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ひぐらしハルヒの憂鬱な頃に

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 「はろろ〜ん、お久しぶりですね、お姉。連れてきましたよ、前原圭一くん」

「よう!バイクんときの!まさかウチの学校のやつと双子だったなんてなぁ、ビックリしたよ」

「え、あ、しっ詩音……!久しぶり!……っと、えと、は、初めまして!じゃ、ないや……あわわっ、

んーっと、そ、その節はどーも。はは……参ったな〜、改めて会うと何だか……緊張しちゃうなぁ」

 何を慌ててるんだ魅音のやつは。ってか誰だこの人たちは?双子?

 状況がよく飲み込めないでいると、レナが耳打ちしてきた。

「ほら、キョンくん、さっき話したでしょ?ひょっとしてこの人じゃないかな?かな?」

 あぁ、なるほどね。それで急に落ち着かなくなってるのか。普段は絶対見ることのないレアな魅音は、確かにレナのいうとおり、女の子らしいかもな。んで、もう一人は誰?

「みなさん初めましてになりますね。魅音の妹の詩音です。いつもお姉がお世話になってます。

どうぞよろしく。他にも友達を連れてきたんですけど、途中クラスメートに偶然会ったみたいで……

もうすぐ来ると思います」

 サラッと自己紹介を済ませたその子は、服装以外は見分けがつかないほど、魅音にそっくりだ。

双子もここまでくると感動するね。クローン技術とは違う、100%天然モノだ。

 数日前、興宮で不良に絡まれた魅音を助けてくれたのが前原圭一くんという人で、それがたまたま妹の詩音と同じ学校に通う生徒だったそうだ。

その縁で綿流しに誘うことになったと、いきさつについて説明する詩音の横で、青菜にヒマラヤ産の岩塩でもぶっかけたかのような魅音が、時々照れ笑いを浮かべながら相槌を打つ。

 見ただけで元気な人だと分かってしまいそうな前原くんは、気さくに話しかけてきてすぐに俺たちに馴染んだ。

沙都子は少し人見知りしてるようだが、レナはニコニコと嬉しそうにしているし、俺はニヤニヤと冷やかしの視線を魅音にビシバシ送りつける。何故か梨花ちゃんは妙に納得した顔で前原くんを見ているが、ま、とにかく一同和やかな 空気が流れている。

 ……そんな平穏をブチ破ることが生きがいなんじゃないかと疑いたくなるタイミングで、雄叫びのような声をあげながら、浴衣姿に大股歩きで近付いてくる女がいた。

「んあっ!いた!しーーーおーーーん!!!けーーいちーーーー!!!

ごめーーん、なんかクラスの子につかまっちゃって。あんま話したことない子だったから逆に気ぃ使わなきゃで中々切り上げらんなくってさー」

 そうだ、古泉が言ってたな。園崎詩音がSOS団を綿流しに誘ったって。

「バイクんときの子は見つかった?あ!この子ね!へー、ホントそっくりじゃない!

凄いわ、やっぱり天然の双子は一味違うわね」

 食い物みたいに言うなよ。……おっと、この機会に心証をよくしとけって言われてたっけ。

「圭一!ちゃんと優しくしてあげるのよ!?いい?すこしぐらい強いとこ見せただけじゃダメなんだから。

女はね、いつだって強さと優しさの往復列車に弱いんだから!」

 意味分からん。ってか人の輪の中に割り込むやいなや喋り倒して、あっという間にその場の空気を吸い取り、自分好みの乱気流にして吐き出す、そいつが誰であるかは言うまでもないだろう。

 涼宮ハルヒが綿流し祭に来た。

「あーーっ!!!こないだのストーカー!! ちょっと!なんでアンタがここにいるの!?ひょっとしてあたしが今日ここに来ることを知ってたのね? 冗談じゃないわ!!どういうことなのよ!!?」

 ハルヒは俺に気付くと人差し指を向けながらズカズカと寄ってきては、即座に周囲に誤解の種を撒き散らした。

ん、まぁ誤解じゃないと言えなくもないが。

 ハルヒの後ろに控える三人にフォローを期待したいが、古泉はいきり立つハルヒを抑えるので精一杯、

朝比奈さんは早速オロオロしてるしぐさがとにかく可愛らしいし、長門に至っては──割愛する。という訳で結局、今度は部活メンバーが状況を飲み込めずに不思議そうな顔をする。そんな中、

「ねぇ、あなた、ちょっと非常識なんじゃないかな?突然やってきて、さっきから失礼なことばかり言って」

 意外なことにレナがハルヒに食って掛かった。いや、意外でもないか。

「な、なによアンタ? ストーカーの仲間なわけ!?」

 ケンカ腰がデフォルトのハルヒが応戦する。初っ端からこれじゃあ、心証云々の話じゃない。

「あなたこそ何なの?どういうつもりなのかな?」

 レナも負けじと食い下がる。二人の間で険悪な火花が弾け飛ぶのを沙都子や魅音はハラハラしながら見守る。

 すると詩音がおだやかな笑顔でハルヒをなだめた。

「涼宮さん、こちらはお姉の学校のお友達なんです。……よね?お姉」

「え、うん。そうだよ。ほら前に話したでしょ、部活の……」

「ああ、この人たちが。だからね、せっかく前原圭一くんとお姉を会わせても、涼宮さんがそんな感じじゃお姉も圭一くんも困ってしまいますよ? 団員の立場も考えてあげてください」

「そうですよ。これも何かの縁ですし、素性が分かればそれほど問題ないんじゃないですか?

見たところ悪い人でもなさそうかと」

 詩音の言葉を古泉が後押しする。

「……ふん、そうね。いいわ、団員のために一肌脱ぐのも団長の役目だし。

ストーカー容疑が完全に晴れたわけじゃないけど、とりあえずあんたが何者なのかは分かったわ」

「そうだぞハルヒー!せっかく来たんだ、みんなで楽しくやろうぜ!!」

 珍しく素直なハルヒに、前原くんの一声もあって、周囲はホッと胸を撫で下ろした。

「圭一や詩音の言う通りなのですよー、レナも少し頭を冷やすです」

 レナはごめんね、と梨花ちゃんに苦笑しつつ、ハルヒの方を向くと、

「さっきはごめんなさい。でもキョンくんは怪しい人じゃないから大丈夫だよ?」

「あ……こ、こっちこそ……わ、悪かったわ……」

 ハルヒは斜め下に目線を固定したまま、ぼそぼそとレナの謝罪にこたえていた。が、ふと思いついたようにやたらとでかい目で俺を見ると同時に眉間にシワを寄せた。

「ん……キョン? ジョンじゃないの? こないだはジョン・スミスって名乗ってたわ」

「あははは、何それキョンくん?アメリカ人だったのかな?かな?」

 いや、まぁ、それは話すと長くなるといいますか……

 なにはともあれ、仲直り、といってもハルヒが散らかした地雷をみんなで片付けただけのような 気もするが、互いの自己紹介を済ませたSOS団の面々と部活メンバーは共に行動することになった。

 日が暮れて、夕焼けに染まる神社の景色を祭囃子の音色が彩り、年に一度の綿流しを村の全てが演出する。

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