創作小説:桃月郷(BL) 14 ふと、我に、返った。 目の前で、着物を乱して色付いた花芯を晒し、白濁に濡れる月花。 「お…俺…」 月花は、何も言わず、体をゆっくりと起こして紫乃を見つめる。 笑ってはいない。達した直後で頬は色付き目も微かに濡れているけど。 表情からは何も読めない。 「紫乃…」 気まずく、焦りに血の気が引いていく紫乃。月花に名を呼ばれ、びくりと反応する躯。 「…紫乃はやっぱり…危ない子だね…」 感情の読めない声でそう言うと、月花は着物を纏いゆっくり立ち上がる。 「兄さん…ごめんなさい…」 「…いいよ。戻るね、お休み…紫乃」 紫乃の顔を見ずに、それだけいうと月花は部屋を出て行ってしまった。 「ごめんなさい…」 紫乃は一人囁いて、泣いた。 嫌われた。 せっかく、居場所が出来たと思ったのに。 [*前へ][次へ#] [戻る] |