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創作小説:桃月郷(BL)
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 月花に呼ばれ、慌てて振り返る紫乃。



「大丈夫…?なんだかさっきから心が此処に無いみたいだよ」


 心配そうに紫乃を見つめる月花に紫乃は笑いかけた。


「ごめん、何でもない。ただ桜の花が故郷を思い出させて懐かしくて…」



「雪国なのに紫乃のいた村にも桜が咲いてたんだ?」



「うん…まあね」



 どこか元気の無い紫乃に月花は桜を見つめながら手を握ってやる。



「紫乃、帰りたい?君の村に…」


 紫乃は首を横へ振る。


「…村に帰りたいとは思わない。あそこに俺の居場所は無いもん。俺は兄さんの側が…この桃月郷が良い」



 行こう、と笑って月花の手を引く紫乃。


 その時、さ…と桜の花弁を巻き上げながら強い風が吹き抜けた。


「わ…っ」


 風に身体を押され、よろめく月花を紫乃がとっさに支える。


 紫乃の腕の中で、風と共に散らされた月花のたっぷりとした白金の髪が、風をふくんで桜の花弁と共にふわりと揺れた。



「有り難う」


 月花が顔をあげる。




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