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マーモンと一緒








ここは血の臭いがした

ボスからは、お酒の匂いがした



ボスから血の臭いがしなかったのは、ひとえにその戦い方のせいだろうとキアロは思った

元から掻き消してしまうのだ、血など飛ぼうはずがない



「いってきます」



そのボス、XANXUSを背にするようにキアロは森へと入った

今日はキアロのヴァリアーでの初仕事だった

だからというわけではない筈だが、今回はマーモンも一緒だ


ゆったりと森を歩きながら、キアロは隣りをフワフワと浮遊する彼を見つめた

それに気づいたのかマーモンは僅かに顔をしかめる



「なんだい?それ以上見るならお金を取るよ」

「マーモンは、どうして赤ちゃんなの?」



かなり可笑しな質問にマーモンはまた顔をしかめた



「?意味がわからないよ。見たまんまでしょ?」



旨く言いたいことを言えないのか、キアロは一度口を開こうとしてやめた

替わりにマーモンを抱き寄せる



「ちょっと、ふざけてるの?相手を考えなよ!」

「見たまんまでいいんでしょ?これは赤ちゃんを抱いたことないの」



開いた口が塞がらないマーモンに、キアロは頬擦りした



「やわらかい。あったかいね」

「‥‥お金取るよ」



抱いたまま歩き出したキアロに、マーモンももう何も言わなかった

だがそうこうしている内に、2人は敵に見つかっていた


もともとが森の中にある隠れ家に逃げ込んだ残党の掃討

それが仕事だったのだが、その残党も赤ん坊を抱いたキアロに戸惑いを隠せなかった

ヴァリアーの隊服を着ていなければ、森で迷ったか地元の人間かと思うだろう



「どうした?」

「それがヴァリアーの服を着た、赤ん坊を抱いた女の子が‥‥」



言った瞬間に男は殴られ、持っていた双眼鏡を奪われる(理不尽)

だが奪った男が見たのも同じ光景だった



「‥‥術師に言って目眩ましをかけさせろ。それでやり過ごせれば問題ない」

「はい」



斯くして術者によって霧の幻覚が施されたわけだが、勿論マーモンによって返され、逆にキアロ達の姿が見えなくなった

キアロの仕事にマーモンが付いたのはこの為だ



「僕の仕事はここまでだよ」

「わかった。後はこれがやる」



太腿のベルトからナイフを抜いた

本能というものがあるなら、今キアロが敵を認識できている事実を説明するのに使えるだろう

建物の中でさえ霧に覆われているなか、正確に位置を把握して殺していく

ものの10分で片付いた



「終わった」

「ああ、ボスにもいま報告したよ」



マーモンのその言葉にキアロは過剰に反応した

驚いたように瞳を見開いたかと思うと、次の瞬間に涙ぐむ



「な、なに?」

「報告、これがしたかった」



何かと思えばそんなこと?とマーモンは嘆息する

だがキアロはボロボロと涙を零して訴えた



「ボスに報告して、それで誉めてもらいたかった、のに」

「そんなこと知らないよ。勝手に行けばいいよ」



もう一回報告していいの?と呟いたキアロに、マーモンは手に負えないとでも言いたそうに追い払う仕草をした



「これ、行く!ボスに報告!」



先にヴァリアーの屋敷に帰っていたXANXUSに報告に行くと、部屋から蹴り出された



○月×日
今日は初仕事。マーモンに抱きしめ代を請求された。
スクアーロは頭をぐりぐりしてくれたけど、今日もボスに誉めてもらえなかった。


初給料はマーモンへの支払いと日記帳になりました




2008.3.23



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