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創作小説:桃月郷(BL)
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 不意に、彼に抱き寄せられた。


 抱き寄せるというよりはしなだれかかる、といった表現の方が正しいか。

 紫乃の肩口に頭を乗せる月花の良い香りの髪が頬に触れる。

 与えられる温もりが心地よい。紫乃も彼を抱き寄せようと、腕を背に回す。


 華奢な肩が二の腕に触れた時、ふと気づいた。



―兄さん…腕が…。



 着物の袖に隠れて気づかなかったが、左に在るはずの腕が、彼には無い。



―腕…昔実家においてきちゃったんだ。



 紫乃の腕からそっと離れて、月花は笑った。

 なんだか悲しそうな、儚い笑顔。それが酷く紫乃の胸を締め付けた。

 自分には想像出来ないほど、辛い過去を過ごしてきたのだろうか。



―…ごめんなさい…。



 紫乃はうつむきながら言った。



―なぜ紫乃が謝るの?僕は腕のことなんてなんとも思ってないよ。



 うつむいた紫乃を気遣うように覗き込む月花の唇へ、紫乃はふいに顔を寄せて


口付けた。



―ん…。



 突然のことに驚いたのか、小さく声を漏らす月花。重ねあった月花の唇は熱く熱を持ち、軟らかだった。


―あ…。



 はっと我に返る紫乃。なぜ自分がこんなことをしてしまったのかわからない。

事もあろうに出会ったばかりの、男に対して。



―お…俺…。



 顔を赤らめる紫乃に対し、月花は静かに言った。

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あきゅろす。
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