警が正しくて綿流し24時間前に死んでいたとしても、目撃情報が正しくて綿流し祭にいたと

しても、いずれにせよ最後に鷹野三四と会ったのは園崎詩音さんと涼宮ハルヒさんの二人なわけですか」

「ということになります」

「なるほどね。お二人が通ってるのはどちらの高校ですか?」

「興宮にある県立北高です」

「んじゃまずは、その辺から当たってみますか。それにしても……

んっふっふっふ、最近の女子高生はオヤシロさまの崇りにも積極的ですなぁ……んなっはっはっはっは!!」

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