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創作小説:桃月郷(BL)
2
姉、さん…?)



 自分と同じ、翠玉色の瞳が、僅かにこちらを振り返った。







「紫乃」



 名を呼ばれ、紫乃はゆっくり目を開ける。


 目の前に、白い着流しを着て絹のように細く艶やかな白金の髪をした綺麗な青年が優しく微笑んで、紫乃の伸ばした腕を握っていてくれた。



「月花兄さん…」



 紫乃は半分夢心地で呼ぶと、月花は再び優しく笑う。



「おはよう、随分寝てたね。昨日は疲れちゃった?」



 月花は紫乃の顔にかかった前髪を手櫛で梳いてやりながら言った。



「ううん、大丈夫。…ねえ、さっき歌を歌ってたの、兄さん?」



 紫乃は体を起こしながら言う。



「歌?」



 月花は小さく首を傾げる。



「夢の中で聞こえたんだ。もしかしたらと思ったんだけど…」



「んー…向こうにある遊郭の花魁の人達かな…?今日は行事があるからたまに表を通ってるし」



 月花は部屋の窓から外を見る。


 表の通りはいつにもまして屋根や道が花の装飾や提灯
で飾り付けられ華やかになって、人の活気が満ちていた。



「うん…でもそんな事あるはずないよ。あの歌は俺の村に伝わる歌で、村の人たちしか知らない筈だし…桃月郷の人たちが知ってる筈ないもの」


 紫乃の言葉に月花が振り向く。


「へえー…紫乃の村に伝わる歌?どんな歌なの?」


「えっとねえ…」





「紫乃!!まだこんな所でそんな格好してるのかよっ!今何刻だと思ってんだ!?」



 木製の戸板を音を立てて開け、声を上げて現れた赤髪の青年。



「あ、おはよう鴇(とき)」


「あ、おはよう鴇、じゃねえんだよ馬鹿紫乃!」



 青年は不機嫌に切れ長の紫の目を紫乃の側に座る月花に向ける。


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あきゅろす。
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