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物語【三竦み編】
月見酔い T


明日で二週間になる。
飛影とトーナメント中に言葉を交わしてから。


―二週間以内に行く―

彼は確かにそう言った。


あれからオレは人間界に戻って、明日で二週間。
眠る前に窓の外を眺める事は、どうしようも無い習慣に成っていた。


…今日は月が見えないな―…

外を眺める事でどうしても目に入ってしまう空の模様。
月の有無や星の数を数える事も、自ずと習慣に成っていた。

今日は月明かりが無く、薄暗い夜。
月が無いと言うよりは、厚い雲が月を隠してしまっている、と言う方が正しい表現か。


…こんな夜は、彼が来る気がしないな。

そう思って小さな苦笑いを零した。


別に飛影の行動が月に左右されている訳では無いけれど。
そう思ってしまうのは、あの日の…
この部屋で過ごしたあの日の所為だろうか―…


ちらりと本棚に目線を送る。
其処に日本酒を箱に入れたまま隠して置いた。
飛影と呑む為に用意したものだ。
人間界では未成年の身分。
母にバレる訳にいかないので、冷蔵庫に入れる必要が無い様常温で味わえるものにした。



―ピピッ
ベッド脇に置いてある電子時計が0時を知らせる。


―今日はもう寝てしまおう。

そうすれば。
待つのは明日だけになる。

明日には…飛影に会える―…


今日は…月明かりが無い今日は、飛影が来る気がしない。
何処か確信めいた思いがあって、少し早いが眠る事に決めた。

早く寝てしまえば楽しみにしている明日が早く訪れる…
まるで遠足を楽しみにしている子供の様だと思って、もう一度苦笑いを零した。


少し肌寒いな…
暦の上では疾うに秋になっているが、まだまだ日中は夏を感じさせる程暑い。
それでも徐々に、夜は涼しくなって秋を主張し始めていた。

窓を閉めるべく手を掛けると、タイミングを合わせた様に大きな風が吹いた。
庭の木々が音を立てて揺れる。
カーテンは風に掠われて大きく波打った。

風が止むと、吹かれた己の髪が顔を覆う様に流れて…
その隙間に…
紅の瞳が見えた―…


「…何を驚いている。二週間以内に行くと言っただろうが。」


そう彼の声がしても、オレの中の時間は止まっていた。

顔に掛かる髪の色と彼の瞳の色が似ているから見間違えたんじゃないか、とか。
気配が全く感じられなかった、とか。
今日は月が出ていないのに…とか―…


声に出せば、飛影が呆れる様な内容が頭を巡っていて。
声に出していないのに、呆れた様な飛影の溜め息が聞こえて。

目を見開いたまま固まっているオレの顔に掛かる髪を、飛影は優しく元に戻してくれて。
オレは挨拶も出来ないまま、飛影の腕に抱き締められた…


「久し振りだな、この部屋も…」


そう言う飛影の声を耳元で聞いて。
やっと、実感が沸く。

飛影の肩越しに見えたのは。
…月明かり―…

先程の強い風が雲を晴らしたのだろうと理解する前に…
飛影が月を連れて来たのだと―…

まるでファンタジーの様に。
そう…思った―…



(Uへ続く…)



★あとがき★
始まりました、“月見酔い”!!
完全見切り発車ですので、どうなってゆくか管理人は知りません(^^;)
ウチの二人に委ねます☆(笑)
大量の言い訳は日記にて。。。
お読み下さって有難うございました^^

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あきゅろす。
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