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創作小説:桃月郷(BL)
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 ふと、我に、返った。


 目の前で、着物を乱して色付いた花芯を晒し、白濁に濡れる月花。


「お…俺…」


 月花は、何も言わず、体をゆっくりと起こして紫乃を見つめる。


 笑ってはいない。達した直後で頬は色付き目も微かに濡れているけど。


 表情からは何も読めない。


「紫乃…」


 気まずく、焦りに血の気が引いていく紫乃。月花に名を呼ばれ、びくりと反応する躯。


「…紫乃はやっぱり…危ない子だね…」


 感情の読めない声でそう言うと、月花は着物を纏いゆっくり立ち上がる。


「兄さん…ごめんなさい…」

「…いいよ。戻るね、お休み…紫乃」


 紫乃の顔を見ずに、それだけいうと月花は部屋を出て行ってしまった。


「ごめんなさい…」


 紫乃は一人囁いて、泣いた。


 嫌われた。


 せっかく、居場所が出来たと思ったのに。

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