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創作小説:桃月郷(BL)
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「月花もなに一緒になって座り込んでんだよ。今日は行事で忙しいからって楼主様が言ってただろ!?」


「ごめん。でも紫乃が体調悪くしているのだと思って…」


「ったく…お前は紫乃を甘やかし過ぎ!そんなんだからいつまでも紫乃が甘えるんだって!」



 鴇はそう言うと紫乃から掛布団を引きはがす。




 鴇は桔梗屋の男衆だ。


 男衆とは遊郭の中で客や花魁、男娼の身の回りの世話をしたり炊事や洗濯などの色々な雑務をこなす者達のこと。


 19歳の月花よりも一つ歳下だが、鴇はこの桔梗屋にもう10年以上も住み込んで働いていた。


 当然15歳で桔梗屋に来てから一年に満たない16歳の紫乃よりもずっと長い間居るわけだが、なぜか紫乃は鴇に懐いていた。


 月花のように決して友好的な出会いだった訳ではないのにかかわらず、寧ろ他人からは迷惑がられているようにも見えるのだが、


 それでも紫乃の好かれてしまっているのは鴇がなんだかんだで世話焼きのおせっかい焼きだからだろう。




「だー!何でお前の着物はいつもそんなに乱れに乱れてんだ!どんな寝相してんだよ…!」


 上半身は腕に両袖がかろうじて引っかかってるだけのあられのない紫乃の着物姿に鴇は怒りと呆れの入り混じる声をあげた。



「だって桃月郷の気候って暖かいんだもの。出来れば裸で寝たいぐらいだよ」



「駄目だよ紫乃。幾ら紫乃が雪国から来て寒さに慣れてるとは云え、裸で寝たりしたらお腹冷やしちゃうから」



「そういう問題じゃねえっ!裸でなんぞ寝させるか!」



 月花の言葉に鴇が言うと紫乃は首を傾ける。


 

「俺が客とした後裸で寝てたって怒らないじゃない?」


「う…」


 着替えをしながらそう言う紫乃に鴇は言葉を詰まらせた。


「そ、それはっ!仕事とこれとは違うだろ!!いいか、もしこの寝所で素っ裸で寝てみろ。お前の褌全部焼却して恥ずかしい目に合わせてやるからな…!」



「あははっ褌なんて無くたって俺全然平気だもん」



 へらへらと笑う紫乃に鴇の表情がひくついた。


「お前な…あんまり調子乗って兄貴を見くびってると本気で犯すからな…っ!」


「ふふっ、鴇は優しい人だもの。そんなこと言ってたって俺の嫌がることは絶対しないって分かってる。でも、良いよ。鴇になら抱かれても」

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